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「校則を私たちが考えたい!」寝屋川市の中学生が「統一校則」に挑みました

竹内和雄兵庫県立大学環境人間学部教授

寝屋川市中学生サミット

寝屋川市では、「寝屋川市中学生サミット」として、市内12中学校の生徒会執行部員等が集まって、2009年から自分たちの課題を自分たちで考える取組をしています。これまで、「いじめ」「インターネット」など、自分たちに身近な問題を中学生の視線で考えて対策してきました。

コロナ禍で一時中断していましたが、昨年度から再開し、今年集まったメンバーは、今年のテーマとして、「校則」を選びました。

「学校ごとに校則が違うのはおかしい。市内みんなで一緒に考えたい」というのが始まりでした。

今年度、私と大学生諸君は、ファシリテーターとして関わり、中学生が自分たちの思いをかたちにできるよう支援しました。私は、もともと寝屋川市の中学校教員だったこともありますが、文部科学省「生徒指導提要」の改訂に関わったこともあり、彼らの動きを全国のモデルにしたいという思いが強くありました。実際、彼らの議論は、私としても目からうろこが取れる場面が何度もありました。

NHKニュースから

NHKが何度も取材にきてくださり、10分程度のニュースとして扱ってくださいました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20241030/2000088772.html

今年の取組

  5月08日(水) 話し合い1

   学校の ①良いところ  ②改善すべきところ

  6月03日(月) 話し合い2 

   今年は何に?:校則が違う→市全体アンケート

  6月10日(月) 話し合い3

   取組動画撮影→3ブロックで話し合い:理想の校則

  7月22日(月) 夏サミット

   学校のルールについて議論1(熱中症?三角座り?)

  8月05日(月) サミット交流会

   学校のルールについて議論2(着こなし?制服?)

   →「水分補給」「スポドリ」「ハンディ扇風機」「塩タブレット」

  9月04日(水) 話し合い4 各学校の進捗確認

   提案内容を整理

  10月24日(水) 話し合い5 共通ルール決定

   来年1年かけて各校で校則案作成

こども真ん中

何度も集まって話し合いましたが、私も大学生も支援者に徹しました。話しやすい雰囲気づくりと議論の整理に尽力しました。

また、ユニセフの方に「子どもの権利条約」について説明してもらったり、校長先生を通して寝屋川市医師会に意見を求めたり、大人は彼らが困ったら手助けを全力でしていきました。まさに「こども真ん中」です。

これまで校則は、教師が一方的に提示してきました。これからは、こども一緒に考えます。

しかし間違ってはいけないのは、こどもだけで考えるのではなく、こどもを真ん中にして、おとなも一緒に考えることです。彼らの主張を全面的に受け入れるのではなく、一緒に考えていくことです。

彼らの考えが足りない部分は再考を促したり、提案したりしていくことが何より重要です。

話し合いの様子

7回の話し合いで、「学校それぞれに事情があり、統一するのは難しい」ということがわかりました。「第一ボタンを止めるのは苦しい」という意見が出て議論したところ、学校ごとに第一ボタンの位置が異なっていることもわかりました。

約1年かけて、「統一を目指すのではなく、各校で校則を見直すための共通の考え方、方向性を決めよう」ということになりました。彼らの議論で彼らが大切にしたいと決めたのは、次の3つでした。

共通ルール(大切にすること)

①健康安全 ②思いやり ③納得(生徒も先生も)

みんなが健康で安全に学校生活を送ることができること。

みんなが思いやりを持って生活できること。

そして日々の生活を納得して過ごせること。

特に「納得」は、生徒だけでも先生だけでも不十分で、生徒も先生も両方が納得できることが必要としました。素晴らしいと感じました。

熱中症対策

今年度は、記録的な猛暑であったこともあり、彼らは熱中症対策に力を入れました。今年度中に各学校で議論し、学校ごとの結論を12月に持ち寄ることになっています。

 ①水分補給のタイミング

 ②スポーツドリンク

 ③ハンディ扇風機

 ④塩タブレット

3年生は引退し、2年生が!

3年生の生徒会執行部諸君は受験のため引退。ここからは2年生諸君が引き継いでいきます。先輩の思いを後輩が引き継いでいきます。楽しみです。

兵庫県立大学環境人間学部教授

生徒指導提要(改訂版)執筆。教育学博士。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より大学教員。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。2013年ウィーン大学客員研究員。

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