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「ダブルエース」の危険性。南野拓実と久保建英の活躍をポジティブに捉えたい欲望の陰で。

森田泰史スポーツライター
南野と久保(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

「ダブルエース」という言葉が、流布していた。

日本代表は2014年のブラジル・ワールドカップに向けて、準備を進めていた。本田圭佑と香川真司。10年の南アフリカ大会でエースになった男と、マンチェスター・ユナイテッドというビッグクラブに移籍した選手のどちらが中心になるのかが注目されていた。

アルベルト・ザッケローニ当時監督は2人の共存を目指していた。だが、結果から言えば、それは失敗に終わった。そもそも、世界を相手にボールを握るという思考自体が無謀であり、無茶だった。ザックJAPANは1勝も挙げられずにグループステージ敗退の憂き目に遭った。

ヘタフェに移籍した久保
ヘタフェに移籍した久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

あれから7年余りが経過した。

いま、ダブルエースというネーミングに相応しい選手が、代表にいる。南野拓実と久保建英だ。メディアは流石に学んだのか、あるいは同様のアプローチに飽きてしまったのか、そういったタグ付けは行っていない。いや、学んだとは思えない。森保JAPAN発足時には南野、中島翔哉、堂安律が「新・ビッグ3」と持て囃された。

まず、何をもってして「BIG」なのかが分からない。その時、3選手が所属していたのはザルツブルク、ポルティモネンセ、フローニンヘンである。南野に関しても、まだチャンピオンズリーグでのプレーを経験する前だ。

これは一連の久保建英をめぐる報道にも当て嵌まる。ポジティブキャンペーンを張り続けた結果、久保がビジャレアルで失敗した過去は曖昧なものにされようとしている。それは非常に危険な兆候だ。日本サッカー界としても、社会としても、19歳の青年の挑戦に「失敗」が付き物であることを許容する機会を、我々は失ってしまった。

メディアで騒いだ後の処理は難しい。カウンターの刃は鋭い。現に、日本代表においては、その刃先は指揮官である森保一監督に向けられている。森保監督には「戦術がない」というレッテルが貼られ、打つ手、打つ手に非難の声があがる。

個人的には、久保のポジティブキャンペーンの「しっぺ返し」が、いつ、どこで来るのかを危惧している。それは、残念ながら、必ずやってくる。なぜかと問われれば、歴史は繰り返すからとしか言いようがない。

直近の試合のセビージャ戦で、久保は一枚目の交代カードで代えられた。ジェネ・ダコナムが退場して、ホセ・ボルダラス監督が戦術とシステムの変更を余儀なくされた側面はある。ただ、どう贔屓目に見ても、この試合の久保は良くなかった。詳細は後述するが、怖いのは、こういった状況でもまだ久保を庇う論調が蔓延っていることだ。

サウサンプトンに移籍した南野
サウサンプトンに移籍した南野写真:代表撮影/ロイター/アフロ

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■サウサンプトン南野

御託は、もういいだろう。今回は、奇しくも、今冬の移籍市場で移籍を決断した2人にフォーカスしながら「戦術論」を展開する。もちろん、"主役"は南野と久保である。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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