なぜ営業組織は変われないのか? 「飛べないノミ」「カマスの実験」の話から学ぶ 【法人営業大学】
■なぜ営業組織は変われないのか?
お客様のニーズが多様化し、従来の営業方法では新規開拓はできなくなっている。
にもかかわらず、なかなかこれまでのやり方から脱却できない営業組織が大半だ。とくに問題なのは、多くのベテラン勢が「確証バイアス」にかかっていること。自分にとって都合のいい情報にばかり焦点を合わせ、これまでのやり方を変えようとしない。
「あの企業も、従来のやり方を変えずに成功している」
「うちの業界は特殊だから、新しいやり方はむしろマイナスなんじゃないか」
と言って、聞く耳を持たないのだ。
そこで今回は有名な「飛べないノミ」「カマスの実験」の話から営業組織が学ぶべきことを解説していこう。
できれば、営業組織を変えたいと強く感じている社長に読んでもらいたい記事だ。
■「飛べないノミ」の話
営業組織を変えたいのなら、有名な「飛べないノミ」「カマスの実験」の話から学ぶべきだ。
そうすることで「確証バイアス」や「現状維持バイアス」が外れるし、営業組織が持っている本来のポテンシャルが発揮されやすくなる。
実際にこの話を参考に組織改革をして、大きく成長を遂げた営業組織は多い。ぜひ参考にしてほしい。
それでは「飛べないノミ」「カマスの実験」とはどんな話か?
まず「飛べないノミ」の話を簡単に紹介しよう。
蓋をしたコップにノミを入れると、最初のうちは元気よくぴょんぴょん跳ねる。しかしどんなに高くジャンプしても蓋にぶつかるため、ノミはしばらくして学習するのだ。
自分のジャンプの限界値をである。
こうなると、蓋を外してもノミはコップの外へは飛んでいかなくなる。本来ははるか遠くまでジャンプできる力があるにもかかわらず、だ。
■「カマスの実験」の話
この話とほぼ同じ内容なのが「カマスの実験」だ。
野生のカマスを水槽に入れると、同じ水槽に入っている小魚をすべて食べつくしてしまう。カマスは獰猛な魚だからだ。
しかし水槽の中に透明な板を入れ、小魚との間を仕切ってしまうと、カマスは小魚を食べることができなくなってしまう。
カマスは板に何度も頭をぶつけ、血だらけになっても襲い掛かる。しかし、いっこうに小魚に食らいつくことができないため、ついには諦めてしまう。
透明な板をはずしてもカマスはもう小魚には目もくれない。そのまま飢えて死んでしまうこともあるそうだ。
■共通しているのは「学習性無力感」
「飛べないノミ」と「カマスの実験」で共通しているのは「学習性無力感」である。
自分が何をやっても無力な存在だとわかると、努力することをやめてしまう。チャレンジしてもムダだと学習してしまうからだ。
このような「学習性無力感」にとらわれている営業組織は多い。
とりわけ「うちは特殊な業界だから」と口ぐせのように言っているベテランが多い組織はそうだ。
新しく組織のメンバーになった新入社員や、その業界を知らない人は、何が特殊なのかよくわからない。
だから、そのような人たちに
「この業界(コップの中、もしくは水槽の中)のことを知らないから、そう言うんだ」
と言い聞かせるようになると、末期状態だ。
どんなに組織改革を命じても、新規開拓に励めと言っても、難しい。本来は力があるのに発揮しようとしない。
■解決策はとても簡単!
それでは、どうすればいいのか?
どちらの話も結論は一緒。野生のノミ、野生のカマスを入れるだけ。それが最も効果のある解決策だ。
ノミが入っているコップに野生のノミを入れる。そうすると、野生のノミは「この業界の特殊性」なんて知らないので、コップの外にぴょんぴょん飛んでいく。その姿を見て驚くのは「飛べないノミ」たちだ。
最初は疑心暗鬼かもしれないが、恐る恐る飛んでいるうちに、
「飛べるんだ!」
と気づく。自分自身もコップの外にまでジャンプできて、
「コップの外に出られるじゃん!」
と歓喜するのだ。
カマスの話も同じだ。解決策は野生のカマスを水槽に入れればいい。
すると獰猛なカマスはすぐさま小魚を食べつくす。
その姿を見て、「どうせ小魚を食べようと思ってもムダ」と思い込んでいた餓死寸前のカマスたちが、
「小魚、食べられるのかよ!」
と気づいて、自分たちも果敢に小魚へ食らいつこうとするのだ。
したがって、営業組織を変えたいなら「野生のノミ」「野生のカマス」に託すことだ。
■社長自身も「飛べないノミ」か?
このように、これまで通りのやり方にこだわっているベテラン勢には託さないほうがいい。いろいろな事情で「学習性無力感」を味わっていたからだ。
それは本人たちの問題ではない。
これまでの何らかの事情で特殊な「蓋」が存在したのだ。「透明な板」があったのである。
だから新しいことに挑戦できないベテラン勢を責めてはならない。
組織を変えてくれるのは、ベテラン勢が語る「うちの業界は特殊ですから」にまったく共感しない部外者たちだ。「野生のノミ」や「野生のカマス」を外から連れてくるのだ。私たちのような外部のコンサルタントでもいい。
しかし、もし
「部外者には任せられない。任せられるのは、せめて業界に詳しい人でないと」
と社長が言うのなら、社長自身も「飛べないノミ」になっているのだと自覚しよう。それでは、これまでの二の舞なのだ。