自公と維新は最低、共産と社民、れいわが高評価―猛暑の夏に考える参院選、NGOが政策チェック
今週末10日に投開票が行われる参院選。記録的な猛暑や、ウクライナ情勢等をうけての燃料費高騰などに日本が直面している中、いかに石油や天然ガス、石炭などの化石燃料中心の社会から、太陽光や風力などの再生可能エネルギー中心の社会へと移行していくかは、ますます重要な争点となっている。そうした中、地球温暖化防止に取り組むNGO/NPO「気候ネットワーク」が、各政党の参院選公約を分析。脱石炭や再生可能エネルギーの導入目標など5つのテーマから、各党の政策を採点した(関連情報)。その結果、日本共産党と社会民主党が20点と同点1位。続いてれいわ新選組が16点と高く、立憲民主党は9点だった。そこから大きく下がり、国民民主党2点、公明党1点、日本維新の会1点。自由民主党は―1点と最低の評価だった。
〇各党への評価の基準は?
2050 年にカーボンニュートラル、つまり温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指すことは日本の基本路線となりつつある。問題は、それをいかに実現するかだ。今回、気候ネットワークが評価のポイントとしたのは、以下の5つ。
・2030 年の温室効果ガス削減目標の設定
・脱石炭火力発電の方向性
・水素およびアンモニア燃料、CCUS
・再生可能エネルギーの導入と野心的目標の設定
・脱原発の実現
これらのポイントについて、各党の政策集での記載があるか否か、その内容がどれだけ意欲的か、或るいはむしろ時代に逆行するものかを採点したのだという。
〇2030 年の温室効果ガス削減目標の設定
「2050年にカーボンニュートラルを実現する」と言っても、温暖化による破局的な影響を避けるため、今後、排出することのできるCO2等の温室効果ガスの量は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による科学的な知見により、あらかじめ決まっている。中期目標として、日本は2030年に 2013 年度比で 60%以上の削減が求められているのだ。
こうした科学的なファクトから言って、政府の「2013年度比で2030年46%~50%削減」という目標は不十分だ。今回の参院選公約では自民と公明が政府目標を追認。社民が「2030年目標2013年比60%削減」、共産が「2030年目標2010年度比50~60%削減」立憲民主が「2030年目標55%以上削減」と高い目標を掲げた。他方、維新は「46%削減」と政府目標より低い。また国民民主は目標すら示さなかった。
〇脱石炭火力発電の方向性
石炭による火力発電は、石油や天然ガスによるものより大量にCO2を排出するため、真っ先に廃止していくべきものである。具体的には先進国は 2030 年までに全廃、途上国も遅くとも 2040 年までに全廃することが不可欠だとされている。脱石炭について各党の公約を見ると、2030年までに脱石炭を目指すとしているのは、共産党と社民、れいわのみであった。自民は「石炭火力など火力発電の脱炭素化への一刻も早い移行を進める」とはしているものの、具体的な目標については記載がなく、維新と国民民主は脱石炭について言及すらしていない。
〇水素・アンモニア燃料、CCUS
政府は、燃焼時にCO2を排出しない水素やアンモニアを混ぜた火力発電(水素・アンモニア混焼)や、水素やアンモニアのみを火力発電の燃料とする専焼を目指すとしている。また、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を活用することで、石炭火力発電も維持するとしている。これらの問題点については、以前、詳しく書いたので、そちらを参照していただきたいが、水素やアンモニアの混焼・専焼は、水素やアンモニアの生産過程でCO2が排出されること(除くグリーン水素、グリーンアンモニア)、CCUSは火力発電向けとしては実用段階とは言えず、結局、石炭火力発電を延命させる口実になっていることなどの問題がある。
つまり、安易に水素・アンモニア、CCUSに頼ることは、むしろ脱炭素への取り組みの妨げとなるのだ。このような視点から各政党の公約を見ると、自民と公明、維新が低評価となる。
〇再生可能エネルギーの導入と野心的目標の設定
脱炭素のための最も現実的かつ、有効な対策として、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの推進がある。昨年10月、経産省・資源エネルギー庁が策定した、「第6次エネルギー基本計画」では、2030 年電源構成で再エネは「36~38%」となっている。だが、2030年までの大幅な温室効果ガス削減のためには、不十分な目標だ。今回の参院選の公約では、共産党と社民が共に「電力で2030年50%、2050年100%」と、最も高い再エネ推進目標を掲げている。立憲民主党とれいわ新選組は昨年の衆院選での公約で50%としていた2030年目標を今回は記載せず「2050年100%」のみが示された。自民は「再エネを主力電源化する」としているものの、具体的な目標は示さなかった。
〇脱原発の実現
原発は発電時にはCO2を排出しないものの、地震大国である日本で原発の再稼働や増設によって脱炭素を実現することは非現実的だ。また、原発依存を前提とした制度や大手電力会社の対応およびインフラが、再エネ普及の阻害要因となっている。
各政党の公約を見ると、自由民主党は「依存度を低減する」との前回(昨年の衆院選)での記載が消え、「原子力の最大限の活用」を明記している。また公明党は、「新設は認めず」という記載が消え、「将来的に原子力発電に依存しない社会」という表現に後退した。
立憲民主も前回「一日も早く原発ゼロを目指す」としていた表記を削除し、「2050年に原子力発電に依存しない社会を実現」と大きく後退した。
脱原発に最も前向きなのは、れいわで「即時ゼロ」としている。共産と社民も「2030 年ゼロ」という目標を掲げている。
〇参院選の投票の判断材料に
気候ネットワークは、今回の各党公約の採点に「この分析は気候変動対策・政策に関して評価するものであり、特定の政党・候補者を応援したり支持したりするものではありません」としているものの、筆者としては、投票の判断材料として大いに活用するつもりである。温暖化対策は、日本の経済の立て直しやエネルギー自給にも大きく関わっており、長期的には人類の存亡すらも左右するだけに、参院選のテーマとして、もっと重視されるべきだろう。
(了)