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「今すぐやらない技術」――今すぐしかやらない人にはなるな!「LIFO思考」の弊害

横山信弘経営コラムニスト
仕事を処理しても処理しても終わらない「LIFO思考」(写真:アフロ)

今すぐにやればいいことを、なかなかやらない人がいます。そういう場合は、あなたがポーター(荷物の運搬などを主業務とするホテル従業員)で、台車の上に荷物を置き、それを押して目的の場所まで持っていこうとイメージすればよい、と「今すぐやる人」に「今すぐなる」のは無理だが、1年後には「今すぐやる人」に変身する方法で書きました。ポイントは3つ。荷物を軽くすること、気持ちを軽くすること、軽々と押せる力を手に入れることです。これを「台車理論」と名付けて解説しました。

しかし、何でもかんでも「今すぐやる」ことで問題が解決するわけではありません。特に「後入れ先出し」で物事を考える人は、その作業を「今すぐやる」必要があるかどうか、よく考えてもらいたいと思います。

物事の処理手順をあらわした後入先出法――営業表記はLIFO(Last In, First Out)――とは、後に取得したものから先に処理する方法のこと。反対に、先入先出法(FIFO)とは、先に取得したものから先に処理する方法です。

先述のポーター業務で考えてみましょう。

お客様から「A」という荷物を預かったとします。この「A」の荷物が1回で運ぶことができるのであれば、問題はありません。しかし3つに小分けしないと運べない場合は、「A-1」「A-2」「A-3」という3つ荷物に分解されます。

ところが「A-1」の荷物を運んだ後に、他のお客様から「B」の荷物を運んでくれと言われました。普通の感覚であれば、「A」の荷物をすべて運び終わってから「B」の荷物運搬をスタートさせることでしょう。これが先入れ先出し(FIFO)の思考です。

しかし「A-2」「A-3」の運搬が終わってもいないのに「B」の荷物を運び始めたらどうでしょうか。「B」の荷物を運び終わったあと、さらに別のお客様から「C」の荷物運搬を頼まれ、それを「C-1」「C-2」「C-3」「C-4」と4つに分解し、「C-1」を運びはじめたらどうなるでしょうか。さらに、それが終わったあと、今度また別のお客様から「D」の荷物運搬を頼まれ、それが「D-1」「D-2」の2つに小分けされ、「D-1」だけを運ぶ……となると、めちゃくちゃになります。これが後入れ先出し(LIFO)の思考手順です。

お客様からの荷物運搬の依頼が止まらない限り、いつまで経っても、「A-2」「A-3」「C-2」「C-3」「C-4」「D-2」の運搬が終わりません。

LIFO思考の人に、次から次へと仕事が舞い込んできくると大変なことになります。仕事をドンドン処理している割には、いっこうに片付いていかないのです。いわゆる「段取り」のつけ方に問題がある、ということです。

「今すぐやる」ことはとても重要です。しかし複数のタスクが積みあがってひとつのプロジェクトを構成している場合、手順を正しく吟味しないといけません。特にマネジメントを任された人がLIFO思考ですと、組織の仕事がまわっていかなくなります。気を付けたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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