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『そばアレルギーは自然に良くなることは絶対ない』は本当か?:専門医が解説

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:Paylessimages/イメージマート)

世界で一番はじめてそばアレルギーが報告されたのは1909年のことです。

アレルギーという概念が提唱されたのがその3年前だったこともあり、論文には『buckwheat poisoning』、つまり『そば中毒』と書いてありました[1]。

しかし現在は、そばが強いアレルギーを起こすことがあることを、多くの方がご存じでしょう。

日本におけるそばアレルギーは、食物アレルギー全体の1.8%と報告されており[2]、強いアレルギー症状いわゆるアナフィラキシーを起こす方も少なからずいらっしゃいます。

私は専門の関係で、そばアレルギーを心配されている方を多く診療しています。そして年越しそばの時期が近づくと、そばアレルギーに関して尋ねられることも増えてきます。

そこで今回は、そばアレルギーに関して簡単に解説してみたいと思います。

そばアレルギーを疑われている方が、実際にそばを食べると、どれくらいの確率で症状が出現する?

過去にそばを食べてアレルギー症状があったかもしれないという方や、そばアレルギーの血液検査が陽性という方419人(中央値6.7歳)に、実際に茹でたそば64gを食べてもらうという負荷試験を行ったという研究があります[3]。

すると意外にも、実際にアレルギー症状が出現したのは10%程度のみだったという結果でした。

ただし注意したい点として、症状が出現した10%の方のうち、およそ半分はアナフィラキシーという強いアレルギー症状を起こしたという結果も得られたのです。

そばアレルギーの懸念がある子ども419人に対して、

そばを実際に食べた時に、症状がどれくらい出現するか

イラストACと文献3から筆者作成
イラストACと文献3から筆者作成

つまり、全く症状を起こさないか、強いアレルギーを起こすか、その二つに大きくわかれるというイメージになるといえるでしょう。

そばアレルギーの問題のひとつは、アレルギーがあるかどうかを予測するためのアレルギー検査、特異的IgE抗体価の有用性が低いこと

一般的にアレルギーがあるかどうかを予想するために行う血液検査に、『特異的IgE抗体価』というものがあります。ひろく活用されてはいますが、そばアレルギーに関しては、有用性が高くないことがわかっています。

皮膚プリックテストという、専門医を中心に行われている皮膚検査は血液検査よりも有用性がすこし高いのですが、それでも確定診断に至ることはやはり難しいのです[4]。

ただし、過去、そばに対して症状があったかもしれないという方は実際に負荷試験を行うと3割に症状が出現し、病歴は大事ということがわかっています。

『そばアレルギーは自然に良くなることはない』は本当?

しかし、この結果をよく考えてみると、『過去、そばアレルギーかも』と思っていた方も、7割は食べることができたとも言えます。

そばアレルギーは自然に改善することはない、と考えられてきました。

しかし、先程ご紹介したそば負荷試験の参加者419人の中には、過去、そばに対してアナフィラキシーという強いアレルギー症状があったという方も12人含まれていました。

そしてそのうち8人はそばを食べても症状が出なかったという結果になっています。

つまり、過去、そばに対してアレルギー症状があったという方も、一部の人は症状がでなくなっている可能性があるということがわかったのです(まだ今後の検討は必要です)。

もちろん、年末年始にそばをあえて食べてみようと思ってはいけませんよ。

そばアレルギーは、実際に症状があるケースの半分は、強いアレルギー症状、アナフィラキシーを起こすのです。強い症状を起こしてしまい受診しようと思っても、人手が少なくなっている医療機関の受け入れが難しい場合だってありますから。

そばを実際食べるかどうかを考える場合は、年が明けてからアレルギー専門医に相談していただくのが良いでしょう。

さて、今年ももう終わりが近づいています。

来年がみなさまにとって良い年になることを願っています。

参考文献

[1]Smith HL. Buckwheat-poisoning with report of a case in man (1909). Allergy Proc 1990; 11:193-6; discussion 89-92.

[2]食物アレルギーの診療の手引き2020

https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/

[3]Yanagida N, et al. Reactions of Buckwheat-Hypersensitive Patients during Oral Food Challenge Are Rare, but Often Anaphylactic. Int Arch Allergy Immunol 2017; 172:116-22.

[4]Yanagida N, et al. Skin prick test is more useful than specific IgE for diagnosis of buckwheat allergy: A retrospective cross-sectional study. Allergol Int 2018; 67:67-71.

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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