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豪雨避難、高齢者の心に響く声掛けとは 逃げ渋る心理はなぜ 西日本豪雨の教訓から学ぶ

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中国新聞デジタル

 高齢者に避難を呼び掛けても、返ってくるのは「家におっちゃあいけんかね」という言葉―。逃げ渋るのは、避難先で人に迷惑を掛けたくなかったり、命に関わる大災害が起きていることに気付いていなかったりするからだ。ことしは新型コロナウイルスへの感染が不安で、避難所をより敬遠する可能性がある。西日本豪雨から2年、ためらわずに逃げてもらう方策を探った。 【図表】広島県が考えた避難を促す言葉  ■なぜ避難しない? 「足腰に不安、でも…助け借りづらい」  避難を呼び掛けても10人に2、3人から断られる。広島県坂町の民生委員で町内会長の下川博志さん(70)はどうしてなのか、疑問だった。しかし、昨年の自らの避難ではっとした。「高齢者がなかなか逃げないのは、体がつらいからではないか」  避難所で過ごした夜、下川さんはいすに掛けたまま寝るのが苦しくて、床に横になった。でも高齢者のほとんどはいすに座り続けた。下川さんは「高齢者は足が弱い。自力で床から起き上がれないから寝転がれなかったのかもしれん。他人の助けを借りるには遠慮があるんでしょう」と言う。避難所まで歩くのもしんどさの一つとみる。地元では80歳以上で車を運転する人はほぼおらず、移動手段も確保できない。  さらに「この家は何十年も安全だったという経験も避難のハードルになる」と話すのは、広島市安芸区の防災士、土取潔さん(81)。逃げるよう言っても「いやあ、大丈夫よ」と返されることが多い。  甘い認識は、県立広島大と三原市がことし3月にまとめた調査でも浮かび上がる。三原市内の西日本豪雨の被災区域に住む75歳以上の高齢者42人のうち38人が逃げなかった。理由として「過去の大雨に比べて怖くなかった」「今まで被害に遭ったことがないし大丈夫だと思った」など危機感の薄さが目立った。ほかにも「雨の中移動する方が危険」「避難勧告等の情報を受信していない」などが上がった。  ■危機、見える形で具体的に説明を 「川がああふれそう。準備しときんさい」  「江の川があふれそうな。逃げる準備をしときんさい」。その言葉が、西日本豪雨の時、三次市青河町に住む山口浪子さん(79)の背中を押した。迫る危険が思い浮かび、怖くなったからだ。安全な所にある寺へ急いで移った。  山口さんに避難を呼び掛けたのは、地域の自主防災会前会長の岩崎積さん(69)と、隣に住む新藤俊朗さん(73)。岩崎さんが電話し、新藤さんが訪問する連携プレーで、住み慣れた家を離れたくないとためらう山口さんの心を動かした。「漠然と『危ない』と言われても逃げんかったかもしれん」と山口さんは振り返る。  岩崎さんは実感している。年を重ねるほど、納得しない限り逃げない傾向が強くなる。代々受け継いだ家を守りたいとの責任感。持病、足腰の衰え―。「レベル3」「大雨特別警報」と言われても、ぴんとこない人が多い。  「ことしは新型コロナの感染が嫌で、動きたがらん人もおる。余計でもわしらの地域力が試される」と岩崎さん。「あのため池があふれそう」「そこの川が氾濫しかけとる」と、危機を見える形で伝えることが「高齢者への呼び掛けの鉄則」と力を込める。  避難所までの移動手段も見える形にするといい。三原市木原地区の民生委員、福地康子さん(55)は、避難を促すときは「車で一緒に行きませんか」と具体的に示すよう心掛ける。  避難を渋る高齢者の多くは足腰が衰えていたり、車を持っていなかったり。近所に住む72歳の女性もその1人だ。指定避難所までは歩いて30分以上かかる。「1人じゃ行けんけど、人様に迷惑は掛けたくない。それで迷うんです」と胸の内を明かす。  女性は福地さんに何度も誘われるうち、「連れて行ってもらえるチャンスを逃しちゃいけん」と思うようになった。福地さんは「逃げろと言われても本人だけでは難しい。そこを分かって、地域ができる限り支えていけたら」とほほ笑む。

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