京都市立芸術大学が「京都芸術大学」への名称変更差止めを求めて京都造形芸術大学を提訴
「京都芸術大学」への名称変更を計画している京都造形芸術大学に対して京都市立芸術大学が抗議を続け、商標権獲得争いになっていることは既に書きました。(参照過去記事1、参照過去記事2)しかし、何と京都私大芸術大側が京都造形芸術大学側の名称変更の差止めを求めて提訴したようです(参照ニュース)。両者は商標権について争ってきましたが、それより先に司法の場で雌雄を決することになりそうです。
ニュースからは、提訴の根拠が明らかではないですが、不正競争防止法に基づくものと思われます。商標はまだ審査中で登録されていないので商標権は差止めの根拠にはなり得ません。おそらく不正競争防止法2条1項1号または2号だと思われます。
なお、このような行為をする「おそれ」があるだけで差止めを請求することができます(3条1項)。
ここで、京都市立芸術大学側は、1号狙いであれば「京都芸術大学」が京都市立芸術大学の略称として周知であること、および、「京都芸術大学」の名称を京都造形芸術大学が使用することで京都市立芸術大学との混同を招くことを立証しなければなりません。2号狙いであれば「京都芸術大学」が京都市立芸術大学の略称として著名であることを立証すれば足ります(「著名」は「周知」より有名度が高い状態を言います)。加えて、京都市立芸術大学が周知または著名であり、「京都芸術大学」が京都市立芸術大学と類似するという主張も可能かと思います。いずれにせよ、商標権に基づく差止めよりはちょっと大変です。
学校名に関する不正競争防止法の判例としては、東京の青山学院が、広島に新設された「呉青山学院」なる学校に名称の使用差止めを求めたものがあります(判決文)。こちらは、東京の青山学院の著名性が認められ、不正競争防止法1条2項による差止めが認められました。
なお、一般に商標権は不正競争防止法によりオーバーライドされますので、裁判で差止めが認められれば「京都芸術大学」商標登録の結果がどうなろうとこちらの裁判結果の方が優先されます。