レアル・マドリーとクルトゥワが急接近。「ポスト・カシージャス時代」の憂鬱。
この夏、新たな守護神がレアル・マドリーに到着することになるのだろうか。
マドリーは2015年夏にイケル・カシージャスが退団してから、GK補強を検討してきた。いや、その数年前から守護神をめぐる論争は始まっていたと言った方が正しい。
事の発端は、ジョゼ・モウリーニョ監督とカシージャスの確執である。モウリーニョ監督は、主将として、絶対的守護神として君臨していたカシージャスをベンチに追いやった。
2012-13シーズン、マドリーとバルセロナの関係は緊張状態にあった。覇権を握っていたのはバルセロナで、モウリーニョ監督には焦りがあった。一方で、その関係性をスペイン代表に持ち込みたくなかったカシージャスは、シャビ・エルナンデスやカルレス・プジョールに電話を掛け、状況の改善を求めた。これが指揮官の癇に障った。
またモウリーニョ監督は当時、チーム内の情報が頻繁にメディアに漏れている事実に不満を抱いていた。メディアの情報源がカシージャスではないかという疑念に駆られ、指揮官は権力を誇示するため、カシージャスに「スタメン外」という罰を下したのである。
そして、2013年1月にカシージャスが負傷で2カ月の戦線離脱を余儀なくされると、モウリーニョ監督はディエゴ・ロペス獲得に踏み切った。
■デ・ヘア騒動
ただ、カルロ・アンチェロッティ監督が就任してからも、カシージャスを取り巻く環境は変わらなかった。アンチェロッティ監督はリーガエスパニョーラでD・ロペスを、コパ・デル・レイとチャンピオンズリーグでカシージャスを起用。GKにローテーションを採用するという苦肉の策を講じた。
マドリーのGKをめぐる議論は終わらなかった。その次に来たのが、「デ・ヘア騒動」である。
2015年の夏の移籍市場。マドリーはダビド・デ・ヘア獲得に動いていた。だがマンチェスター・ユナイテッドが放出を拒み交渉は難航した。
最終的に、マドリーは移籍金3500万ユーロ(約45億円)に加えてケイロール・ナバスを譲渡するという条件を提示し、ようやくユナイテッドと合意に達した。しかしながら、金銭面の折り合いを付けるだけでなく、ナバスにトレードを納得させなければならない状況となり、予想以上に時間をとられた。
デ・ヘア、ナバス、ユナイテッド、マドリーの4者の了承を得られたのは移籍市場の最終日にあたる8月31日の午後11時30分だったという。残り30分で正式書類のファックスが間に合うはずもなく、マドリーの計画は頓挫した。
■ついに新たなGKが
デ・ヘア獲得に失敗したマドリーで、正GKに指名されたのはナバスだった。ジネディーヌ・ジダン前監督から厚く信頼され、チャンピオンズリーグ3連覇に貢献したナバスだが、フロレンティーノ・ペレス会長はトップレベルの守護神補強を諦めてはいない。
そこで、目を付けたのがティボ・クルトゥワだ。クルトゥワはロシア・ワールドカップで最優秀GKに選ばれた。マドリーは2010年南アフリカ大会後にメスト・エジルとサミ・ケディラを、2014年ブラジル大会後にハメス・ロドリゲスとナバスを引き入れており、過去にW杯で輝きを放った選手を獲得してきた。
クルトゥワは2011年から2014年までアトレティコ・マドリーでプレーした。マドリッドの街を知っており、言葉の障壁もない。適応に問題はないだろう。
クルトゥワとチェルシーの契約は2019年までとなっている。半年後には、契約期間が残り6カ月となり、他クラブと自由に交渉することが可能になる。またチェルシーとしては、この夏がクルトゥワの売り時だ。マドリーという資金潤沢なクラブからの関心が強まっている以上、ここでクルトゥワを売らず、加えて契約延長で合意できなければ、来年の夏にフリーで彼を手放すことになるからだ。
移籍金は3500万ユーロ(約45億円)前後になるようだ。マドリーは先にクリスティアーノ・ロナウドをおよそ1億ユーロ(約130億円)でユヴェントスに売却している。資金は十分にあるはずである。
「ポスト・カシージャス」時代の憂鬱を晴らすために、クルトゥワを確保する。ペレス会長の念願が、果たされようとしているのかもしれない。