実はもっとややこしかった京都造形芸術大学vs京都市立芸術大学の商標権合戦
「京都芸大」の名称に関する京都造形芸術大学と京都市立芸術大学の争いと商標権の問題について前回書きました。すみません、その記事では重要な事実が漏れていました。
京都造形芸術大学側(学校法人瓜生山学園)が、京都市立芸術大学より1日先んじて、「京都芸術大学」を商標登録出願していたのです(タイトル画像参照)。前回記事では、「京都芸大」、「京芸」等の名称を早めに商標登録出願していた京都市立芸術大学の動きを「好手」と評しましたが、必ずしもそうではありませんでした。
日本の商標制度は先願主義なので1日でも出願日が早い方が優先されます。仮に、京都市立芸術大学が1日早く出願して、同日出願になっていれば、「くじ」(特許庁に置いてあるガラガラポン)による決戦になっていたのですが。
京都市立芸術大学側としては、このままでは、「京都芸大」や「京芸」等の略称の使用を独占できても、肝心な「京都芸術大学」を使用できない(京都造形芸術大学側に独占される)という問題が生じ得ます。
可能性としては、「京都芸術大学」は京都市立芸術大学の略称として周知であること、および、(「京都市立芸術大学」が登録された前提で)先願である「京都市立芸術大学」と類似することを理由として京都造形芸術大学側の出願が拒絶されることが考えられます。仮に登録されてしまったとしても、京都市立芸術大学側は異議申立や無効審判を請求できます(審査段階でも同様の情報提供を行なって審査官の審査に影響を与えることは可能です)。なお、実際に「”京都芸術大学”が京都市立芸術大学の略称として周知」なのかどうかは、私は美大業界に詳しいわけではないので判断保留とさせていただきます。
ところで、京都市立芸術大学側が「京都芸大」、「京芸」等を出願したのは7月11日であり、その後、「京都芸術大学」のみ7月18日に出願しています。これによって、京都造形芸術大学側に1日遅れることになってしまったわけです。全部まとめて11日に出願しておけばと悔やまれるところではないでしょうか?一般に争いが起きそうな領域での商標登録出願は1日でも早く出願することが重要です(私も1日遅れで先願を逃すのを恐れていったん帰宅した後で深夜に事務所に戻って出願したことがあります(先願の判断は日単位なので時刻は関係ありません))。
追記:京都市立芸術大学側が京都造形芸術大学側に名称使用差止めを求めて提訴したそうです(参照記事)。詳細不明ですがおそらく不正競争防止法ではないかと思います(商標権はまだ発生していないので商標権侵害訴訟にはなり得ません)。不正競争防止法ですと、「京都芸術大学」が京都市立芸術大学の略称として周知であること、および、京都造形芸術大学が「京都芸術大学」の名称を使うと消費者が誤認混同するおそれがあることを立証しなければなりません。最終的にどうなるかはわかりませんが、それほど無理筋の訴訟ではないと思います。