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【訂正版】高校生46%が1日5時間以上,0歳児12%がネット利用 内閣府青少年インターネット調査公表

竹内和雄兵庫県立大学環境人間学部教授
(写真:イメージマート)

驚愕! 内閣府「青少年インターネット調査」結果

 2月28日,内閣府が「青少年のインターネット利用環境実態調査」を公表しました。私はこの調査に委員として関わっていますが,調査結果に非常に驚いています。コロナ禍のため,ある程度,子どものインターネット利用に影響があると思っていましたが,ここまで如実に反映されているとは思っていませんでした。事態は予想以上に深刻です。

 ひとまず,①利用時間,②低年齢化、2点について書きます。

①高校生の46%が平日5時間以上

 平日1日あたり,5時間以上インターネットを利用しているのは,小学生(10歳以上)の22%,中学生の36%,高校生の46%です。3時間以上は,小学生の52%(34%),中学生の67%(52%),高校生の78%(70%)です(( )内は昨年度)。この国の小中高校生の過半数は,平日1日あたりインターネットを3時間以上利用しています。この数字は要注意です。

 いろいろな方がおられて,私がこういう事実を告げても,「子どもたちはネットで勉強もしているし,家族との連絡にも使っている。音楽も聴いているので,時間が伸びて当然」と平然と話され,「ネット時代の今,むしろ歓迎すべき」とまでおっしゃいます。

 確かにそういう側面もあるかもしれませんが,昨年度からインターネット利用時間の増加は,小学生約61分,中学生約60分,高校生約63分です。学校でのGIGA端末利用が進んでいることも大きな理由です。しかし,昨年度から利用時間が最も伸びているのは「趣味・娯楽」で,「勉強・学習等」を上回っています。

 私は全国各地の中高生とインターネット利用について話すことが多いですが,彼ら自身は深刻に感じています。一昨日も神奈川県の中高生と話しましたが,「親と話し合ってルールを決めるべき」「親と納得できるまで話し合ってルールを作ると良い」とこの問題への大人の関与に肯定的でした。

 これらの意見は神奈川県だけの傾向ではなく,昨年度の「スマホサミット」で,子どもたちの基調となる意見でした。さすがに手放しで「大人がルールを決めてほしい」とは言いませんが,「大人と子どもで使い方を考えていくべきだ」「特に小学生はまだ判断できないから,親や先生が導いてあげるべき」と言います。「放任する親は無責任」とまで言いました。

②0歳12%,2歳63%がインターネット利用

 0歳のネット利用は、12%と昨年度の7%から5ポイントも伸びました。驚くスピードでインターネット利用の低年齢化も進んでいます。乳幼児が自分でインターネット利用をするとは考えにくいので,当然保護者が利用させているのだと思います。育児の合間にYouTube等を見させていることは,少し前のテレビが置き換わっただけで大騒ぎすることではありませんが,YouTubeとテレビが大きくことなるのは,テレビは時間が来たら終わりますが,YouTubeは次々と関連動画が提供されることです。

 こういう事態を踏まえて,私は学生たちと一緒に小学校低学年対象の情報モラル教育に取り組んでいます。ちょうど,昨日も明石市の小学校に行ってきましたが,低学年のインターネット利用状況は,予想を大きく上回っていました。

 小学1年生に「インターネットしてる人は?」と質問すると半分くらいしか手が挙がりませんでしたが,「YouTube見てる人は?」と聞くとほぼ全員が手を挙げました。不思議になって聞いてみると「YouTubeってテレビでしょ?」と言います。「テレビのリモコンにYouTubeってのがある」と言います。

 「長時間利用」「ながらスマホ」「課金」「ネットいじめ」「個人情報」の5つについて授業しました。すべての理解は難しいと思いながらの授業でしたが,子どもたちは大学生と私の予想を大きく上回り,しっかり理解し,対応策まで考えてくれました。

 子どもたちは各家庭でいろいろなルールを作っています。「お父さんがやめなさいと言うまで」「お風呂に入るまで」など様々ですが,「僕はゲームは15分で終わるようにしている」と教えてくれる子がいました。「前は30分だったんですが,おしっこをもらしちゃったので15分で終わるようにしている」そうです。失笑されるかなと思ったら,どの子も真剣に「いいルールだな」と言っていました。子どもたちにとって身近で,真剣なテーマなのだと実感しました。

これからのために

 これから、このような低年齢化の流れは続くと予想しています。

 私たちは,来年度,神戸市と尼崎市で小学3~4年生対象にスマホ等についての授業をすることにしています。特に神戸市は,2年計画で市内の164校すべての小学校に出前授業に行くことにしています。

 まだ何も決まってはいませんが,2年計画終了後は小学1~2年生に対象を引き下げる提案をしようと思っています。とうとうここまできた,という感想です。

 後日,続報を書きます。

※前回の記事で12歳のスマホ所持率が85%と書きましたが、正しくは、「スマートフォンでインターネット接続している」と答えた12歳(小6)のうち、自分専用スマホ機器でのインターネット利用率は85%」です。85%という数字に特別の意味を持たせることは良くないので、その部分をカットして、方向性を書き加えました。お詫びして訂正します。

兵庫県立大学環境人間学部教授

生徒指導提要(改訂版)執筆。教育学博士。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より大学教員。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。2013年ウィーン大学客員研究員。

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