Yahoo!ニュース

なぜレアルはGK獲得を考えているのか?デ・ヘア、ケパ、ボノ…クルトワの負傷と補強プランの変更。

森田泰史スポーツライター
負傷離脱のクルトワ(写真:ロイター/アフロ)

シーズン開幕前に、大きな痛手だ。

レアル・マドリーは現地時間12日のリーガエスパニョーラ開幕節、敵地サン・マメスでアトレティック・クルブと対戦する。だがこの試合を前に、カルロ・アンチェロッティ監督の悩みの種が増えている。

マドリーはGKティボ・クルトワがトレーニング中にひざを負傷。前十字靭帯の断裂で、7ヶ月から8ヶ月の離脱が見込まれている。

ラ・リーガ開幕戦を前に正GKが不在に
ラ・リーガ開幕戦を前に正GKが不在に写真:ロイター/アフロ

「こういったことが起こるというのは、誰もが予期していないものだ」とはクルトワの言葉だ。

「だけど、今はそれを受け入れなければいけない。そして、乗り越えるために全力を尽くす。もっと強くなって、戻ってこられるように。激励、愛情、エネルギーを、周囲の人たちは僕に与えてくれた。とても感謝している。そういったものが、できるだけ早く回復したいというモチベーションになる」

■GKの代役を探す必要性

いまはクルトワの早期回復を祈るばかりだ。一方で、マドリーは彼の代役を見つける必要があるだろう。

マドリーには、アンドリュー・ルニンという第二GKがいる。ルニンは2018年夏に移籍金850万ユーロでマドリーに加入。レガネス、バジャドリー、オビエドへのレンタルを経て、マドリーに復帰した。

ルニンはここまでマドリーで17試合に出場している。最もプレータイムを得たのは昨シーズンで、12試合に出場した。その間、13失点を喫している。

ルニンは良いGKだ。しかしながら、リーガ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグと3大会を戦うマドリーで、ワンシーズンを通じてフル稼働させるのは心許ない。ゆえに、マドリーでは、補強の可能性が考えられている。

■スペイン人GKの去就

その有力候補の一人が、ダビド・デ・ヘアだ。デ・ヘアは昨季終了時にマンチェスター・ユナイテッドとの契約が満了を迎えた。契約延長で問題を抱え、この夏、フリーの選手になっている。

デ・ヘアは2010年から2023年までユナイテッドでプレーした。ビッグクラブでの経験があり、スペイン代表としても主要大会に4度(2014年・2018年W杯/EURO2016・2020)出場している。他方で、ネックを挙げるとすれば、マドリーのライバルクラブであるアトレティコ・マドリーのカンテラ出身であることと高額なサラリーだろうか。

マンチェスター・ユナイテッドでプレーしたデ・ヘア
マンチェスター・ユナイテッドでプレーしたデ・ヘア写真:ロイター/アフロ

また、マドリーにとって魅力的なオプションになっているのが、ケパ・アリサバラガである。

ケパはアトレティックのカンテラ出身選手だ。2018年に契約解除金8000万ユーロ(約126億円)が支払われ、チェルシー移籍が決定。だが、その直前にマドリー移籍に迫った過去がある。なお、現在、マドリーでGKコーチを務めているルイス・ロピス氏(2008年から2011年までアトレティックのGKコーチ)とは旧知の中だ。

ケパには、今夏、バイエルン・ミュンヘンが強い関心を示している。ハリー・ケイン(トッテナム)とケパを獲得して、最前線と最後尾を補強するというのがバイエルンの狙いだ。ただ、現時点で、バイエルンのケパ獲得交渉は思うように進んでいない。

チェルシーのケパ
チェルシーのケパ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

そして、マドリーが注視しているのが、セビージャのヤシン・ボノだ。

ボノは2019−20シーズン、22−23シーズンと2度セビージャでヨーロッパリーグ優勝を経験している。昨年、行われたカタールW杯では、モロッコ代表のベスト4進出に大きく貢献した。

ボノは2025年夏までセビージャと契約を結んでいる。契約解除金は5000万ユーロに設定されているが、セビージャ側は移籍金2000万ユーロから交渉に応じる構えだとされる。ただ、この夏、バイエルン、パリ・サンジェルマン、インテルと複数クラブが関心を寄せていたものの、ボノの獲得には至っていない。

セビージャで活躍するボノ
セビージャで活躍するボノ写真:ロイター/アフロ

ジョルジ・ママルダシュビリ(バレンシア)、ケイロール・ナバス(パリ・サンジェルマン)、ドミニク・リバコビッチ(ディナモ・ザグレブ)、ディオゴ・コスタ(ポルト)…。ほかにも、複数の選択肢がある。いずれにせよ、マドリーは迅速に動かなければいけない。

■エムバペの移籍問題

もうひとつ、気になるのはキリアン・エムバペの去就だ。

エムバペは、パリ・サンジェルマンからの退団を望んでいると言われている。移籍を希望しており、新天地候補として、度々、レアル・マドリーが挙げられてきた。

去就が定まらないエムバペ
去就が定まらないエムバペ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

マドリーは昨季終了時にカリム・ベンゼマの退団が決定した。サウジアラビアのアル・イテハドからビッグオファーが届き、エースの移籍が決まった。

この夏、ホセルをエスパニョールからレンタルで獲得したマドリーだが、ワールドクラスのFWの補強は敢行されていない。背番号9は“空き番”のままとなっている。

攻守の要になっていたクルトワとベンゼマ
攻守の要になっていたクルトワとベンゼマ写真:ロイター/アフロ

だがクルトワの負傷で、マドリーは補強プランの変更を強いられている。3つの主要タイトルのいずれかを確保するためには、トップクラスのGKを獲得する必要があるためだ。

これは、マドリーとしては誤算だったはずだ。しかし、夏のマーケットが閉まるまで、残された時間は20日あまりである。状況は待ったなしだ。シビアな決断が、迫られている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事