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金総書記の戦略ミサイル基地視察は異例! ハリス副大統領が当選すれば、直ちにICBM発射か!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
戦略ミサイル基地を初めて訪れた金正恩総書記(右)(朝鮮中央通信から)

 米大統領選挙を2週間後に控え、今朝の「朝鮮中央通信」は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「戦略ミサイル基地を視察した」と伝えていた。いつ視察したのかは明らかにされてなかったが、おそらく昨日(22日)のようだ。

 金総書記は米朝の軍事対立がピークに達していた2017年8月14日に戦略軍司令部を訪れたことはあるが、戦略ミサイル基地を公式に訪れたのは今回が初めてである。これまでに何度もICBM(大陸間弾道ミサイル)を含め戦略ミサイルの発射に頻繁に立ち会っていたが、秘密場所でもある戦略ミサイル基地を訪れたことは一度もない。随行者もミサイル担当の金正植(キム・ジョンシク)党第1副部長(軍需担当)と妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長の2人に限られていた。

 北朝鮮は、先月(9月)は濃縮ウラン核施設の存在を認め、金総書記が施設で濃縮ウラン製造に不可欠な遠心分離機を見て回っているところを写真付きで公開したが、それに続く米国への露骨な牽制である。金総書記は視察後、米国に対応するため「核兵器を幾何級数的に増やす」ことを命じていたが、戦略ミサイル基地の視察はまさにその延長線上にある。

(参考資料:金総書記が視察したウラン核施設は「寧辺」なのか、「カンソン」なのか?)

 北朝鮮の戦略級ミサイルには潜水艦弾道ミサイル(SLBM)を地上型に改良した「北極星2号」(推定射程距離3000km以上)、「火星12号」(推定射程距離5000km以上)「火星14号」(推定射程距離7000km以上、「火星15号」(推定射程距離1万km以上)、「火星17号」(推定射程距離1万3千km以上)、それに固体燃料を使用する新型ミサイル「火星18号」などがある。

 「火星17号」の発射台は11軸22輪、「火星18」の移動式発射台は9軸18輪であるが、金総書記が9月7日に国防国防工業企業所を視察した際に12軸24輪の弾道ミサイル発射車両が密かに公開されていた。仮に大型化した新型ICBM用の発射台ならば、その試射が差し迫っているのかもしれない。

 北朝鮮は国防省の金ガンイル副相(次官)が米戦略爆撃機「B-1b」が10月1日の韓国の「国軍の日」の軍事パレードに登場したことに対して「座視せず、徹底的に相応の行動を取る」と対抗措置を示唆する談話を出していた。

 金次官は談話の中で「予告のない戦略資産展開が治癒不能の悪習と固着した以上、それ相応の予測できない戦略的性格の行動措置を講じることも必須不可欠の主権国家の合法的権利になるべきであろうし、米本土の安全に重大な憂慮感を増す新たな方式が当然、出現すべきであろう」と述べていた。

 韓国では金次官が言及した「それ相応の予測できない戦略的性格の行動措置」あるいは「米本土の安全に重大な憂慮感を増す新たな方式」に注目していたが、ICBMを正常角度で太平洋に向け発射し、着弾させることも北朝鮮が取るべき行動措置の一つとみなしていた。

(参考資料:韓国国軍の日に北朝鮮が「戦略的対抗措置」を予告!「米本土の安全に重大な憂慮感を増す新たな方式」とは?)

 北朝鮮は昨年、米本土に届くICBMを5回発射してみせた。すべてロフテッド(高角度)による発射である。正常角度(30~45度)で発射すれば米本土に十分届くと言われているが、北朝鮮はこれまでまだ一度も正常角度で発射したことはない。このため北朝鮮は大気圏再突入の技術をまだ保有していないとみられている。

 このことについて金与正副部長は一昨年12月に「高角発射だけで立証できないと言うならば実際の角度で発射すればわかることだ。(正常角度の発射を)やれば直ぐにわかることだ」と反発していた。北朝鮮は固形燃料を使用する「火星18」を最後に発射した昨年12月18日以来、今年は一度もICBMを発射していない。時期的にはそろそろやっても不思議ではない。

 金与正副部長は韓国の無人機侵入を批判する10月14日の談話で「核保有国(北朝鮮)の主権がヤンキー(米国)が手なずけた雑種の犬(韓国)によって侵害されたならば、野良犬(韓国)を飼った主人(米国)が責任を負うべきことである」と、批判の矛先を米国に向け、さらに翌日(15日)の談話では「挑発者は、ひどい代償を払うことになるであろう」と、ここでも報復を示唆していた。

 さらに、昨日(22日)の談話では「ソウルがどんなに危険なことを仕出かし、そのため自ら招いた不結果がどれほど途方もなく致命的なのかは直接体験してみればはっきり分かるだろう」と述べ、「我々の報復や復讐がどのように完成するかは、誰も知らない」と不気味な言葉を口走っていた。

 韓国国防部及び情報機関の「国情院」は北朝鮮が米大統領選挙を前後してICBMの発射あるいは核実験があると予測しているが、金総書記にラブコールを送っているトランプ前大統領が当選すれば、控えることはあり十分に得る。しかし、ハリス副大統領が当選すれば、瞬時に発射するであろう。もしかすると、その前に「オクトーバー(10月)サプライズ」として断行する可能性も決してゼロではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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