「守りからリズムを」で頂点に立った神戸弘陵の強さの秘密(第24回全国高等学校女子硬式野球選抜大会)
『第24回全国高等学校女子硬式野球選抜大会』で優勝した神戸弘陵。今大会戦った5試合すべてが完封試合と、見事な勝利で頂点に立ちました。チーム通算成績を見ると、防御率0.00はもちろんですが、奪三振数38、失策0などの素晴らしい数字を残しています。
「守りからリズムをつくり攻撃につなげる」。神戸弘陵・石原康司監督はじめ、選手たちからも同様のセリフが聞かれましたが、いかに徹底されていたかがうかがえます。
鍛え抜かれた守備が垣間見えた瞬間
安定した守備を見せた神戸弘陵。内野ゴロのさばき方やスローイング、一塁手の捕球も、送球が外れたくらいは何のその。「毎日ノックしてますからね」と、よく守った彼女たちを思い返し、目を細めて語っていた石原監督ですが、体が反応しているだけではないように感じたのが、決勝戦でのこと。花巻東1死一塁から次打者が中飛に倒れた場面での外野手から内野手へ返球する動作の速さと正確性です。受けた内野手も次の動作への入りが素早かったのです。一塁走者のタッチアップの素振りもない中でも気を抜かないプレー。選手たちの意識の高さが失策0に表れています。
優勝チームに名捕手あり⁈ 4投手を支えた田垣朔來羽さんの存在
投手は、樫谷そらさん(3年)、伊藤まことさん(2年)の2枚看板に加え準決勝では、先発、樫谷さんの後に岡田未来さん(2年)、坂井歩夢さん(2年)が登板と、陣の層の厚さを見せました。
その投手陣を支えたのが、捕手の田垣朔來羽(たがき・そらは)さん。初戦から決勝まで一人でマスクをかぶりました。石原監督に彼女のことを尋ねると、間髪入れずに「非常にいい選手ですよ」とひと言。
ミットを構える姿は非常に大きく見えるのに、実際はかなり小柄なことに驚きます。決勝で花巻東打線を2安打、4奪三振という内容について「データから相手の苦手をつく配球を心がけていて、今日は外を中心に攻めました」と冷静に振り返りましたが、まだ2年生というから二度、驚きです。「ピッチャーが要求通りに投げ切ってくれました」と、投手を立てることも忘れません。
この試合でリリーフした伊藤さんは「マウンドに上がった時、緊張がほぐれるよう笑わせてくれて。田垣には精神面でいつも助けてもらっている」と話しましたが、岡田さんや坂井さんの登板時にも田垣さんは、せっかくの登板の機会、「今を全力で楽しめ」と声をかけたといいます。
3投手は同学年ですが、先輩投手だとやりにくさが……と思いきや、「樫谷さんはすごく良いボールを持っているのでそれを生かして欲しいと思ってリードしていますが、投げたいボールがある時は首を振ってくれるので、互いの意見がうまく出し合えていると思います」と言い、だからこそ「サインに頷いて投げてくれるときは、私を信じて投げてきて欲しい」とも。投手陣との信頼関係が厚いと感じます。
捕手で1番打者という新しい魅力も
守備でも見せました。決勝戦で5回に追加点を奪った直後の花巻東の攻撃では二盗を刺し、反撃の目を摘む好プレー。自慢の肩でも投手を支えました。
1番打者としての活躍も見逃せません。決勝戦の初打席で三塁打を放ち、そして先制ホームと、チームに勢いをつけました。「1番はチームのトップバッター。何が何でも出塁することが役割と思って打席に立ちました」(田垣さん)。大会通算打率.500の成績は、伊達ではありません。
昨年、大会準優勝の神戸弘陵。昨春入学した田垣さんですから、東京ドームでの先輩方の雄姿は「入寮前だったので」現地では観ていなかったのが、一年後には中心選手の1人として東京ドームに立っているのは凄いこと。田垣さん自身も「自分が東京ドームという大舞台に立てるとは思ってもみませんでした」と言い、「立たせて貰った以上、やるべきことがあると思いました。日頃から支えて貰っている方々に優勝という最高の形で恩返しできてよかったです」とも話しました。こんなコメントをするなど、三度驚きました。
くどいようですが、田垣さんはまだ2年生です。神戸弘陵の快進撃はまだまだ続きそうです。