トルコがシリア北部をドローンで爆撃し、クルド民族主義勢力を狙う一方、トルコ占領地で大きな爆発
トルコ軍ドローンが北・東シリア自治局の内務治安局の拠点を爆撃
クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、トルコ軍の無人航空機(ドローン)が4月28日午前4時半頃、シリア北部のアレッポ県のアイン・アラブ市にある北・東シリア自治局の内務治安局(通称アサーイシュ)の拠点を爆撃し、車輌などが被害を受けた。
アイン・アラブはクルド語名でコバニ。2012年半ばにシリア政府が軍や治安部隊を撤退させ、代わってPYDが実効支配を開始、以降PYDが主導する自治政体の西クルディスタン移行期民政局(通称ロジャヴァ、2012年2月~2018年12月)や北・東シリア自治局(2018年12月~)の統治下に置かれた。
なお、2014年10月にはイスラーム国が同市を一時制圧したが、翌2015年1月にシリア民主軍(PYDが創設した人民防衛隊(YPG)を主体とする民兵)がこれを奪還している。
2019年10月にトルコが「平和の泉」侵攻作戦を開始し、北・東シリア自治局の支配下にあるラッカ県タッル・アブヤド市一帯やハサカ県ラアス・アイン市一帯に侵攻すると、ロシアが米国とともに仲介し、両者を停戦させた。
これにより、シリア民主軍は国境地帯から撤退し、これに代わってシリア軍が展開、ロシア・トルコ軍による合同パトロールが実施されることが決まった。またアイン・アラブ市をはじめとする都市には、シリア軍・治安部隊が展開、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下に置かれることになった。
トルコ占領地で大きな爆発、100人あまりが死傷
一方、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団、国営のシリア・アラブ通信、そしてANHAなどによると、アレッポ県北西部のアフリーン市の中心に位置するマフムーディーヤ地区(ラージュー街道)で、大きな爆発が発生した。
アフリーン市は、アイン・アラブ市と同様、2012年半ばにPYDの実効支配下に入り、同地一帯はロジャヴァによって統治されてきた。だが、2018年1~3月にトルコが「オリーブの枝」侵攻作戦によってこれを占領し、現在に至っている。
爆発が起きたのは、マフムーディーヤ地区の大衆市場にある国民軍(トルコの支援を受ける反体制派、Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)の本部前。タンクローリーに仕掛けられた爆弾が爆発し、シリア人権監視団によると、子供11人と戦闘員6人を含む46人が死亡、50人以上が負傷したという(シリア人権監視団は29日、死者がさらに増え、子供11人と戦闘員12人を含む52人となったと発表した)。
犯行を認める声明は出ていないが、トルコ国防省は「アフリーン市で爆弾が仕掛けられたタンクローリーが爆発し、民間人40人が死亡、47人以上が負傷した」としたうえで、「無垢の市民を狙った爆発の責任はYPGにある」と非難した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)