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37歳。京都大学卒。元キャリア官僚。「頭がいい」と持ち上げられたくない~おみおじリポート(160)~

大宮冬洋フリーライター
神奈川県在住。外資系企業勤務。笑いのある家庭を希望しています。(本人提供)

能ある鷹は爪を隠す? 「強み」も「弱み」もある程度は開示しないと婚活は始まりません

※2023年9月22日追記。西村さんは半年間の受けオネット期間を終了し、自動退会日を迎えました。残念ながら結婚につながるような出会いはオネットではご紹介できませんでしたが、彼女の幸せを祈りつつ見送りたいと思います。

 こんにちは。大宮です。自分の周囲にいる独身男女の婚活を前のめりで支援する「お見合いおじさん活動(略称:おみおじ)」を婚活パーソナルトレーナーのマチコ先生と一緒に推進しています。僕の読者(この記事を読んでいるあなたも該当します)で「そろそろ結婚したい」という人をオネット(大宮ネットワーク)にお迎えし、良縁を結ぶことをお手伝い中です。本連載ではその活動の一端をレポートしています。オネット会員の種類(受けor攻め)と募集についてはこちらをご覧ください。

 能ある鷹は爪を隠すと言いますが、婚活においては「強み」も「弱み」もある程度は最初から開示したほうが良いと思っています。自慢したり卑屈になったりするのではありません。自分の個性や特徴を伝えないと、誰の心にも引っかからないという意味です。個性のない人などはこの世に存在しませんが、同じコミュニティの人と長い時間をかけて知り合う場合にしかそれは伝わりません。見知らぬ他人に興味と安心感を持ってもらうことが婚活のスタートなので、そのへんは割り切ってほしいと思っています。

<結婚歴はあり(バツイチ)。子どもは希望していましたが、結果的にいません。学歴は大学院卒。大学好きで今も大学に通っています。働いていた期間と大学にいる期間がほぼ同じくらいあります…>

 こんなプロフィール文を僕宛に送って来たのは神奈川県在住の西村奈緒子さん(仮名、37歳)。はっきり言って謎だらけで、「今は働いていないの?」という不安も感じさせます。聞けば、京都大学に学部から在籍し、博士課程を満期退学して中央省庁にキャリア官僚として就職。昨年離婚して、現在は外資系のソフトウェア企業で技術営業職を務めているそうです。

 年収はすでに800万円弱。あり余る知的好奇心と向上心を東京郊外にある理系の大学院に通ってぶつけています。博士号が取れたら、最先端の法人向けIT製品を売る側から作る側に移りたい、とのこと。あのー、西村さん。とても面白い特徴です!

ものづくり系、日本酒、画集や小説など幅広く読むという西村さん。何にでも興味を持てる性格なのだそうです。(本人提供)
ものづくり系、日本酒、画集や小説など幅広く読むという西村さん。何にでも興味を持てる性格なのだそうです。(本人提供)

「自分を深く知ってほしい、喜ばそうと思ってほしい」という欲求があります

「そうでしょうか? 私は、結婚相手の学歴や年収、年齢にはこだわりはありません。私の経歴だけを見て『すごい』とか『頭がいい』とか持ち上げられるのはあまり好きではなくて、『面白い生き物だな』ぐらいに興味を持ってくれる方が希望です」

 うーん。高学歴で高収入の女性から同じようなことを言われることがあります。婚活している途中で嫌な経験をしたのでしょう。勝手に負けた気になって卑屈になる男性は少なくないからです。

 西村さんは「学歴や年収、年齢」といったわかりやすい条件よりも高尚なものを求めています。「自分のことを深く知ってほしい、喜ばそうと思ってほしい」と「弱みを見せ合って、損得勘定抜きで一緒に暮らせるような結婚をしたい」の2点です。それには前の結婚生活とマッチングアプリでの出会いが影響しています。

 西村さんの前夫は中央省庁時代の同期です。結婚当初、パワハラ気味の上司にあたってしまった西村さん。転職するかも含めて思い悩んでいたそうです。

「前夫は我慢して聞いてくれたものの、『自分は転職をしたことがないのでわからない』というスタンス。それを寂しく感じていました」

 しばらくすると彼のほうが仕事で悩みを抱えるようになり、今度は西村さんが十分に聞いてあげていないことに彼が不満を持つようになったそうです。険悪な関係になるぐらいならばと思って別れた2人。お互いに忙し過ぎ、相手に癒しを求め過ぎたのだと思います。過労は家庭生活も壊してしまうのですね……。

職場の同僚とのアジ釣の成果。「慣れていないので6匹のアジをさばくのは大変でした。懲りずに3月はメバルに挑戦しようと思っています」(本人提供)
職場の同僚とのアジ釣の成果。「慣れていないので6匹のアジをさばくのは大変でした。懲りずに3月はメバルに挑戦しようと思っています」(本人提供)

「こうじゃない人」ではなく「こういう人がいい」とプラス面から相手を探す

 マッチングアプリでの出会いのほうはどうでしょうか。属性や条件だけで選び合うことに抵抗があるという西村さんは、心理テストによって性格が合いそうな人を紹介してくれるアプリを活用。そこで、都市景観や工場夜景が好きだという男性と知り合うことができました。

「でも、その方は結婚に対してクールな価値観を持っていて、お互いに自立してビジネスライクな関係でありたいようでした。私は自立していると思われがちですが、恋愛や結婚ではそこまでクールではありません」

 ここまで西村さんの話を黙って聞いていたマチコ先生が口を開きました。西村さんのようなケースを「じゃない系」と呼んでいるそうです。

「直近の相手との関係性は苦い記憶として残りやすいので、『ああいうのじゃない人がいい』と否定から入ってしまいがち。でも、『こういう人がいい』とプラスの面から相手を探すのが婚活の王道です」

 ただし、最初から「私のことを深く知って喜ばそう」と思ってくれる人などはいません。もしそんな人がいたら、結婚詐欺を疑うべきでしょう。最初はお互いに興味を少しだけ持ち、連絡を取り合い、何度も会ううちに親近感が深まっていくものです。本当の信頼や愛情は結婚して共同生活を営むようになってから醸成されるのだとも思います。西村さんがまずやるべきことは、見知らぬ相手に興味を持ってもらい、そして自分も興味を持つことです。

前の職場の同期と登った会津磐梯山の風景。「彼女とは10年来の付き合いで婚活を励まし合う仲です」(本人提供)
前の職場の同期と登った会津磐梯山の風景。「彼女とは10年来の付き合いで婚活を励まし合う仲です」(本人提供)

「他の学問もより深く理解できるからお得」という理由で哲学を専攻

 西村さんの最大の個性は、「考えることが好き」な性質だと僕は思います。京都大学時代は「他の学問もより深く理解できるからお得」という理由で哲学を専攻。そんな理由で専攻を決めるなんて、どん欲なまでの知的好奇心ですね!

現在の仕事では、顧客企業の課題を聞き出して、どんな提案をすれば興味を持ってもらえるのかを日々考えているという西村さん。自社製品であるソフトウェアのロジックも複雑なので、少しずつ理解を深めているそうです。

「直感や命令で動くのではなく、様々な知識や技術を自分の中にしみこませて納得したうえで働きたいと思っています」

 趣味は登山で、足の骨を折る大怪我をしても、回復直後からまた登っているそうです。恐れ知らずの人だな……。自宅にいるときは大学院の勉強をするか読書をしているとのこと。

「お笑い芸人が好きなのでTBSラジオ『JUNK』をradikoで聴きながら散歩を楽しんだりもしています。また一緒に住める人ができたら、笑いの多い家庭を作りたいな。子どもを授かることができたら『あなたの子ども時代もこんな風だったの?』とか笑い合いながら一緒に子育てができるといいなと思っています」

 ようやく西村さんの知的で可愛らしい「顔」が見えてきた気がします。そして、僕は1組のオネット内カップルを思い出しました。関西地方で大学教員をしている飯田晴香さん(仮名、40歳)と、東京の金属加工会社で働いている高木裕二さん(仮名、46歳)です。

 この2人は受けオネットの活動終了後に真剣交際を始め、そろそろ1年が経ちます。はっきり言って学力的な偏差値は30ぐらい違いそうなカップルです。ちょっとバカっぽいほど明るい高木さんは穏やかで優しい人で、晴香さんをとても大事にしています。晴香さんにもそれが伝わるのでしょう。会うたびに美しく朗らかな女性になっているのです。

 この記事を読んでお見合い申し込みをしてくれる男性がいるとしたら、西村さんの経歴というよりも「考えることが好き」で挑戦好きな性質に興味を持ったに違いありません。今までの恋愛・結婚経験は脇に置いて、安心してフラットな気持ちで出会ってみてほしいと思います。

「友人に誘われて行った日本酒会でのごきげんな写真です。死後、さばきにあう気がします…」。西村さんは陽気なメガネ女子です。(本人提供)
「友人に誘われて行った日本酒会でのごきげんな写真です。死後、さばきにあう気がします…」。西村さんは陽気なメガネ女子です。(本人提供)

※文中の受けオネット会員は仮名です。西村さんの詳細プロフィールやマチコ先生と大宮による超実践的婚活アドバイス(ヤフーの有料記事です)を読みたい方(=攻めオネット会員になりたい方)はこちらをご覧ください。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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