フランス人がヒュッゲの国デンマークで始めた量り売りの店「ロス・マーケット」食品ロス削減にも貢献
デンマーク・コペンハーゲンに、量り売りの店がある。それが、LOS market(ロス・マーケット)だ。フランス人のFrederic Hamburger(フレデリック・ハンブルガー)さんが2015年にクラウドファンディングで資金を集め、2016年9月に始めた。
オランダで、食品ロスなどの生ごみを廃棄せず、資源として活用するThe Waste Transformers(ウェイスト・トランスフォーマー)を取材した際、当時オランダ在住だった、安居昭博さんに、ロス・マーケットのことを教えて頂いた。安居さんは、すでにこの店を取材した記事を書いており、その中で筆者の記事も引用して頂いていた。
店頭に色とりどりの野菜や果物
LOS marketは、コペンハーゲンの中心部から南西の方向にある。
街の中心部から歩いてくると、まず目立つのは、店先の看板だ。「あ、ここだ」とすぐわかる。
そして、店頭に並べられた、色とりどりの果物や野菜。
野菜や果物の生産地とともに、1kgあたりの値段が表示されている。
店内に入ると、そこにもバナナや柑橘類などの果物が並んでいる。あまり陽の光を当てない方がよいものを中に置いているのだろう。
シリアル、コーヒー豆、ドライフルーツ、チョコレートも量り売り
生鮮品の他には、賞味期限の長い加工食品が目立つ。
コーンフレークやミューズリーなどのシリアル類。
ミルクチョコレートやホワイトチョコレート、様々なカカオ分のチョコレート。
世界中の産地のコーヒー豆。
パプリカ、ナツメグ、ターメリックなどのスパイス類や、ナッツ類。
レンズ豆、ひよこ豆などの豆類。
オリーブオイルなどのオイルも量り売り。
液体のものを入れる瓶は、口の小さいものから大きなものまで売っている。
洗剤などの日用品や竹ストロー、関連書籍も
シャンプーやボディソープなどの液体洗剤類もある。
固形のシャンプーもあり、自分が欲しい量だけカットして買えるようになっていた。
竹ストローや、竹の柄の歯ブラシも。
持ち運びできる、何度も使えるカトラリーセットや、ステンレス製ストローがあったので、買ってみた。
家族4人で暮らし、一年間に排出するごみの量が片手で持てるだけ、という、ベア・ジョンソンさんの著書『ZERO WASTE HOME(ゼロ・ウェイスト・ホーム)』もあった。日本では服部雄一郎さんが翻訳し、アノニマ・スタジオから出版されている。来日講演は、筆者も聴講した。
イタリアの量り売り店との比較
筆者は2018年10月にイタリアの食品ロス事情を取材した。その際、同行して下さったイタリア在住の佐藤友啓(さとう・ともひろ)さんに、量り売りの店、effecorta(エッフェ・コルタ)を紹介して頂き、訪問した。
エッフェコルタにはあって、ロス・マーケットでは見かけなかったものといえば、次のような商品だろうか。
はちみつ
クッキー
グリッシーニ
乾麺(パスタ、春雨か米麺のような透明な麺など)やマカロニ
アマランサスのような穀物
ワイン
イタリアのeffecortaでは、量り売りではなかったが、パックされた生ハム類やサラミなど、肉製品も置いてあった。
共通点としては、大量販売ではないということ。こぢんまりとした店の規模に、置いてある製品もあくまで適量という趣だった。
なぜ日本では量り売りの店が少ないのか?
2019年11月11日、ちょうど帰国している佐藤友啓さんや、食品企業の社員の方と、「なぜ日本では量り売りの店が少ないのか」について話した。結論としては、「食品の衛生面を危惧する」「効率を重視し、手間を嫌う」「新たな仕組みを導入し、客に説明するのが面倒」などの理由が挙げられた。
一方で、日本のスーパーで多く見られる、野菜や果物のまとめ売りに関する難点も挙げられた。昨今では日本の平均世帯人数が2名プラスアルファと少なくなっており、大量に買っても余って食品ロスになり、腐らせてしまう。だから、バラ売りのニーズが高まっており、量り売りの形態も検討されている・・・という事情も挙げられた。つまり、量り売りが検討されているのは、過剰包装の観点からのニーズではない。
ロス・マーケットの代表であるフレデリックさんは、フランスからデンマークに移り住んで以来、包装が多過ぎると感じてきた。そのことが、ロス・マーケットの開店につながった。
日本ではどこに量り売りの店があるの?
日本全国の量り売りの店については、「プラなし生活 Less Plastic Life」というサイトが日本の「量り売りショップ」が見つかる!マップとリストで一挙に紹介という記事で、リストにして詳しく教えてくれているので、参考にして欲しい(2019年9月13日更新。2019年11月12日現在の情報)。
量り売りの店を、個店でやろうとすると、大量販売は難しいだろう。だが、このような店を選ぶ消費者も必ずいる。デンマークのLOS marketには2日間訪問したが、両日とも、客足は途切れなかった。全ての店で大量販売や効率化を目指す必要はないのでは?
参考情報
注:デンマーク語の文字が一部表記されないため、「O」などのアルファベットで代用しています。