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主力欠場も連勝止まらぬBリーグ三河 今季の新たな強みとは?

大島和人スポーツライター
(C)SeahorsesMIKAWA Co.,Ltd.

エース比江島が欠場も大阪に連勝

シーホース三河が止まらない。11月4日の大阪エヴェッサ戦を79-65と制して、現在は12勝1敗で断トツのBリーグ中地区首位。9月30日の栃木ブレックス戦から続く連勝も「12」まで伸びている。この勢いが続けば11月18日の横浜ビー・コルセアーズ戦でB1の連勝記録「15」に並ぶ。

ただし第7節(3日、4日)の大阪戦は、2試合とも日本代表の比江島慎が欠場していた。彼はメンバー入りこそしていたものの、左肩の痛みがあり、試合前のウォーミングアップにも参加していなかった。

Bリーグと並行して、日本代表も11月24日に開幕するワールドカップ・アジア1次予選の準備を続けている。第9次合宿が10月30日(月)~11月1日(水)で、第10次強化合宿は11月6日(月)~11月8日(水)といったように、試合の隙間を縫って連続して短期合宿が組まれている。バスケは開催国枠が保証されておらず、男子日本代表が2020年の東京五輪へ出るために、2019年のワールドカップ出場権を獲得することがおそらく「前提」となる。代表の強化はBリーグの成功にとっても大切だ。

とはいっても代表のハードスケジュールによるリーグ戦への短期的な悪影響は明らか。三河は橋本竜馬、金丸晃輔も直近の代表活動に絡んでいるが、この二人も今節は先発から外れ、プレータイムを多少抑えた起用になっていた。

それでも三河は連勝を続けている。第7節の大阪戦は狩俣昌也、森川正明、西川貴之といった脇役が先発に回り、連勝に大きく貢献した。

叩き上げの台頭で主力依存から脱却

昨季の三河は「金丸と比江島に頼るチーム」という印象が強く、実際に二人は1試合平均で30分近いプレータイムを任されていた。ただしファイナル進出を懸けた栃木ブレックスとの第3戦(延長時限として行われる10分間の変則ショートゲーム)は、最後に選手層の厚い栃木との差が見えて、比江島のミスから試合を落としている。今季は二人と同じウイングの位置に西川貴之、松井啓十郎といった実力者を獲得しているが、出場時間を縮めることでそれぞれのパフォーマンスを「濃く」する狙いだろう。

比江島や金丸、橋本は高校時代から世代のトップを走っていたエリート。三河は旧リーグ時代からの強豪で、鈴木貴美一ヘッドコーチも20年以上もチームの指揮を執っている。クラブの色としてはフレッシュな挑戦者というより受けて立つ旧体制の側で、また外国出身選手も含めて「個の能力で勝つ」というイメージを持たれがちだった。

しかし狩俣と森川に関しては、他クラブでの下積みも経験した完全な「叩き上げ」だ。二人は加入2季目だが、狩俣が福島ファイヤーボンズ(bjリーグ/現B2)、森川は豊田合成(NBDL/現B3)からステップアップして三河に加わった。4日の大阪戦は狩俣がメインポイントガードを務め、森川はチーム最多の17得点を挙げている。

森川は試合開始直後に速攻からチーム初得点を挙げると、第1クォーターだけで11得点。「昨日はオフェンスでもうちょっと行けた部分があったので、修正して序盤から積極的に行こうと考えていた」という本人の狙い通りのプレーを見せた

「『ベンチが弱い』と言われて悔しい思いもした」

森川は2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)でプレーする25歳。190センチの長身だが、鋭いドライブでゴール下に切れ込む「スラッシャー」タイプだ。4日の大阪戦では突破が面白いように決まり、加えてミドルやスリーといった距離のあるシュートもよく決まっていた。

鈴木ヘッドコーチは森川の起用理由と評価についてこう述べる。「比江島くんが肩を痛めていて出られない。通常なら(代役として)金丸くんなの?KJ(松井)なの?という話も出るけれど、森川くんは練習で非常に調子が良くて、ウォーミングアップを見てもシュートが入っていた。オフェンスに関してはウチの誰にも引けを取らない能力がある」

西川や松井、高速ポイントガード村上直の加入もあって今季の森川は出場が減っていた。彼はこう口にする。「西川やKJさん、(村上)直さんが早い段階で馴染んですごく活躍もしているのを見ると刺激にもなる」。

加えて昨季から続く感情もあった。森川は言う。「僕個人としては去年『ベンチが弱い』と言われて、個人的に悔しい思いもした」

叩き上げ組たちが三河で学ぶこと

一方で三河の競争に身を置くことで得るものもあるという。「チームに金丸さんと比江島さんという日本代表クラスがいるので、練習もすごく勉強になる。そこでしっかりハードにやって試合に向けてしっかり準備をしている」(森川)

森川はBリーグの中でも珍しい東海学生バスケットボール連盟(愛知学泉大)の出身で、卒業後も実業団で2季プレーしていた。そんなキャリアから「エリート軍団」に進むことは異例で、壁もあっただろう。森川は自身の挑戦をこう説明する。「去年は『これがトップリーグなんだ』とレベルの差を痛感しましたけれど、その中でも自分が通用する部分は確実にあった。自分の中ではまだ思うようなプレーを出せていないんですけれど、こういう状況が自分にとってプラスになっている。壁を乗り越えたときに、すごく成長できているというのを楽しみに思える」

狩俣も三河に加入して学んだものがある。「バスケットの勝負どころ、攻めどころがより分かるようになってきた。勝つためにどういうバスケットをしないといけないかというのは去年も学んだし、今年も学んでいます。ヘッドコーチが作り上げてきたチームのカルチャーがあって、勝つためのバスケットがチーム全員に浸透しているなと思います」

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三河が手に入れた新たな強み

「勝者のカルチャー」は、加入して2季目の彼らにも浸透してきた。さらにレベルの高い新加入選手も迎えて競争が活性化し、主力頼みの状況は解消された。三河はチームで戦うことで、連勝を続けている。

狩俣はこう胸を張る。「去年と違った層の厚さは見せられていると思います。比江島選手や金丸選手に頼らず、代わった選手が自分の役割を徹底して、全員で勝つところを今は表現できている。それが連勝につながっているのかなと思います」

森川も言い切る。「チームでバスケットをしている感じがある。誰かに任せるのでなくしっかり全員で攻めて、全員で守るということができている」

この戦いを続けられればもう「個のチーム」とは言われなくなるだろう。三河は昨季と違った層の厚さ、チーム力でBリーグ2季目の頂点を目指している。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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