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津波避難の注意点 橋にリスク 権利証は取りに戻らない

あんどうりすアウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 
(写真:イメージマート)

令和6年能登半島地震で震度7が観測され、大津波警報も出されました。

まだまだ地震の被害の全容もわからない状況ですが、そんな中でも津波からの避難は最優先事項になります。

過去の津波被害の教訓から、弁護士の永野海氏が作成した津波避難マスターというボードゲームやそれをまとめた「みんなの津波避難22のルール」(1)がわかりやすく、私も各地の防災講演でこのゲームを実施しています。

今回の地震で被災した方々はまだまだ不安な中にいらっしゃることと思いますし、人命救助を急がねばならない状況でもあるので、ゲームの内容というのは、不謹慎に思われるかもしれませんが、津波は繰り返しやってくる場合もあるので、避難のポイントがわかるものとしてここでお伝えします。

1 津波避難スイッチを入れる「SWITCH」

出典 気象庁 津波から命を守るために(2015)
出典 気象庁 津波から命を守るために(2015)

避難のスイッチ(switch)を入れるタイミングは3つあります。

大きな揺れがあった時
津波警報が出た時
揺れが小さくても1分以上の長い揺れがあった時

日本海側の津波到着時間は、5分以内など、発災から到着が早い想定になっているところが多くあります。津波警報を待っていたのでは、逃げ遅れる可能性があります。大きな揺れがあったら、警報を確認するより先に避難が必要になります。

2安全な場所へ(SAFE)

川に近づいたり、橋をわたるのは危険です。東日本大震災では北上川を津波は約50キロ上流に遡っています。

寒い時期はクルマで避難したくなり、現在はクルマ避難は、全否定されているわけではないですが、渋滞に巻き込まれ動けなくなった場所に津波が襲ったことが東日本大震災の教訓になっています。

高さのある商業施設に避難する場合、壁やガラスなどが落下する場合があります。

高さのあるマンションに避難する場合、オートロックで鍵が閉まっていて避難できない場合があります。

ブロック塀の横や古い建物は倒壊で通路を塞ぐ可能性があります。補強されていないブロック塀は震度5強で倒れる可能性があります。震度7では補強されているブロック塀も倒れることがあります。 屋根瓦も落下しやすいので、近くを通らない様にします(2)。

津波は、高い場合だけでなく、流れが速ければ、水圧は強くなるので、膝程度やそれ以下の高さでも身動きが取れなくなったり流されます。大津波ではないから大丈夫というわけではないことに注意してください。

安全な場所にとどまること(SAVE)

荷物を取りに戻ったり、荷物を準備して津波に巻き込まれることがあります。通帳や権利証、印鑑は、たとえ津波や火災で失っても権利を失うことは一切ありません(3)。

防寒着を取りに戻るのは危険です。これから津波が到達する地域の方は今のうちに防寒具を揃えておいてください。

万が一、津波や雨で濡れたら、濡れたままにならない様にしてください。濡れた服を着たままの方が、気化熱で体温を下げます。日本海溝・千歳海溝地震の想定では、津波による低体温のリスクの啓発(4) がされていますが、今回も寒い時期なので、津波による対体温症のリスクがあります。

東日本大震災の時、函館市に2m39cmの津波が到着したのは、最初に津波が到着してから8時間以上あとでした。安全な場所にとどまることが命を守るために重要です。

以上、過去の津波の教訓をまとめました。どうか皆様と皆様の大切な方がご無事でありますように。

参考文献

1 永野海 合同出版 みんなの津波避難22のルール

2 気象庁 震度階級表関連解説表

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html

3 岡本正 弘文堂『被災したあなたを助けるお金とくらしの話 増補版』(2021)Chapter5 家の権利証がなくなっても権利はなくならない

4  内閣府 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の解説ページ

https://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/kaisetsu/index3.html

アウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 

FM西東京防災番組パーソナリティ 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士課程 女性防災ネットワーク東京呼びかけ人 阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルをいかした日常にも役立つ防災テクを、2003年から発信。子育てバックは、そのまま防災バックに使えるなど赤ちゃん防災の先駆けとなるアイデアを提唱。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで講演が全国に広がる。企業広報誌、子育て雑誌などで防災記事を連載中。ゆるくて楽しい防災が好み。

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