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次の学習指導要領に求められるのは、総授業時数を「増やさない」ではなく「減らす」でしかない

前屋毅フリージャーナリスト
疲れた子どもたちをつくる学習指導要領はいらない(写真:イメージマート)

 次の学習指導要領の改訂を12月25日、阿部俊子文科相は中央教育審議会(中教審)に諮問した。そこでは総授業時数についても言及されているが、疑問しかない。

|「増やさない」と言いながら・・・・

 公立学校各学年の各教科等の指導に要すべき授業時数は、学習指導要領によって決められている。その全教科の合計時数が、年間の総授業時数になる。学習指導要領で教える内容が増えれば、当然ながら総授業時数も増えさなければいけないことになる。

 文科相は年間授業時数を「現在以上に増やさない」ことを前提にすることを中教審に示したという。次の学習指導要領で「現在以上に教える内容を増やさない」ことを求めたことになる。

 これを素直に喜ぶべきかどうか複雑なところだ。諮問では、現状で固定化されている学年ごとの学習内容に弾力を持たせて小2での学びを小3でもできるようにするほか、デジタル教育の充実なども盛り込まれている。つまり学習しなければならない内容は、増えそうな予感もするのだ。

 そのためなのか、現在は小学校で45分、中学校では50分の1コマの授業時間を、5分ほど短くする仕組みの検討も求めている。そうして浮いた時間を活用して個々の児童生徒に合った教育をしやすくする、のだそうだ。

 もしも新しい学習指導要領で学習すべき内容が増えれば、この浮いた時間を充てることになるのかもしれない。結果として、総授業時数は増えてしまうかもしれない。

 さらに現在の授業時間を5分短縮するとなると、小学校だと45分でやっていた学習内容を40分でやらなければならなくなる。指導する教員の負担は増え、授業を理解できない子も増えるのではないかと、すでに指摘されてもいる。40分で理解できる子と理解できない子を区分けするようなことにもなりかねない。

 そして、理解できなかった子は、授業時間を短縮したことで浮いた時間で指導することになるのだろうか。短縮したことでこぼれてしまった子を短縮して浮いた時間で指導する、ちょっと奇妙な図式にもなりかねない。

 そもそも、現状の学習指導要領でも教える内容が過剰になっていると問題視されている。そこに、新しく教えることが増え、1コマの授業時間も短くなれば、過剰な状況は加速するとしかおもえない。

 求められているのは、学習する内容を減らし、さらに時間をかけて丁寧に教えることではないだろうか。「総授業時数を現在以上に増やさない」というと前向きに聞こえなくもないが、「過剰な状況を変えない」と言っているにひとしい。「増やさない」ではなく、「減らす」という姿勢を、中教審の答申で示してほしい。

 

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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