ジェイムズウェッブが「最遠の銀河の謎」を解明!単体ではなく複数の銀河の衝突現場だった!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「JWSTが最遠の銀河の正体を解明」というテーマで動画をお送りしていきます。
去年2021年12月25日には、あのハッブル宇宙望遠鏡の後継機と期待される「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の打ち上げが成功しました。
ハッブル宇宙望遠鏡は高度約570kmを周回し、そこから宇宙を観測していたのに対し、JWSTは太陽-地球系の「ラグランジュ点2(L2)」というところから観測を行います。
ここは地球から150万kmほど離れた場所です。
そこで様々な調節を済ませ、今年7月から本格的な科学観測を始めることに成功しています。
それ以来数々の新発見をもたらしていますが、今回もJWSTでしか見れない最遠の宇宙でもたらされた新たな発見を紹介します。
●初期宇宙の銀河「MACS0647-JD」
2012年、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡の観測により、「MACS0647-JD」という超遠方にある銀河が発見されました。
名前が長いので、以下この天体を「今回の銀河」と呼ばせていただきます。
「今回の銀河」のように非常に遠くにある天体ほど、宇宙の膨張に伴い地球から速い速度で遠ざかっています。
遠ざかっている天体から放たれた光は波長が伸び、赤みがかって見えます。
これは赤方偏移と呼ばれる現象です。
赤方偏移は、天体の地球からの距離が遠いほど顕著です。
そのため赤方偏移の度合いを測定すれば、その天体の地球からの距離が計算できます。
「今回の銀河」の赤方偏移の度合いから、地球からの現在の距離は約319億光年彼方にあり、さらに今から約134億年前の光を観測していることが判明しました。
これは宇宙誕生からわずか4億年後の姿を見ていることになります。
今でこそJWSTによって新たに最遠の銀河候補が続々検出されていますが、「今回の銀河」が発見された当初は観測史上最も遠い天体として知られていました。
●重力レンズ効果
これほど遠方にある天体からやってくる光は、あまりに微弱過ぎて観測できません。
ですが「今回の銀河」がある方向にはMACS J0647+7015と呼ばれる銀河団が存在し、その強大な重力によって「重力レンズ効果」が発生しています。
重力レンズ効果とは、特に質量が大きい天体の周囲の空間が強大な重力によって歪められている影響で、その天体の背後にある天体から地球にやってきた光の進路が歪められ、背後の天体が歪んだり明るく見えたりする現象です。
重力レンズ効果が起こると、本来地球に届かなかった光まで進路が歪められて地球に届くようになるので、本来よりも多くの光が届き、背後の光源の天体はより明るく見えます。
この増光の効果で、遠方の「今回の銀河」が観測されました。
さらに重力レンズ効果により、「今回の銀河」の姿はなんと3か所に見えています。
これら3つの光は全て、銀河団の背後にある「今回の銀河」からやってきた光です。
●わかったことと残された謎
ハッブルの観測で、「今回の銀河」の直径はたったの600光年ほどしかないことがわかりました。
天の川銀河の直径が10万光年以上あるので、かなり小さな銀河であることが分かります。
そして「今回の銀河」の質量は太陽の1億~10億倍です。
これは天の川銀河の質量の0.1~1%に過ぎません。
一方、当時は分光を使ったより詳細な赤方偏移の計測を行っていなかったため、距離の測定に不確かさが残っていました。
JWSTには距離測定を含めた詳細を解明できる能力があるので、「今回の銀河」がJWSTの主要な観測対象として選ばれていた、という背景があります。
●JWSTによる最新の観測結果
そんな中2022年10月末に、「今回の銀河」の最新画像と暫定的な研究結果が発表され、話題を呼んでいます。
この画像はJWSTが赤外線で撮影した銀河団MACS J0647+7015と、今回の銀河の3つの姿の拡大図です。
ハッブルとスピッツァーによる画像と、JWSTの画像を比較した動画を見ると顕著ですが、「今回の銀河」はこれまで単体の銀河だと考えられていたのが、最新のJWSTの画像ではなんと2つの銀河で構成されていると判明しました。
これまでは2つの銀河をまとめて直径約600光年と推定していましたが、JWSTの最新の観測により2つの銀河のうち大きい方の直径が約460光年、小さい方が約130光年であると判明しました。
これらは約1300光年離れています。
そして大きい方と小さい方の銀河は、異なる色で映っています。
大きい方の銀河では速いペースで星の形成が行われており、若く青白い星が多く存在していると考えられています。
一方、小さい方の銀河には赤っぽく輝く老いた星や塵が多く存在していると考えられています。
このように2つの天体の特性が全く異なることから、研究チームによると、これは初期宇宙における「銀河同士の合体」を目撃している可能性があるそうです。
そしてさらに、これらの2つの天体から約1万光年離れた場所に、別の天体が新たに発見されました。
この第3の天体は将来、2つの天体と合体する可能性があるのではないかと考えられています。
天の川銀河のような巨大な銀河は、初期に形成された「今回の銀河」のようなより小さな銀河がたくさん衝突を繰り返し、徐々に成長して形成されていったと考えられています。
銀河という天体は、宇宙の主要な構成単位です。
JWSTの観測で判明したような初期で起きた銀河衝突を調べることで、銀河の歴史、さらには宇宙の歴史までのより深い理解に繋がるでしょう。
2023年1月にJWSTを「今回の銀河」が存在する銀河団の方向に向ける計画があるらしいので、その際により詳細な「今回の銀河」の特性、さらには宇宙の歴史の理解が得られることに期待しましょう。