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株価は爆上げ 「iPhone 14」実は売れている?

山口健太ITジャーナリスト
iPhone 14(アップルのWebサイトより、筆者撮影)

10月28日(米国時間)、決算発表を受けたアップルの株価が7.6%も上昇したことが注目されています。「iPhone 14」には不評の声もありましたが、実は売れているのでしょうか。決算資料やカンファレンスコールから現状を分析します。

iPhone 14、なぜ不評?

2022年モデルのiPhone 14は、近年のiPhoneとしては珍しく、不評の声が目立っています。同時に出た上位モデル「iPhone 14 Pro」シリーズの高評価とは対照的です。

スマホに対する不評の声として、発売後の不具合などもありますが、そういった理由ではありません。ざっくり言えば、「iPhone 13から大きく変わっていないから」というものです。

iPhoneのプロセッサーは毎年最新のチップが採用されてきました。しかしiPhone 14では、iPhone 13 Proシリーズと同じ「A15 Bionic」にとどまっています。

画面上部の「ダイナミックアイランド」や画面の常時表示など、ぱっと見て分かる新機能も、iPhone 14には搭載されていません。

iPhone 14(左)とiPhone 14 Pro(右)(筆者撮影)
iPhone 14(左)とiPhone 14 Pro(右)(筆者撮影)

さらに、円安の影響で日本では価格が上がっていることも、ユーザーの心理に大きな影響を与えているように思われます。

一方、高評価のiPhone 14 Proシリーズは発売直後から品薄が続いています。決算発表後のカンファレンスコールでは、現在も供給が限られていることをCEOのティム・クック氏は認めています。

10月末時点でのアップルストアの出荷予定は、iPhone 14の「1〜2日」に対して、iPhone 14 Proは「3〜4週間」。一部業者の買取価格はアップルの直販価格を上回る状態が続いています。

iPhone 14 Proは3〜4週間待ちとなっている(Apple Storeアプリより)
iPhone 14 Proは3〜4週間待ちとなっている(Apple Storeアプリより)

もちろん、こうした傾向は最初だけという見方もあります。発売直後に買い替える人は新機能やスペックを重視してiPhone 14 Proシリーズを選び、その後に続く人はiPhone 14を選ぶという見立てです。

国内の売上ランキングでは、発売直後はiPhone 14 Proのほうが上位に入る傾向にありましたが、これから徐々にiPhone 14の順位が上がってくると予想できます。

「iPhone全体」の売上は増加

アップルが発表した2022年7-9月期決算では、iPhoneの売上は前年同期比で9.7%増となりました。市場予想は下回ったものの、まずまずの結果という印象です。

ドル高などを背景に大手テック企業の決算は厳しい内容となり、株価が軒並み落ち込む中で、アップルは一人勝ちの様相を呈しています。

決算の数字を見る上で注意したいのは、人気の良し悪しだけでなく、製品の発売タイミングや供給状況にも大きく左右されるという点です。

たとえばMacの売上は、7-9月期に前年比25.4%の大幅増となりました。これは7月に発売された「M2」搭載のMacBook Airなど、新モデルの影響があります。

さらに、CFOのルカ・マエストリ氏は生産体制が改善されたことも要因として挙げています。上海の工場でのロックダウンが終わり、7月ごろから一気に在庫が入ってきたわけです。

一方、iPadの売上は前年比で-13.1%と減少しています。ティム・クック氏はその理由として、2021年は9月に新モデルを発売したのに対し、2022年の新モデルは10月発売となり、7-9月期の決算に含まれていないことを挙げています。

それではiPhone 14はどうかというと、9月16日の発売から期末日(9月24日)まで約1週間分の売上が含まれています。2021年のiPhone 13はこれが2日分でした。

一方、昨年は4つのモデルが同時に発売されたのに対し、新たに加わった「iPhone 14 Plus」は10月発売なので数字に含まれていません。

また、iPhone 14 Proについてはアップルが供給不足を認めているように、多くの人が買いたくても買えなかった可能性があります。

こうした状況下でもiPhone全体の売上は増加しており、かなり健闘している印象はあります。ただ、その中でiPhone 14が売れたのかどうかは何とも言えません。

海外ではiPhone 14の売上不振や増産計画の中止といったニュースが報じられていることから、iPhone 13やiPhone SEが7-9月期の売上増加を支えた可能性もあります。

「USB-C待ち」は増えるか

iPhoneの買い替えを考えるユーザーにとって、悩ましいのが「USB-C」の話題です。欧州では2024年末までにスマホなどの電子機器にUSB-Cの搭載が義務化されることになりました。

アップル幹部はこの方針に従う意向を示しており、いまLightningを採用しているiPhoneやAirPods、キーボードやマウス製品が、どこかのタイミングでUSB-Cに移行する可能性があります。

「次のiPhoneがUSB-Cになる」と明言したわけではないことには注意が必要ですが、いまからLightningのモデルを買うのは避けたいと考える人が増えれば、iPhone 14にとって新たな逆風になりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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