【テレワークの問題】上司と喧嘩したら仲直りするきっかけが見つからない! どうすれば解決するのか?
■仲直りするきっかけが見つからない
「あれ? よく考えたら、仲直りするきっかけが見つからない……」
私の知人が、電話でこんなことをつぶやいた。
「どうした?」
と尋ねると、ゴールデンウイーク明けに些細なことで上司と喧嘩をしたらしい。以前からよくあることで、いつも2~3日すれば、いつの間にか普段通りの関係に戻るという。
しかし、お互いがテレワークをしており、事務的なメールのやり取りでしか接点がない。
「オンライン会議とかないの?」
私がそう尋ねると、
「基本的に、私は他部署の人やパートナー企業とプロジェクトを進めているので、上司と仕事の相談はほとんどしない」
とのこと。
「仕事に支障があるわけじゃないんだ」
「支障はないけど、気持ちが悪い」
そりゃそうだ。と私は思った。現時点で約2週間、口をきいていないというのだから。
■「顔」という情報リソース
以前、経済格差が深刻なテレワーク・ハラスメント(テレハラ)を生むで、私は「テレワーク・ハラスメント(テレハラ)」について書いた。
オフィスワークのときは何も問題がなかったのに、テレワークになった途端、上司から心無い言葉をかけられることが増えて、メンタル不全に陥ったという部下が少なくない。
ハラスメントとはいかなくても、急激な環境変化によって、内に秘めていたものが外に出てしまい、思わぬところで関係を崩してしまった。こういう人も多いことだろう。
数日間で仲直りできればいいが、そのきっかけが見つからないとズルズルいってしまい、ひどい場合は関係をこじらせてしまう。最悪、労務問題にも発展するかもしれない。
それでは、なぜ「仲直りするきっかけ」が見つからないのか?
それは単純に「顔」を見ないからだ。
たとえ一緒に仕事をしていなくても、オフィスが同じなら顔を合わせることがある。意識していなくても、相手の姿を視界の中でとらえることができる。
その際に、上司が部下の姿を見て、
「相変わらず、一所懸命、仕事しているな」
と思ったり。
部下が上司を見かけて、
「メールで済む話だけど、ずっとこのままだと気持ちが悪いから、私から声をかけてみようかな」
と思ったり。
相手の存在は、「手」や「足」や「背中」や「髪の毛」ではなく、「顔」で見とめるもの。たとえ1日に1~2回であっても、何度も目にすることで意識してしまうものだ。
それほど「顔」という部位は、人間の感覚に影響を与えるさまざまな情報が詰まっている。実はとてもインパクトのある情報リソースなのだ。
テレビCMを例にとると、わかりやすいだろう。CMに起用された芸能人がどれほど有名であろうと、画面に「顔」が映っていないのであれば、その価値はほとんどない。
逆に、「顔」が売れている人がCMに「顔」を出すことで、その商品の認知度も上がる。そういうものだ。
接触を繰り返すことで、相手との信頼関係(ラポール)が少しずつ深まっていくことを「単純接触効果」と呼ぶ。
同じ内容のCMが繰り返し放映されるのは、この心理効果を狙っている。営業がお客様のところへ足しげく通って「顔」を見せようとするのも同じ。単純接触効果を狙ってやっているのである。
営業と関係を築くと断ることができなくなるので、「顔を見せたくない」「居留守を使いたい」と思う人がいるのは、このせいだ。
■「ついで」というファクター
オフィスという、同じ空間で仕事をしていれば、ちょっとした「ついで」で声をかけるチャンスはいくらでも見つけられる。
たとえば、トイレへ行く途中、廊下ですれ違った際に、
「あ、メールありがとう。すぐに返信するよ」
と上司から何気なく声をかけられたら、
「いえいえ! 別に急ぎませんから」
と部下は思わず、返事をかえすだろう。そして上司のほうから声をかけてくれた、やはり上司は私より大人だな、と部下は上司のことを見直すだろう。すると、急に肩にのしかかっていた重いものが消えてなくなる。
「ところで聞きましたか? 本部長に初孫が誕生したそうですよ」
「へえ、そうなんだ。ありがとう。知らなかったよ。さっそく本部長に連絡してみる」
「ぜひ、そうしてください。本部長、絶対に喜ばれますよ」
ついでに、こんな雑談もしやすくなるはずだ。
■喧嘩の仕方も、仲直りの仕方も
テレワーク中だと、このような「ついで」がない。廊下ですれ違ったり、たまたま同じエレベーターに乗り合わせたりといった、そのようなシチュエーションに恵まれない。
ちょっとした用事であればメールや電話で事足りる。お互い「顔」を見ないので、用事が終わればそれ以上の雑談はしないだろう。
電話中に、
「ところで聞きましたか? 本部長に初孫が誕生したそうですよ」
と、強引にねじ込んでもいいが、けっこう勇気がいることだ。
かといって、「顔」を見てコミュニケーションをとりたいからとオンライン会議を提案しても、
「電話で事足ります」
「メールでいいじゃないですか」
と言われたら、反論できない。
したがって、喧嘩するとなかなか仲直りできない。仲直りするきっかけに恵まれないからだ。
こうなったら、第三者に協力してもらったほうがいいだろう。いわゆるオンライン飲み会などを企画してもらうのだ。
参加者が10人近くいると、なかなか話す機会ができないかもしれない。そこでZOOMであれば「ブレイクアウトルーム」という機能がある。この機能を使えば4~5人の小部屋に入って交流ができる。主催者に配慮してもらい、同じルームに入ることで、面と向かって話すきっかけはできるだろう。
1時間も2時間も同じルームにいるのは気まずいだろうから、時間を区切り、15分や20分で別のルームへ移動するというやり方をしてもいい。少しばかり面と向かって話すきっかけを得られるだろう。
緊急事態宣言が解除された。しかし、いつ第二波が襲ってくるかわからない。テレワーク時代は今後もつづくだろうから、喧嘩の仕方も、仲直りの仕方も頭に入れておいたほうがいい。
「顔」「ついで」という切り口を頭に入れておこう。そうすれば、早期に仲直りするきっかけを見つけられるから。