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新型コロナ禍の避難所・避難場所に持参したらいいもの。ただし、荷物の準備で避難が遅れるのは本末転倒

あんどうりすアウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 
作成 あんどうりす デザインPCA.ink

 特別警報級の台風10号がもらたす被害が心配です。ご自宅が危険になる場合は、新型コロナ禍においても避難が原則です。スマホや充電器など通常の非常持ち出し袋に加えて、コロナ対策として持参してしたらよいもののまとめです。

アルコール(消毒用エタノール)

 災害時は、水が使えない場合あるので、消毒用エタノールが消毒用品としては使いやすいものになります。ただし、消毒用エタノールは、避難所で発生事例が多いノロウイルスには効果がありません。

マスク

 災害時は洗濯ができないので、使い捨てを持っていきます。(長期にわたる避難所生活となればコインランドリーが設置されるケースも増えています)。

石けん・ハンドソープ

 石けんやハンドソープは共有のものだと複数の人が触ることになるので、ご自身のものが持参できると安心です。石けんは家族分カットして、それぞれ、保存袋に入れます。ハンドソープも旅行用シャプーボトルなどに小分けして詰め替えて使います。

ウェットティッシュ・赤ちゃんのおしりふき

 お風呂に入れない時に皮膚についた汚れを拭き取るために使います。もともと災害時に必須のものです。アルコール入りもこの時期は、重宝されています。

室内履き

 これが最もポイントと言っていいかもしれません。床に新型コロナウイルスの飛沫が落ちていることも懸念されています。かといって、外履きのままだと、トイレの汚物を室内にも持ち込むことになってしまいます。裸足のままですと皮膚病の感染もあります。

ペーパータオル

 災害時は、タオルなどが洗濯できないので使い捨てのものが役立ちます。

使い捨て手袋

 災害時、停電や断水でトイレが流せなくなるかもしれません。その時、災害用トイレを使って、汚物を処理します。手洗いができない可能性があるので、使い捨て手袋が必要です。オムツ替えの時にも使います。

体温計

 新型コロナ禍での避難所・避難場所では、体温を測ってから入室するケースが多いです。そのため、受付が混雑しがちです。混雑するとそこが密になります。体温計を持参すると受付や体調管理がスムーズです。

ゴミ袋

撮影 あんどうりす
撮影 あんどうりす

 感染予防から、ゴミ袋は持参して、ゴミは持ち帰ります。ゴミ袋は水のうになるなど、様々な事態で役立ちますので、いろいろな大きさを準備しておきます。ゴミは、まとめて同じ袋に捨てるより、小分けするほうが衛生対策や匂い対策になります。写真のようなペット用汚物入れは、100円ショップでも販売されていますので、日頃から持ち歩くことをお勧めしています。

ハスの葉 撮影 あんどうりす
ハスの葉 撮影 あんどうりす

 ちなみにアウトドアでは自然界で入手しにくいものは、多めに持参するという方法を取ります。防水に近い機能を持つものは、ハスの葉っぱの撥水効果が有名ですが、レンコンの産地でなければ入手しにくいのです。ゴミ袋の他、ラップも災害時役立つのは、他のもので代替しにくい素材だからです。代替できないものは多めに持っておきます。ラップはガスバリア性が高く匂いが漏れにくいので、汚物処理にも役立ちます。

 飲料用だけでなく、水道が使えない場合、手洗いを確保するために持参できるとよいです。ただし、重たくなります。

携帯トイレ

撮影 あんどうりす 携帯トイレ
撮影 あんどうりす 携帯トイレ

 災害時、必須のもので、新型コロナ禍の時に特に重要になります。汚物からの感染が心配ですから、トイレの水が停電や断水で流れない場合は、必ず災害用のトイレを使います。携帯トイレとは、災害用トイレがコンパクトになっているものです。

 トイレが密になるからといって、外で用を足すのは感染症予防の観点からも厳禁です。

その他 マイ食器

 イラストにありませんが、食器の共有は避けたいのでマイ食器を持参します。エコではありませんが、感染症が蔓延している時期には使い捨てのものが安心です。

荷物を持っていなくても避難するほうがよい時もある

 持ち出したらいいものを書きましたが、ここからのほうが、最も重要な話になります。

引用 江戸川みんなの防災プロジェクト
引用 江戸川みんなの防災プロジェクト

 被災した際、多くの方が、避難を決断できずに逃げ遅れています。

 西日本豪雨の教訓は、様々な形で報道されています。これを忘れないでください。

 

岩崎さんは実感している。年を重ねるほど、納得しない限り逃げない傾向が強くなる。代々受け継いだ家を守りたいとの責任感。持病、足腰の衰え―。「レベル3」「大雨特別警報」と言われても、ぴんとこない人が多い。

 「ことしは新型コロナの感染が嫌で、動きたがらん人もおる。余計でもわしらの地域力が試される」と岩崎さん。「あのため池があふれそう」「そこの川が氾濫しかけとる」と、危機を見える形で伝えることが「高齢者への呼び掛けの鉄則」と力を込める。

 避難所までの移動手段も見える形にするといい。三原市木原地区の民生委員、福地康子さん(55)は、避難を促すときは「車で一緒に行きませんか」と具体的に示すよう心掛ける。

 避難を渋る高齢者の多くは足腰が衰えていたり、車を持っていなかったり。近所に住む72歳の女性もその1人だ。指定避難所までは歩いて30分以上かかる。「1人じゃ行けんけど、人様に迷惑は掛けたくない。それで迷うんです」と胸の内を明かす。

 女性は福地さんに何度も誘われるうち、「連れて行ってもらえるチャンスを逃しちゃいけん」と思うようになった。福地さんは「逃げろと言われても本人だけでは難しい。そこを分かって、地域ができる限り支えていけたら」とほほ笑む。

出典:中国新聞デジタル 豪雨避難、高齢者の心に響く声掛けとは 逃げ渋る心理はなぜ 西日本豪雨の教訓から学ぶ

 多くの人が災害時、避難情報が出されても避難しません。

引用 江戸川みんなの防災プロジェクト
引用 江戸川みんなの防災プロジェクト

 正常性バイアスといって、いつもどおりであってほしいという願望から、意思にバイアスがかかり、避難情報が出ていても、「まだもう少ししてから」、「まだ、ご近所は避難していないから」と避難しなくてもよい情報や考え方のみを選択するように、視野が狭まっていくのです。これは、山の道迷いでも、同じ現象が起こることが指摘されています。山で迷った際、下ると沢に出て、滝に遭遇してしまうと進むことも戻ることもできない状況に陥るので、「山で迷ったら下ってはいけない」のが鉄則です。しかし、「あそこに家が見えるから」、「明日は出勤だから」、「もう少しすれば事態は好転するかもしれない」と、ベテランでも迷って遭難するケースが知られています。早めに決断しないと、視野が狭くなっていき、判断ができなくなるかもしれません。

 危険な場所にいるのであれば、荷物を準備している場合ではありません。ためらわずに避難してください

引用 江戸川みんなの防災プロジェクト
引用 江戸川みんなの防災プロジェクト

 親戚宅やホテルに避難するのであれば、避難グッズは、なくても大丈夫な場合がほとんどです。早期に避難すれば避難先の選択肢が広がります。広域避難も検討できます。広域で検討すれば、台風でキャンセルがでているホテルや宿泊先がまだあるかもしれません。早めの避難であれば、避難先で必要なものを購入もできます。まわりに迷惑をかけてはいけないと避難グッズの荷造りを始めてしまったばっかりに、逃げ遅れてしまっては本末転倒です。

 台風は通過します。物流の回復も最近は早いです。支援物資も最近は、早く到着しています。まずは、避難グッズや持ち出し袋よりも、危険であれば、早めの避難をどうか忘れないでください。風速15m(時速54km)で歩けない風です。1時間に30mmの降水量は、バケツをひっくりかえしたような雨で、傘をさしても濡れますし、道路は川のようになっています。冠水すると足首の深さでも流れがあれば流されます。高潮は津波のように浸水し、高波は、沿岸の構造物を破壊する威力があります。そうなったら外に避難はできなくなります。危険な場所にいるのであれば、どうか状況が悪化するより前に、安全な場所への避難をお願いします。

アウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 

FM西東京防災番組パーソナリティ 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士課程 女性防災ネットワーク東京呼びかけ人 阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルをいかした日常にも役立つ防災テクを、2003年から発信。子育てバックは、そのまま防災バックに使えるなど赤ちゃん防災の先駆けとなるアイデアを提唱。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで講演が全国に広がる。企業広報誌、子育て雑誌などで防災記事を連載中。ゆるくて楽しい防災が好み。

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