新鮮なカキならノロウイルスに感染しないは間違い 流行前に気をつけることは?
冬になり、これから感染性胃腸炎の流行期を迎えます。
この時期の感染性胃腸炎の原因はノロウイルスが多くを占めます。ノロウイルスに感染しないように、流行前に気をつけるべきことを復習しておきましょう。
ノロウイルス感染症とは?
まずはノロウイルス感染症の大事なポイントをおさらいしましょう。
冬に流行する
生ガキなどの二枚貝から感染しやすい
おなかを壊す原因になる
人から人にうつりやすい
それでは一つずつ見ていきましょう。
ノロウイルス感染症は冬に流行する
こちらは国立感染症研究所の感染性胃腸炎の定点報告数です。
例年11月頃から流行が始まり、2月頃まで続きます。
過去10年の傾向からは今後4-5週で流行のピークを迎えることが予想されます。
ノロウイルス感染症は生ガキなどの二枚貝から感染しやすい
ノロウイルスに感染する原因の一つは食中毒です。
ノロウイルスに汚染された海水を二枚貝が内臓に取り込み濃縮し溜め込みます。これをヒトが食べることでノロウイルスに感染します。なお、海水がノロウイルスで汚染する原因はヒトから排出されるためであり、ヒトと二枚貝との間をサイクルしているわけです。
冬の時期の食中毒の6割以上がノロウイルスによるものとされます。
またノロウイルスによる食中毒の6割以上が11月〜2月の時期に集中しています。
冬と言えばノロ、ノロと言えば冬です。
ノロウイルスに感染しないために大事なのはしっかりと加熱することです。国際連合食糧農業機関と世界保健機関(要するに偉い人達)が定めた「ノロウイルスによる食中毒発生(途中省略)ガイドライン」では、二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要とされています。
特にこの時期にカキを食べる場合はカキフライなどしっかりと火が通ったものを食べるようにしましょう。
確かに生ガキが美味しいのは私も分かります。私も生ガキ大好きです。しかし・・・私も生ガキにあたったことがありますが、ノロウイルス感染症はめちゃ辛いです。ベネフィット(食べたら美味しい☆)とリスク(ノロウイルスに罹ったらめちゃ辛い、しかも周りにうつしちゃうかも・・・)とを天秤にかけて慎重に判断しましょう。
ちなみに衝撃の事実をお伝えいたしますが、カキが新鮮であることと、ノロウイルスに感染するリスクとは関係がありません。
もう一度言います・・・カキが新鮮であることと、ノロウイルスに感染するリスクとは関係がありませんッ!!
新鮮でも感染するときはします。
もし「新鮮だから大丈夫だバーローッ!」とおっしゃっている方が周囲にいらっしゃればお伝えください。
さらに言うと「生食用カキ」と書かれていてもノロウイルスに罹患することはあります。「生食用」かどうかの基準には細菌のものしかなく、ウイルスの基準はないためこのようなことが起こりえます。
実際に過去の国内の調査では生食用カキの5~9%でノロウイルスが検出されています(野田ら. 食衛誌 Vol. 58, No. 1)。
生食用でも感染するときはします。
もし「生食用なんだから大丈夫だバーローッ!」とおっしゃっている方が周囲にいらっしゃればお伝えください。
たとえ新鮮であっても生食用であっても生ガキを食べればノロウイルスに感染する可能性があります。
ノロウイルスはおなかを壊す原因になる
ノロウイルスは胃腸炎を起こします。
感染後24〜48時間に突然吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出現します。他の感染性胃腸炎と比べて吐き気・嘔吐の症状が強いのが特徴で、およそ半数の人で熱も出ます。症状は通常2、3日続きます。
ノロウイルスの診断は主に周囲の流行状況や症状に基づいて行います。3歳未満、65歳以上の方では保険診療としてノロウイルスの検査キットというものがありますが、これも前回のインフルエンザ迅速診断キットの話と同様、陽性と出なかったからといってノロウイルス感染症ではないとは言えません。
前述のように、冬の時期の感染性胃腸炎は多くがノロウイルス感染症が原因となります。また感染性胃腸炎は水分摂取と症状を取る治療(対症療法)が主体となりますので、冬の時期の感染性胃腸炎はノロウイルス感染症として対応するのが原則となります。
ご自身で水分摂取ができない場合には点滴での水分補充が必要になりますので、「嘔気のため水分摂取ができない」「脱水でおしっこの量が減っている」などの症状があれば病院を受診するようにしましょう。
ノロウイルスは人から人にうつりやすい
ノロウイルスはヒトの腸の中で増殖するため、患者のふん便や吐ぶつの中にノロウイルスが大量に含まれます。
これらを家族などの身近な人が片付けるときに手にノロウイルスが付着し、口に入ることでノロウイルスに感染します。
あるいはノロウイルスに感染した人がトイレに行った後などに手洗い不十分な状態で調理をすることで食品を介して感染することがあります。
ノロウイルスは経口感染(食べ物などから口に入ることによる感染)をする感染症の中で最も少ない個数で感染・発症する病気と言われており、最低18個のノロウイルスを経口摂取することで感染が成立します。
手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法は手洗いです。 料理する前、食事の前、トイレに行った後、ふん便や吐ぶつの処理やオムツ交換等を行った後には必ず手洗いを行いましょう。
手洗いの仕方はこちらを参考にしてください(特に花王とは利益相反はありません)。
また稀ではありますが、吐ぶつ中のノロウイルスが乾燥によって空気中に漂い、それが口に入ることでノロウイルスに感染することがあります。実際にそれが原因と考えられる集団感染の事例もあります。吐ぶつはなるべく早く処理しましょう。
吐ぶつを処理する場合は(できれば使い捨てのガウン・エプロン、マスクと手袋を着用し)、吐ぶつをペーパータオル等でゆっくりと拭き取りましょう。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように床を拭き取り、その後水拭きをしましょう。
というわけで、繰り返しになりますがノロウイルス感染症の特徴は、
冬に流行する
生ガキなどの二枚貝から感染しやすい
おなかを壊す原因になる
人から人にうつりやすい
です。みんなで無事に乗り切れるよう、注意してこの冬を過ごしましょう。
参考:厚生労働省.ノロウイルスに関するQ&A