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9年前のドラフト全体1位が、30歳でメジャーデビューへ。史上最も遅いデビューの全体1位になる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
グレイバー・トーレス(左)とマーク・アッペル Feb 25, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月25日、フィラデルフィア・フィリーズは、マーク・アッペルをAAAから昇格させた。

 アッペルは、30歳の右投手だ。2013年のドラフトで、ヒューストン・アストロズから全体1位指名を受けた。2015年12月のトレードにより、アストロズからフィリーズへ移籍。まだ、メジャーデビューはしていない。

 ちなみに、この年の全体2位と3位は、クリス・ブライアント(現コロラド・ロッキーズ)とジョン・グレイ(現テキサス・レンジャーズ)だった。全体32位にはアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)、全体38位にはマイケル・ロレンゼン(現ロサンゼルス・エンジェルス)がいる。

 通常のドラフトにおいて、全体1位で指名されて入団し、メジャーデビューすることなく引退したのは、スティーブン・チルコット(1966年)とブライアン・テイラー(1991年)の2人しかいない。アッペルは、彼らに続く3人目になりかけた。2017年のオフに40人ロースターから外され、その後もフィリーズに在籍はしていたものの、翌年からの3シーズンはプレーしなかった。

 けれども、昨年、アッペルはフィールドへ戻ってきた。昨シーズンは、AAとAAAの計71.1イニングで防御率6.06ながら、リリーフに転向した今シーズン(正確には昨シーズンの終盤から)は、AAAの19登板で28.0イニングを投げ、防御率1.61を記録している。そして、新型コロナウイルスによってコナー・ブログドンが離脱したのに伴い、メジャーリーグへ昇格した。

 プロ入りから9年後のメジャーデビューは、ドラフト全体1位のなかでは、ジョシュ・ハミルトンの8年後を凌ぎ、マット・ブッシュ(現レンジャーズ)の12年後に次ぐ。ハミルトンは、1999年に指名され、2007年にデビューした。ブッシュは、指名が2004年、デビューは2016年だ。この2人は、故障や伸び悩みよりも、素行がデビューを遅らせる大きな要因となった。それについては、前に「堕ちたトップピック・コンビ結成!? 出所したドラフト全体1位がレンジャーズに入団」で書いた。

 ブッシュも、現在のアッペルと同じく、メジャーデビューした時の年齢は30歳だった。ブッシュは高校から、アッペルは大学からプロ入りした。リリーフ投手としてメジャーリーグで投げることも、彼らは共通する。ブッシュは、メジャーデビュー前に遊撃手から転向した。

 なお、ブッシュの初登板は、30歳の誕生日から3ヵ月後。アッペルは、来月半ばに31歳の誕生日を迎える。ブッシュに代わり、最も高齢でメジャーデビューしたドラフト全体1位になる。

 メジャーリーグ1年目のブッシュは、58試合に登板し、61.2イニングを投げて防御率2.48を記録した。ここまでの通算成績は、170登板の167.2イニングで防御率3.54だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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