ネットに夢中な夏を過ごした君と保護者へ ~新学期、素敵なスタートを切るために~
もうすぐ夏休みが終わります
どんな夏休みだったでしょうか。
キャンプや旅行等、新しい場所に行った人。今まで自分がしたかったことや新たなチャレンジをした人。いろいろな思い出ができた夏だったと思いますが、中にはネットで新しい経験をたくさんした人も多いのではないでしょうか。
旅行や体験は、時間と場所が決まっていますが、ネットはいつでもどこでもできます。そのため、特に夏休みは昼と夜が逆転してしまう小中高校生がたくさんいます。
今回は、この夏、ネットに夢中になってしまい、新学期を迎えるのが不安になってしまっている人に向けて書いてみます。よい機会ですので、自分の生活、自分自身を少し振り返ってみましょう。
離島で「オフラインキャンプ」ネット断食?
私はこの夏、そういう人たちとたくさん接してきました。
私は4年前から、研究室に出入りする学生達10数名と一緒にオフラインキャンプに関わっています。オフラインキャンプとは、夏休みに瀬戸内海の離島で、ネットに夢中な子どもたち10数名と一緒に4泊5日で、ネットから離れた生活を送ってみるものです。3食すべて自炊し、海水浴やカヌー、スイカ割り等、みんなで楽しい夏を過ごします。正確には「ネット断食」ではありません。1日1時間だけ、ネットを使える時間を作り、その中で自分で自分とネットについて考える機会を作ります。
このキャンプには学校に行けなくなってる子もたくさん参加しています。5日間の多くの行事の合間に、私や大学生メンターは何度も子どもの相談に乗り、子どもたちが充実した「リアルの生活」に戻るためのプランを一緒になって考えます。自分が頑張ること、保護者に協力してもらうことなどを考えながら、全員が自分なりの目標を作っていくのです。そうすると驚いたことに、多くの子が自分なりの生活を取り戻してくようになっていきます。
オフラインキャンプを開催して4年。うまく「リアルの生活」に戻ることができる子どもたちに共通することがわかってきました。
1.目標を自分で決める
リアルの目標とネットの目標、両方を決めてみるとうまくいきます。
1)リアルの目標を決める
まずリアルの目標を決めます。そして、それを実現するためにネットをどうするかを考えます。10年後の目標でも1週間後の目標でも良いので、まずはなりたい自分を決めます。リアルの目標が決まったら、次はネットのルールです。
2)ネットルールを決める
学校に行けない理由で一番多いのは「夜遅くまでネットをしていて起きられない」です。これを克服するために、まずは登校するためには何時に起きるか考え、寝る時間、ネットを終わりにする時間を順番に決めます。スマホやゲーム機等の明るい画面を見ていると、すぐには眠れません。少なくとも寝る1時間前には終わるように設定してください。ルールは保護者と一緒に考えても良いですが、保護者が勝手に決めたルールは守れないことが多いので、自分で考えることが重要です。ルールを決めたら、冷蔵庫等、目立つ場所に張ります。目立つところに張ることで何度も確認できるからです。
ルールを決めても、実際はなかなかうまくいきません。生活してみて、最初は1週間程度ごとにルールを見直すとうまくいくようです。また、慣れてきても学期の変わり目などの節目には見直す習慣をつけましょう。
2.規則正しい生活をする
1)決まった時間に起床、就寝
決めた時間になったらネットをやめて寝る準備をしましょう。眠れなくても目をつぶって横になっていると疲れがとれます。そして朝、決まった時間に起きて、太陽の光を浴びるようにしましょう。規則正しい生活を続けると気分もだんだんと整えられてきます。
2)「ありがとう」
「人間関係に疲れた」と言う人。「現実逃避のためにネットに逃げた」と言う人。
「みんなが自分のことを嫌いかもしれないと感じた」
「寝不足でイライラして、ささいなことで友達とケンカした」
「ネットで偉そうなことを書いたら、みんなに無視された」
キャンプの参加者たちの多くが「友達を作るのが下手だ」と勝手に思っています。そういう人たちに私から提案です。
「何かしてもらったら『ありがとう』と言おう」です。ついつい相手の悪いところを見てしまいますが、相手の良いところを見つける努力が必要です。何かしてもらったときに「ありがとう」と自然に出るようになると急に人間関係がうまくいきだします。
3)「ごめんなさい」
オフラインキャンプでは、5日間も一緒に生活するので喧嘩や衝突が起きることもあります。部屋で扇風機の取り合いをしたり、お菓子の取り合いをしたり……。その際は「ごめんなさい」を相手に伝え、お互いがしっかり仲直りができるようにします。キャンプでは大学生がほぼマンツーマンでつきそい、人間関係がうまくいくための訓練を徹底的に行っています。すると、キャンプの最後にはどの子も見違えるように成長し、「自分も少しはやれるかもしれない」という気持ちになっていきます。
3.保護者に協力してもらう
保護者に怒られてばかりだと辛い気持ちになりますよね。自分の希望や願い、不安や心配をしっかり親に話してみましょう。保護者に協力してもらうとうまくいくことが多いです。
1)ルールを一緒に考える
子どもたちは、特に思春期は、保護者に勝手に決められたルールは守れないことが多いです。
「親に勝手に決められてむかついて逆にいっぱいネットした」
「自分で決めたら守ろうと頑張る」
「最低でも相談しながら決めたい」
すべて子どもたち自身の声です。
自分で考えて決めたルールはうまくいくことが多いです。守れそうもないルールや、夜3時に終わるなどの生活に支障がでるものは無意味ですが。
守ることができるようなルールを保護者が一緒になって考えましょう。話し合いの中で、「終わる時間の30分前になったら、呼びかけてあげるね」等、保護者から素敵な提案があることがあります。話し合って出てきた提案は、親子ともどもうまくいくことが多いです。
保護者と意見がわかれた時の対応が重要です。
例えば子どもは「11時まで」で、保護者は「10時まで」と意見が分かれたとします。子どもが11時で押し切るのも、保護者が勝手に10時に決めるのもよくありません。大切なのはそれぞれが理由をしっかり言い合って話し合うことです。
私が関わったA君の例を紹介します。A君は火曜日と金曜日に塾が9時まであるので、帰って1時間はゲームしたいから寝る時間を11時と主張しました。お母さんは「睡眠不足になるから10時には寝なさい!」と猛反発。私が話し合いに参加してA君が塾の終了時間にこだわっていることがわかり、「火曜と金曜は10時半、その他は10時」と提案するとすんなり決まりました。お互いの意見をしっかり聞き、お互いが納得するまで話し合うことが重要です。
2)守れたら褒めてもらう
ルールを守れたら、言葉にして褒めてもらいましょう。
子どもがネットに夢中になると、どうしても叱られることが多くなります。ルールや目標を守れたら、自分からも保護者に報告して、小さな事でも褒めてもらいましょう。ご褒美のケーキなどを一緒に食べたら、楽しい気持ちになれます。
新しいスタートに向けて
もうすぐ新学期です。素敵なスタートを切るために、ぜひ私が書いたことを参考にしてください。ただ、どうしてもつらいとき、しんどいときは無理せずにゆっくり休んでください。無理して頑張ることだけが勇気ではありません。思い切って休むことが必要なときもあります。
残り少ない休みの間、自分の気持ちをしっかり見つめ直してみてください。ルールを作ったら良いのか、自分の人間関係のあり方を見つめ直したら良いのか、ネットのルールを決めたら良いのか、もう一度考えてみましょう。
悩んでしまったら相談を
悩んでしまってどうしようもないときは、保護者だけでなく、学校の先生や友達、地域の方等、相談してみましょう。
また、いろいろな相談機関もあります。多くが自分の名前を言わなくても丁寧に相談に乗ってくれます。下に書きますので、参考にしてください。
◇■相談窓口
◆児童相談所全国共通ダイヤル
189=年中無休、24時間
◆24時間子供SOSダイヤル
0120-0-78310(なやみ言おう)=年中無休、24時間
◆チャイルドライン
0120-99-7777=月~土曜日の午後4~9時(18歳まで)
◆子どもの人権110番
0120-007-110=平日午前8時半~午後5時15分
◆生きづらびっと
LINEアカウント@yorisoi-chatで友達登録
水・土曜以外の午後5~10時半(受け付けは午後10時まで)
◆こころのほっとチャット(SNSチャット相談)
ライン、ツイッター、フェイスブックから @kokorohotchat
毎日正午~午後5時(受け付けは午後4時まで)と午後5~9時(受け付けは午後8時まで)
応援してくれる人がいます
実は、皆さんには応援してくれる人がたくさんいます。
保護者や先生、地域の方などは、時には皆さんが聞きたくないようなお説教や注意をします。実は皆さんのためを思って、一生懸命しているつもりなのですが、ついつい言葉が荒くなったり、押しつけがましくなってしまいます。
私も20年近く、中学校教員をしていたので振り返ると反省ばかりです。もしかしたら困っている子どもたちを追い詰めてしまっていたかもしれません。しかし、生徒を思う気持ちは強く持っていたつもりです。
みんな、皆さんのためを思っています。何とかしてあげたいのです。困ってしまっているとき、悩んでしまっているとき、ぜひ皆さんのまわりの人を頼ってみてください。
皆さんの立場にたって考えてくれる人が実はたくさんいます。
みなさんが、自分なりのスタートを切ることができることを心から願っています。