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Amazonによる買収完了で値引き戦略に移行したWhole Foods Market

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
今まで余り見られなかったSaleの文字が躍るWhole Foods Market

米国のオンラインショッピング大手Amazonが、米国に450店舗のネットワークを誇る高級スーパーマーケットWhole Foods Marketを130億7000万ドルで買収したというニュースには驚きがありましたが、2017年8月24日にその取引の完了が伝えられました。

プレスリリース:Amazon and Whole Foods Market Announce Acquisition to Close This Monday, Will Work Together to Make High-Quality, Natural and Organic Food Affordable for Everyone

http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=2295514

米国テキサス州オースティンで創業し39年がたったオーガニックや健康志向の人々から支持を集めるスーパーが、ネット流通最大手の傘下に入ることで、Whole Foods Marketで扱っている商品を、Amazonからオーダー出来るようになる仕組みなどに期待がかかります。

バークレー・ギルマン店に掲げられたAmazon傘下となったことを告げる幕
バークレー・ギルマン店に掲げられたAmazon傘下となったことを告げる幕

買収完了後に、カリフォルニア州バークレーのギルマンストリートにあるWhole Foods Marketの店舗を訪れてみると、Amazonのロゴが入った横断幕が垂れ下がり、「We are growing something good.」というフレーズが書かれていました。

その良いことと言うのは今後色々と明らかになってくるのでしょうが、店内に入ってみると「Sale」の文字が踊り、値下げの札が棚じゅうに貼られていました。今までの高品質な商品を割引価格で提供するところから、AmazonとWhole Foodsの戦略がスタートするようです。

商品棚に圧倒的に増えた値下げやまとめ買い割引きの札。
商品棚に圧倒的に増えた値下げやまとめ買い割引きの札。

例えばフェアトレードのバナナ、有機栽培のアボカドにタマゴ、魚介類、挽肉など、Whole Foodsで人気のある商品を低価格化します。

このことは、Whole Foodsに高いロイヤリティを持ちながら「高いな」と言う印象を持っていたミレニアル世代にとって、Whole Foodsとの付き合いにおける頭痛のタネ(=コスト)を軽減してくれます。同社の支持層が、より利用しやすくなることが期待できます。

またプレスリリースよると、Amazon Primeメンバーに対する特別な割引きと、リワードプログラムの導入も計画されています。

AmazonのオンラインアカウントとWhole Foodsの店頭のシステムを統合するだけでなく、Whole FoodsのプライベートブランドのAmazonでのオンライン取り扱いや、オーダーした商品を受け取れるAmazonロッカーの設置など、オンライン、実店舗双方の体験を向上させる施策を打ち出そうとしています。

こうしたWhole Foodsの変化に対して、その他の流通各社も、値引き合戦に参入し始めました。筆者のアパートの近所にもあるスーパーマーケットチェーンのSafewayで一番印象的だったのは、通常・有機栽培ともに、バナナが半額に値下げされたことです。

もちろんWhole Foodsの変化はバナナの値段だけでは終わらない事に加え、競合となる大手小売各社がAmazonほどのオンライン体験を確保できていない現状を見ると、Whole Foodsがそこまで大きく値引きをしなくても良い、と見ることもできます。

価格の問題、体験の問題を含め、アメリカの日用品の購買に関する競争が、これから数年、活発になっていくことが期待できます。AmazonとWhole Foodsのチームに対抗するような、流通に関わるスタートアップの登場も、期待できるかもしれません。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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