オートバイのあれこれ『ドゥカティの単気筒に思うこと』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『ドゥカティの単気筒に思うこと』をテーマにお話ししようと思います。
つい先日のワールドプレミア(ニューモデル発表会)にてアンベールされた、ドゥカティの『ハイパーモタード698モノ』。
このモデルに目を丸くしたバイクファンも少なくないことと思います(私の目は丸くなりました)。
古参のドゥカティ好きからすれば、ドゥカティがモタードスタイルのモデルをラインナップしていること自体に驚いているかもしれませんが(昔のドゥカティにはオフロードテイストのモデルなんて無かった)、今回登場したハイパーモタード698モノに対するイチバンの驚きは、単気筒エンジンであるということ。
ドゥカティは1970年代以降、基本的にはLツイン(L型2気筒)エンジンを一貫して採用し続けてきました。
そしてそれは、2007年に初登場した『ハイパーモタード』シリーズでも同じでした。
そう、『ハイパーモタード』自体は15年ほど前から存在していたのですね。
既にLツインのモタードとして市民権を得ていたところに、単気筒バージョンの698モノが出てきたわけですから、面食らったのです。
そしてこれに対して私が感じたのが、「ドゥカティは伝統よりも実利を取ったのだな」ということ。
ここへ来てドゥカティは「モタードのエンジンと言えばコンパクト&トルクフルな単気筒」という世間の通例に則ったのです。
これはやはり、「伝統を貫きたい」というこれまでの姿勢が変化してきたということでしょう。
「伝統を捨てた」と言うとオーバーですが、これまで続けてきたことを止めたのは、ドゥカティに心酔しているコアなファンには落胆の出来事だったかもしれません。
しかし私は、この698モノは成功すると思っています。
理由は、掬い取れる層が広がるから。
Lツインのハイパーモタードに興味を持つ人の大半は、根本にまず「ドゥカティが好き」ということがあるでしょう。
しかし698モノのほうは、「単純にモタードが好き」というもっと広く浅い部分から掬えるのです。
それは、698モノが先ほど言った通例に則った設計だからですね。
伝統を守ることは大切だしそれはそれでカッコ良いと思いますが、それによって生じている機会損失も決して小さくないはずで、それで赤字を叩くようなことがあれば本末転倒です。
やはり、これからもっと多くの人に自社製品へ触れてもらおうと考えた時、伝統に固執している場合ではないとドゥカティは考えたのでしょう。
伝統を守ることよりも、698モノを通じて新規のドゥカティファンが増えてくれるのなら、そっちのほうがいいということなのだと思います。
価値観が多様化するなか、伝統を通すか革新(≒商売)を取るか…、ドゥカティとしても難しいところだと思います。
ハイパーモタード698モノの登場を目の当たりにして、なんだか色々と考えさせられた私なのでした。