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大学生に必要なのはキャンパスより意欲

前屋毅フリージャーナリスト
海士町で授業するBBT大学学生の吉實 香菜さん

島根県隠岐郡の海士町(あまちょう)といえば、離島でありながらも地方創生を成功させている例としてとりあげられることが多い。その海士町での活動で単位修得ができる大学がある。経営コンサルタントしても有名な大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)だ。

同校は、そもそもがオンラインでの講義を主体としている大学である。だから、日本全国どこでも講義は受けられるし、海外に居住しながら受講している学生もいる。

そのBBT大学が海士町を選んだのは、実践と理論を同時に学べる場になると期待したからである。「地方創生にも経営学の知識が必要です。また、それを成功させる場所にかかわりあうことで、課題を発見して解決し、実践していくというビジネス・経営そのものを肌身で感じることができます。生きた知識になるわけです」と、同校の講師で学部教務室の上野大樹氏は説明する。

具体的には、海士町の地域創生に貢献した地元の民間企業と組み、そこが関係している町でのさまざまな事業に、学生はインターンとしてかかわる。つまり、インターンシップだ。

ただのインターンシップと違うのは、オンライン講義なので、いま経験していることに関連する理論を同時に学べることだ。さらに大学としてはラーニングアドバイザーを置いて、学生からの相談にも丁寧に応えていく体制をとっている。ゼミの合宿や夏休みを利用しての体験であれば、それは体験で終わってしまいかねないが、講義と実践の同時進行は学生の血となり肉となっていく。しかも前述したように、単位として認められるのだから、学生にとっては有意義な時間の使い方となる。

とはいえ、このBBT大学の試みは始まったばかりで、これまで実際に体験した学生は2人でしかない。そのうちの1人、吉實香菜さんは、2月初めから末まで海士町で生活し、島で唯一の塾である学習センターで、インターンシップを行った。

「わたしは都会育ちなの、夜7時には商店の明かりも消えてしまうような島の暮らしは刺激的でした。そうした環境で育った高校生に、自分のキャリアを考えさせる授業をしたりして、若い人が地域のために何ができるか一緒に考えたりもしました。私自身のキャリアを考えていくうえでも貴重な経験でした」と、吉實さんは島での経験を振り返って語る。

BBT大学としては、さらに発展させていって、半年から1年という期間で講義と実践のなかで学生が学び、成長できるプログラムにしていく構想をすすめている。「海士町にBBT大学という大学がある」と全国に知られる日も遠くないかもしれない。

地方創生を成功させてきている海士町の実践例に触れることで、学生は大きな刺激を受けるはずだ。それが学ぶことへの意欲、卒業後に自分の知識と経験を社会のために役立てたいとおもう意欲につながっていくにちがいない。

もっと大学生が学問にも生き方にも前向きになるためには、キャンパスに押し込めておくのではなく、海士町のような刺激のある場所での実践こそが必要なのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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