【京都市京セラ美術館】火山噴火で消えた街には豊かな暮らしがあった!「ポンペイ展」に胸が熱くなる
今から約2千年前…
イタリアの中南部にあった人口1万人ほどの都市が火山の噴火で姿を消した。
その都市の名は「ポンペイ」という。
紀元79年、街の北西約10キロにあるヴェスヴィオ山が噴火、その時発生した火砕流は古代ローマの都市ポンペイを壊滅させました。
そして、驚かされるのは…
大量の火山灰に埋没した都市は18世紀に発掘されるまで、ほぼ噴火当時の状態を保ったままだったということ。
つまり、この失われた古代ローマの都市ポンペイは、まるでタイムカプセルを発掘するように当時の人々の暮らしがありありと残されていたのです。
そんな約2千年前のポンペイ遺跡の貴重な出土品が京都にやって来ました!
京都市京セラ美術館 にて「ポンペイ展」の開催です。
京都市京セラ美術館 「ポンペイ展」
イタリア・ナポリ国立考古学博物館が、初公開を含む至宝、約120点を出品。
期間:2022年4月21日から7月3日まで
モザイクや壁画、彫像、貴金属といった美術品のほか、裕福な家庭の豪華な食器や道具類などの日用品の展示を通じて、2千年前の生活様式や高度な文明が見られます。
では、「ポンペイ展」の一部を紹介しましょう!
ポンペイ最大の発見、それは2千年前の人の姿がそのまま残されていたこと。
ただ、これは遺体ではなく石膏像。
噴火により亡くなった人々体に、火山灰が降り積もり、やがてカチカチに塊まります。時が立ち、肉体は朽果て、火山灰は体の形に固まったままの姿を保ち空洞ができる。
その空洞に石膏水を注ぎ、完全に乾いてから掘り出したのが石膏像です。
こちらは「女性犠牲者の石膏像」、身を伏せ避難している時に亡くなったのだろうか…。
フレスコ画の「バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山」です。
噴火前のヴェスヴィオ山を描写した唯一の作例。頂上まで続くブドウ棚、ブドウの実を身にまとうワインの神バックスの姿が見えます。
今回の『ポンペイ展』は5つのテーマに分かれています。
- 第1章 ポンペイの街 ― 公共建築と宗教
- 第2章 ポンペイの社会と人々の活躍
- 第3章 人々の暮らし ― 食と仕事
- 第4章 ポンペイ繁栄の歴史
- 第5章 発掘のいま、むかし
言うまでもなく全て余すことなく見どころですが…
今回ピックアップしたいのは第4章の当時の暮らしぶりを感じられる「ファウヌスの家」からの出土品の展示。
ヴェスヴィオ山が噴火したのは紀元79年、ローマ人がポンペイを征服したのが紀元前89年、そしてポンペイの歴史はもっと古い。
ここではローマ化以前の独自に発展したポンペイのヘレニズム文化の豊かさが見られます。
では、「ファウヌスの家」について紹介しましょう。
「ファウヌスの家」からの出土品展示
「ファウヌスの家」は、前180~前170年に特定階級の邸宅として建設され、前2世紀末~前1世紀初頭に改築されたポンペイで最も広い邸宅。
いくつもの部屋の床がヘレニズム美術の枠を極めた細密技法のモザイクで飾られていました。
展示品を見てみると…
まず、この家の名の由来となった像「躍るファウヌス」に目を奪われます。
髭を生やし、乱れた髪の間からヤギの角がある顏、そして全身裸で今にも動き出しそうな動きに注目したい。
両手をあげて躍るような足取り、激しく身体を捻じり上昇していくような螺旋状の動きはヘレニズム美術の特徴とされています。
この像は、動きから「躍るファウヌス」と呼ばれていますが…
実際には、ギリシャ神話に登場するサテュロス(酒の神ディオニュソスの陽気な従者)だと考えられているようです。
そして、ここからがモザイクです。
モザイクとは石やガラスの小片を敷き詰め描いたもので、古代ローマの裕福な家の床は、見事なモザイクで装飾されていたんだとか。
このモザイクは「イセエビとタコの戦い」、魚の描写が見事で、海を背景に魚が泳ぐ不思議な世界観に引き込まれます。
「ネコとカモ」(モザイク)は、カモや魚は描かれているが水の描写がありません。これは貯蔵庫に忍び込んだネコのよう。
饗宴のために用意した食料がネコに奪われる。当時よくある光景だったのでしょうか。
こちらは「ナイル川の風景」(モザイク)です。
植物の茂ったナイル川、水面にカモが反射し、ハスの葉の上でカエルが一休み。穏やかな風景ですが、カエルはその後無事だったのか…少し気になります。
ファウヌスの家のアトリウム入口に飾られていた「葉綱と悲劇の仮面」(モザイク)は必見です。この圧倒的な存在感、見入れば見入るほど引き込まれる迫力。
大きな葉綱と。3つの輪、2つの悲劇用仮面が描かれています。
怒りの形相に、窪んだ眼窩、大きく見開いた目、大きく開いた口、大量の前髪が特徴的。
こちらは「湯沸かし器」です。
このようなものが1世紀にあったという事実に驚きます。
井戸から水を汲み上げる「シトゥラ(バケツ)」は両側に仮面をかたどった装飾、また把手にはガチョウの頭部がみられます。
「三葉形注口水差し」はワインをまぜるために使われていた水差し。
この「貝殻形カップ」は、宴会中に手を清めたり化粧をするために用いられていたようです。
そして「料理保温器」もあります。
腹部の膨らんだところに燃料を入れるための穴、脚部にはセイレンの装飾が見られます。
笛の本体は穴の開いた木簡で、銀の輪が付いたブロンズの帯で包んでいます。
ファウヌスの家では、高価な宝飾品も出土しています。
展示の指輪を見ていると、槍とパテラを持ち、髭をたくわえた神(ユピテルか)が刻印されてたり、ザクロ石に人物像が刻印されているのも分かります。
また、ヘビ形ブレスレットは、ヘビをかたどった螺旋状のタイプで刻印された鱗文様がパルメット文様から打ち出し細工の頭部まで繋いでいます。
ヴェスヴィオ山の噴火によって壊滅した悲劇の都市ポンペイ。このように当時の様を見ていると、まるでタイムカプセルのように思えてきます。
ここで紹介しているの『ポンペイ展』の展示品のほんの一部。そして実際に目にすると、その精密さ、奥深さに心が震えます。
(取材協力:京都市京セラ美術館)
最後に…
京都市京セラ美術館『ポンペイ展』の中で、今回は「ファウヌスの家」に関する展示を中心に紹介しました。
ポンペイと言えば、火山の噴火で姿を消した悲劇の街といったイメージが強く、石膏像は有名ですが、むしろ注目したいのは、この街に存在した人々の豊かな暮らし、文化、歴史です。ここに意識を向けると、この『ポンペイ展』はグッと面白さを増します。
「ファウヌスの家」は、紀元前2世紀ごろに建設されたポンペイで最も広い邸宅。
この家の名の由来となったブロンズ像「踊るファウヌス」、海の幸を表したモザイク画「イセエビとタコの戦い」「葉綱と悲劇の仮面」など、ローマ化以前の独自に発展したヘレニズム文化の豊さを堪能してみましょう。
それと…
エクセドラ(談話室)のフロアーにレプリカとして敷かれている「ナイル川の風景」と「アレクサンドロス大王のモザイク」も見逃さないように。
「アレクサンドロス大王のモザイク」と言えば…
世界史の教科書などで一度は目にした事があるはず。アレクサンドロス大王がアケメネス朝ペルシャのダレイオス3世を敗走させた有名な場面。
この画、見たことありませんか?
この世界的に有名な「アレクサンドロス大王のモザイク」はポンペイから出土しました。しかも、この「ファウヌスの家」からです。
さぁ、京都にいこう!そして『ポンペイ展』にも立ち寄ってみて下さい。このような機会でしか目に出来ない貴重な展示品が沢山見られます。
※京都市京セラ美術館 『ポンペイ展』の魅力に関しては、後日また、違うテーマで紹介したいと思います。
ポンペイ展
場所:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階
会期:2022年4月21日(木)~7月3日(日)
時間:10:00~18:00 (入場は閉館の30分前まで)
休館:月曜日
※5月2日(月)は開館
「ポンペイ展」公式サイト
※詳細は公式サイトをご確認ください。
【観覧料】
一般:2,000円
高大生:1,200円
小中生:800円
※事前予約制(日時指定)を推奨しています。会場でも当日券をご購入いただけますが、混雑状況により入場をお待ちいただく場合や、当日券の販売が終了している場合があります。