オートバイのあれこれ『昭和版MT-09!? GX750』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『昭和版MT-09!? GX750』をテーマにお話ししようと思います。
2014年にデビューし、今も高い人気を誇るヤマハのMT-09。
MT-09はオートバイでは採用例の少ない並列3気筒エンジンを搭載していて、このことがデビュー時に大きな話題となりましたが、ヤマハはこのMTが出るはるか昔にも3気筒マシンを作っていました。
それが、1976年(昭和51年)に登場したGX750というモデルです。
GX750は、当時世界中でヒットセールスを飛ばしていたホンダ『CB』シリーズやカワサキ『Z』シリーズへ対抗するために開発されたモデルで、空冷4ストロークの並列3気筒エンジンが採用されていました。
ホンダやカワサキが4気筒を選ぶなか、ヤマハがGXを3気筒としたのは「車体をスリムにできる」ということと、「ヤマハのオリジナリティを打ち出す」という狙いからでした。
結論から言うと、3気筒をチョイスしたことは“ヤマハ車らしさ”をアピールする上では成功だったと言えます。
4気筒より軽くコンパクトな3気筒エンジンを載せたことで車体全体を小さくまとめられ、またそれによって大型車特有の鈍さが抑えられた軽快なハンドリングを獲得。
3気筒エンジン自体も、2気筒的な低中速トルクと4気筒的なスムーズなフィーリングを合わせ持った、それこそMT-09のようなフィーリングとなっていました。
さらに外観的にも他社のビッグバイクには無いスレンダーなプロポーションとなり、まさしくGXは“ヤマハ流のナナハン”に仕上がっていたのです。
しかしそうは言っても、当時はやはり「4気筒以外は考えられない」「ハイスペックこそ正義」の時代。
4気筒ブーム下のバイクファンにとって“3気筒”というのはいまひとつ魅力的に映らず、GXはさすがにCBやZの人気ぶりを凌駕することはできませんでした。
結局ヤマハはトレンドに乗って4気筒の『XJ』シリーズを開発することになり、GXはこのXJシリーズに後を継ぐ形でひっそりと消えていったのでした。