熊本地震から2年 3.11の支援の経験から食品ロス削減の観点も含め、食の支援で必要と考える10ヶ条
2016年4月16日、熊本地震の本震から2年が経過した。2011年、東日本大震災での支援の経験から、地震などの自然災害の際、食料支援で必要と考えることを10ヶ条にまとめてみた。無駄な食品を出さない、食品ロスを発生させない(発生抑制)の観点からも大切だと考えている。
1、「平等」が基本、でも融通をきかせて
東日本大震災の発生時、行政の方は「平等」を原則に動いていらっしゃったが、それが逆に足かせになることがあった。せっかく支援物資を持って来ても、避難所の人数に若干不足していると「平等に配れないから配らない」ということで放置され、次に来た時には食べ物が傷んで食べられなくなってしまっている・・・という事態があった。子どもや年配の方など、食の細い方には量を少なくする(半分ずつ)など、融通をきかせて頂けるとありがたいと思う。
2、アレルギーを持っている方には特に7品目に注意
被災された方の中には、アレルギーを持っている方がいらっしゃる場合が多い。以下は、命にも関わるため、加工食品などで必ず原材料に表記しなければならない7品目である。
卵
小麦
乳・乳製品
落花生
蕎麦(そば)
エビ
カニ
また、以下の20品目は、アレルギー表示では、義務ではなく、任意表示となっている。ただし食品企業は任意であっても表記している場合がほとんどだ。
あわび
イカ
いくら
オレンジ
カシューナッツ
キウイフルーツ
牛肉
くるみ
ごま
鮭(さけ)
さば
大豆
鶏肉
バナナ
豚肉
まつたけ
桃(もも)
やまいも
りんご
ゼラチン
参考情報:
3、外国籍の方への配慮
日本に在住している外国籍の方は、ある程度、日本のことがわかっているかもしれない。が、観光でたまたま日本を訪問していて被災した外国籍の方は、日本語が一切わからない場合がある。加工食品の表示も読むことができないので、教えてあげられる人がいるとよい。
東日本大震災の時は、英語表記の食品や、タイ語で書かれた缶詰、ハングル文字の表記の食品など、日本人が読めないため、使われずに倉庫に置かれていたことがあった。被災地から、筆者が勤めていたフードバンク宛に「これ使わないから要りませんか?」と、外国語表記の食料に関して問い合わせがあったこともあった。
また、宗教上の理由から、一部の食品が食べられない・・という場合もある。実際、熊本地震の時、ハラル対応の食品が無くて苦労している・・という話を支援者から聞いた。ハラル(あるいはハラール)とは、イスラム教で合法とされているものを指す。一口に「ハラル」と言っても、個人によって、何がよくて何がだめか、というのは違いがあるが、豚とアルコールは避ける場合が多い。
参考情報:
4、備蓄・災害食・炊き出しは食べ慣れているものを
災害食・炊き出しは、日頃から食べ慣れているものが適切だとされている。特に発災(発生)直後は、まずエネルギーを確保することが必要なので、おにぎりやパン、カップ麺など、炭水化物を主とした食品が求められる。
参考情報:
5、常時より非常時にサプリメント(錠剤など)が役立つ
何事もない常時より、災害が発生するなどの非常時には、特にサプリメント(補助剤)が役に立つ。前述の通り、災害が発生した直後は、まずエネルギー確保が重要なので、炭水化物を主としたおにぎりやパン、カップ麺が役に立つ。だが、災害の影響により避難が長期化すると、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が必要になる。実際、3.11の時、これらが不足することにより、口内炎や皮膚炎、体調不良などが発生していた。仮設トイレに行きたくないので水分摂取やトイレを我慢し、便秘になる人も多かった。便秘は、食物繊維の摂取不足や運動不足も要因となっていることがある。
支援物資としてサプリメントを提供する場合、自然災害が発生した近隣の工場や支社などから支援すると、遠方から運ぶより、運送距離が短くて済む。手配する場合、首都圏の場合は農林水産省が、地方の場合は農政局が仲介役になることが多い。3.11の時にも発生から1ヶ月程度(2011年4月20日ごろまで)は、農林水産省が仲介して400社ほどからの支援物資の情報の司令塔となり、どこへ何ケース送ればよいかをやりとりしていた。
「熊本県熊本地方で発生した地震に係る九州農政局災害対策本部」の設置について(九州農政局)
6、栄養補助食品も役立つ
5に同じく、錠剤や粉末などのサプリメントも役に立つし、食品や飲料にビタミン・ミネラルなどの微量栄養素や食物繊維が強化されたものも役に立つ。特に炭水化物や甘いものの摂取は、ビタミンB群を消費し、Bが不足すると皮膚炎や口内炎、だるさ、など、身体の調子が悪くなってくる。栄養補助食品を商品として持っている企業は、関係行政に相談の上、支援してあげると、被災地で助けとなる。
7、飲料水のペットボトルも場合によっては助かる
東日本大震災の時には、原発事故も同時に発生したため、特に福島県で、飲料水の需要が高まった。全ての自然災害でそうなるとは限らないが、必要であれば、飲料水のペットボトルの支援が助かる。ただ、水は、飲食品の中でも重量が重く、場合によっては配送コストがかさむため、近隣で賄うのが一番よい。
8、個人の支援は受け入れ体制など状況を見て判断しないと現地の負担に
自然災害が発生すると、個人や小規模レベルで、支援物資を送るケースがある。だが、熊本地震でもそうだったが、「現地ではまだ受け入れ体制が整っていないため、まだ送らないで欲しい」との報道があった(2016年4月16日付、毎日新聞報道)。
東日本大震災でもそうだったが、食料品と他の品物(衣類や衛生用品など)を混ぜてごっちゃにして送ると、被災した地域の方自身が仕分け作業をしなければならず、余計に負担をかけてしまう。食品なら食品だけ、衛生用品なら衛生用品だけにして、ダンボール箱の外側に何が入っているかを大きく書いてあげると親切だ。
9、個人のボランティア参加も状況を見て冷静に判断
熊本地震では、ボランティアに関しても「受け入れ体制が無いので行かないでください」という告知が出ていた(2016年4月16日)。専門家は別として、食事や寝泊まりする場所などを自己管理できない個人が押し寄せると、現地が混乱して、かえって迷惑をかけてしまう。
10、ネット募金、今いる場所で支援
「何かしなくては・・」とやきもきしてしまう人も多いと思うが、下手に動かなくても、インターネットから募金をすることで、間接的に支援をすることができる。筆者もYahoo!ネット募金をよく利用している。使わないで溜まっていたTポイントを使うことができるし、クレジットカードからできるのが便利だ。
参考情報:
熊本地震から2年 引き続き、被災地の支援を(Yahoo!ネット募金)
以上、東日本大震災での支援活動をもとに、食品ロスを発生させないことも考えて、10ヶ条にまとめてみた。
熊本地震の影響で、今もなお、39,000人以上の方々が、仮設住宅で避難生活を送っている(2018年2月28日現在の「応急仮設住宅等の入居状況」熊本県発表)。災害で学んだ教訓は、次に活かすこと。一人ができることは小さくても、その小さな力が全国に広がれば大きなものになる。細くても長く、できることを続けていきたい。