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大相撲九州場所担当の境川親方 地元の物産も楽しんで!妙義龍、佐田の海、平戸海らに伝える「精神」とは

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
話を伺った元小結・両国の境川親方。九州場所のポスターと(写真:すべて筆者撮影)

これまでの陽気が嘘のように、一気に気温が下がった昨日。まるで初日に合わせたかのような冬らしい気候のなか、大相撲九州場所がスタートした。館内は大盛況。中入り後には「満員御礼」の垂れ幕が下がった。

この日、九州場所担当部長の境川親方(元小結・両国)に話を伺った。自身も長崎県出身。年に一度の九州場所を運営するにあたる苦労や、同じく「ご当地力士」である部屋の佐田の海、平戸海ら弟子たちの様子などについてお話しいただいた。

地元を巻き込んで準備した九州場所

コロナ禍ではさまざまな規制があり「お客さんには申し訳ない気持ちがあった」と吐露する境川親方。だからこそ、通常開催に戻った今場所をさらに盛り上げるため、九州場所担当親方らと共にさまざまな工夫を考えてきた。

「数年前から始めたキッチンカーに加え、今場所は地元九州の物産展を新しく始めました。入口の外にあるので、どなたでも足を運んでいただけます。今年の6月頃から各県の観光協会と打ち合わせを重ね、せっかく大勢の方が足を運んでくれるので、喜んでもらえるようにと考えました」

今年から始まった地元の物産展
今年から始まった地元の物産展

外のキッチンカーは例年同様盛況で、今年は食べにくるお相撲さんたちの姿も見られた
外のキッチンカーは例年同様盛況で、今年は食べにくるお相撲さんたちの姿も見られた

九州場所ではお茶屋がないため、チケットは協会が独自にさばかなければならない苦労もあるが、今年の売れ行きは好調。「まだ空いている日もあるんですが、すでに昨年よりも多く売れています」と親方も笑顔で話す。

「特にいま、相撲が激しくて面白いでしょう。単にコロナ禍が明けただけじゃなく、土俵の見どころが多いこともお客さんにとってはうれしいだろうと思います」

境川親方が日頃弟子たちに語ること

親方が師匠を務める境川部屋には、熊本出身の佐田の海や、長崎出身の平戸海をはじめ、注目力士が多数在籍している。今場所の見どころは「貴景勝が二場所続けて優勝できるか。同時に、霧島と豊昇龍が少し慣れてきて今場所力を発揮できるか」だと親方は話すが、部屋の力士たちの調子はどうなのだろうか。

「妙義龍と佐田の海はもうベテランで、2人が部屋をけん引してくれているので、彼らは自分のペースに任せていますよ。平戸海は、場所前一日高安のところ(田子ノ浦部屋)に出稽古に行かせたのと、高安が一度うちにも来てくれて関取4人で申し合いをしました。宿舎が近いのでね。平戸海は真っ向勝負で、ベテラン勢が平戸海の若さをテクニックで制して。いい稽古ができていたと思いますよ」

初日の土俵では、地元出身の佐田の海、平戸海が土俵に上がると、たちまち大きな歓声が上がった。「場所前からたくさんの人に応援に来てもらっていましたから、頑張ってもらいたいですね」と境川親方は目を細める。

稽古場では厳しい親方だが、生活面などは「ほかの親方衆や関取衆が、私の目の届かないところまでフォローしてくれているので」と、周囲を信頼している。その根底にある親方の考え方はこうだ。

「いつも口癖でみんなに言うんです。お互いにライバル意識をもちながらも、『おかげさまとお互いさまの気持ちを忘れるな』って。その精神をいつも忘れないでいたいですよね」

境川部屋の力士たちは、皆とても実直でカッコいい。その理由はきっと、“漢”・境川のこの精神が弟子たちの心に宿っているからなのだろう。そんな親方が指揮を執って始まった九州場所。最後にこう呼びかけた。

「審判の親方衆が大変なくらい、土俵際まで際どい迫力ある相撲が増えてきています。ぜひ、多くの人に足を運んでいただき、生の迫力を味わってもらいたいです」

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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