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オートバイのあれこれ『バイク史の大ドンデン返し!』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今日は『バイク史の大ドンデン返し!』をテーマにお話ししようと思います。

日本のオートバイの歴史において、「衝撃的!」と表現される出来事はいくつかありますが、今から35年前の出来事も、我々オートバイファンに大きなインパクトを与えたといえるでしょう。

カワサキ『ゼファー』の登場です。

▲ZEPHYR〈1989/画像引用元:川崎重工〉
▲ZEPHYR〈1989/画像引用元:川崎重工〉

ゼファーは、80年代に過熱の一途を辿ったレーサーレプリカブームを一瞬にして鎮静化してしまいました。

この出来事の目を見張るポイントは、“スゴくないバイク”が“スゴいバイクたち”を蹴散らしたことです。

レーサーレプリカモデルは、その名のとおりWGP(世界グランプリ)等で活躍するレーシングマシンのような作りで、スペックも装備も最新最強のものが与えられていました。

▲レーサーレプリカの代表作・NSR250R〈1988/画像引用元:本田技研工業〉
▲レーサーレプリカの代表作・NSR250R〈1988/画像引用元:本田技研工業〉

一方ゼファーは、スペックも装備も凡庸、いやむしろ「平均以下」といっても過言ではないくらいのパッケージで生まれてきました。

レプリカブームの下でスペック至上主義が幅を利かせるなかにあって、“何の取り柄も無く”出てきたゼファーは、当時の流れからすると完全に時代錯誤のバイクだったといえます。

ゼファー発売のニュースを見聞きした二輪業界の人々も、

「こんな平凡なバイクが売れるわけがない」

という意見でおおよそ一致。

(ゼファーを作った張本人であるカワサキでさえ、ゼファーのリリース時は内心ビクビクだったと言われています)

しかし、フタを開けてみると…。

▲発売前は、「売れるワケない」と思われていた〈画像引用元:川崎重工〉
▲発売前は、「売れるワケない」と思われていた〈画像引用元:川崎重工〉

想定外の大ヒット。

ゼファーは1989年4月に発売されたのですが、発売直後から一気に売り上げを伸ばして89年度の400ccクラスにおける販売台数ランキングでいきなり2位を獲得したのです。

そして翌90年には、なんと販売数トップを記録

ゼファーは80年代を席巻したレプリカ勢を一撃で駆逐し、誰の手にも負えなくなっていたレプリカブームを何食わぬ顔で葬り去ってしまいました。

何の凄みも無いゼファーが、大方の予想を裏切って最先端レプリカを一発KO。

バイク史上で「ドンデン返し」という表現が最もシックリくるのは、このゼファーの大ヒットを差し置いて他に無いでしょう。

ここでゼファー爆売れの背景を説明しておくと、実はレプリカブーム期に、行き過ぎたスペック競争に対して閉口していたバイクファンが意外と多く、ゼファーはそうした層を独占的に囲い込むことができたのです。

ゼファーは、レプリカブーム全盛期の頃から一歩引いた立ち位置で、常にブームの動向を冷静に見ていたカワサキだからこそ作ることのできたオートバイだといっていいでしょう。

▲レプリカブームを終わらせ、90年代のネイキッドブームをもたらした〈画像引用元:川崎重工〉
▲レプリカブームを終わらせ、90年代のネイキッドブームをもたらした〈画像引用元:川崎重工〉

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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