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1泊2日のひとり旅は忙しない! ソロ温泉は「連泊」がベストである切実な理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

日帰りや1泊2日の温泉旅はせわしない。温泉の前後にちょっとした観光などをすれば、1泊2日でもあっという間に時間が過ぎてしまう。

宿でゆっくりする時間も意外と少ない。たいていの宿は15時チェックイン、翌10時チェックアウトがデフォルトである。15時ぴったりに宿に着いたとしても、18時頃には夕食の時間が待っている。チェックイン後にひと休みして温泉に入ったら、3時間はあっという間である。

夕食を食べ終わったら19時過ぎ。それからひと休みして温泉に入ったら、21時頃。たらふく旅館の料理を食べ、なおかつ入浴で体が温まっているので、まもなく睡魔がおそってくる。いつもより早く就寝することになるのは避けがたい。

翌日、目が覚めて朝風呂に入ったら、まもなく朝食の時間である。チェックアウトの10時までは1~2時間。もう一度温泉に入ったら、タイムアップだ。1泊2日の旅程だと慌ただしく、暇をもて余すような時間などもない。

誰かといっしょの旅なら予定を詰め込む旅も楽しい。だが、ひとりでの温泉旅(ソロ温泉)になると話は変わってくる。

ひとり旅の目的はさまざまだが、筆者が提唱する「ソロ温泉」の目的は、忙しない日常から解放され、温泉で心身をリフレッシュすることである。1泊2日の旅でも気分転換にはなるかもしれないが、本当の意味で疲れた心身を回復させるには時間が足りない。

そこで、おすすめしたいのが「連泊」である。筆者もソロ温泉に出かけるときは、たいてい連泊である(近場の温泉宿をハシゴすることもある)。

2泊3日以上のスケジュールで旅をすれば、まるまる温泉宿に滞在できる「中日」が生まれる。初日と最終日がそれなりに忙しないのは変わらないが、その間の「中日」は丸一日、温泉宿でくつろぐことができる。朝食をとった後も、浴衣姿で時間を過ごせるのは至上の幸せである。

しかも、温泉に入り放題だ。昼間は他の宿泊客も少ないので、温泉はほぼ貸切状態。自分のタイミングで、何度入ってもいい。眠くなったら昼寝するのも自由だ。日常では体験できない「空白の時間」を得ることができる。

「連泊したら時間をもて余すのでは……」と心配する人もいるかもしれない。だが、そもそもソロ温泉の魅力は「入浴以外、何もしないことを愉しむ」ことである。とことん暇をもて余していいのだ。1、2日であれば、案外あっという間に時間が経つものである。あまり心配しなくていい。それよりも連泊によって得られる充実感のほうが大きいはずだ。

一方で、連泊をすればその分、宿泊費や飲食代が高くなるのが現実である。そこで、おすすめしたいのが、ひとり旅でもリーズナブルに滞在しやすい宿が多い温泉地である。

具体的にいえば、1泊2食付きの旅館だけでなく、素泊まりの宿や民宿、ビジネスホテル、ゲストハウスなど宿の選択肢が豊富な場所だ。

素泊まりで宿代を抑えて、食事はスーパーやコンビニ、飲食店などで安価にすませることも可能だ。まさに「暮らすように旅する」感覚である。

たとえば、大分県の別府温泉郷。「温泉のテーマパーク」ともいえるほど多彩な入浴施設がそろう別府は、町全体が温泉街。ホテル、旅館、湯治宿など宿泊施設は400軒ほどにのぼる。飲食店やショップも充実しているため、素泊まりでの連泊でも問題ない。温泉のついていない安宿もあるが、別府の街の至るところに共同浴場があるので、入浴には困らない。むしろ湯めぐりができて楽しいだろう。

日本を代表する人気温泉地、群馬県の草津温泉も連泊には向いている。温泉地として「泉質主義宣言」をしているように、源泉の質には絶対的な自信をもっており、ほとんどの施設が源泉かけ流しである。ひとりで静かな時間を過ごすには少々にぎやかだが、宿泊施設のバリエーションも日本有数なので、ひとり旅でも自分の予算やニーズに合った宿を見つけやすいだろう。

温泉旅の大きな目的は、心身の疲れを癒やすことである。連泊でゆっくり時間を過ごすことで、温泉効果を最大限得られるはずだ。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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