なでしこジャパンが格上との3連戦へ。W杯上位進出に向けターニングポイントとなるか
【W杯ベスト4クラスとの4カ国対抗戦】
2023年は、女子サッカーのワールドカップイヤーだ。今年7月にオーストラリアとニュージーランドの共催で開催される女子W杯は、各大陸から32カ国が出場する。なでしこジャパン(FIFAランク11位)は、グループステージでスペイン(7位)、コスタリカ(37位)、ザンビア(81位)と対戦する。
日本は2019年のフランス大会では、欧州の列強の壁に阻まれベスト16、東京五輪はベスト8で敗退した。
欧州では女子サッカーの商業化が進んで各国リーグがプロ化を加速させ、環境面も向上。強豪国は個のレベルアップとともに、戦術面でも練度を高めている。
一方、日本でも2021年にプロリーグ(WEリーグ)が発足。海外の強豪クラブで活躍する選手が増え、2022年10月に発足した池田ジャパンはドメスティックなチームから、洗練された個の集団に変わりつつある。
昨年11月の欧州遠征では、W杯の優勝候補にも挙がるイングランド(●0-4)とスペイン(●0-1)と対戦。戦術的にも完成度の高い両国の胸を借りて、攻守の課題を持ち帰った。
また、カタールワールドカップで強国撃破を果たした男子代表から刺激を受けたことを、多くの選手が証言している。
対戦国の徹底分析と準備、ピッチ上の対応力と果断な采配、厚い選手層。森保ジャパンのチーム作りは、なでしこジャパンにとっても指針となる。
池田太監督は、「結果も重要ですが、最後まで戦う姿勢や情熱の部分で、見ているお客さんやサポーターに伝わる試合がしたいと強く思いました」と、熱くコメントしている。
W杯まで残り5カ月。活動機会は限られており、2月にアメリカで行われる4カ国対抗戦、4月の欧州遠征、そして国内での壮行試合を経て7月の本番に突入する。
2月8日には、同16日に開幕する「SheBelieves Cup」のメンバー23人が発表された。
対戦相手はFIFAランク9位のブラジル(試合は2月16日)、同1位のアメリカ(19日)、同6位のカナダ(22日)、という強豪3カ国。ブラジルは男子同様サッカー王国らしい個の強さを持ち、カナダは東京五輪王者。アメリカはW杯2連覇中のチャンピオンだ。欧州勢の躍進もあるが、佐々木則夫JFA女子委員長は「W杯ベスト4を狙えるチーム」と、3カ国とのマッチメイクに手応えを示した。
日本は2020年以降、コロナ禍で対外試合が限られていたことを考えれば、昨年末以来、格上とコンスタントに対戦できていることはポジティブな変化だ。
【積み上げ・チャレンジ・選考を兼ねた3連戦】
今大会は戦術面の積み上げとチャレンジ、W杯への選手選考を兼ねた3試合になる。試合間隔は、移動を含む中2日。W杯よりも過密日程だが、実戦の中でリカバリーから準備、試合に至る流れをシミュレーションできる貴重な機会。オフザピッチも含めた対応力が試される。
今回の招集メンバー23名の構成は、国内組12名、海外組11名。海外組は顔なじみのメンバーが多いが、FW岩渕真奈がアーセナルからトットナム(共にイングランド)へ、MF長野風花がノースカロライナ・カレッジ(アメリカ)からリバプール(イングランド)に移籍した。各クラブで主力として活躍する選手が多く、チャンピオンズリーグなどの大舞台や数万人の観客が入る試合を経験している者もいる。
そして、国内組から初選出となったのが、DF守屋都弥(もりや・みやび/I神戸)とDF石川璃音(いしかわ・りおん/浦和)の2人だ。
守屋は、WEリーグ首位を走るI神戸で右サイドの攻撃を牽引している。元々は守備のオールラウンダーだが、今季は右のウイングバックで攻撃力が開花した。池田監督は「ワイドでダイナミックに動けてクロスのタイミング精度が高く、アップダウンができる運動量もある」と評価。強度の高いプレーを強豪国にも通用させたい。
石川は、昨年8月のU-20W杯で準優勝を支えたセンターバックだ。同大会を共に戦ったMF藤野あおば(東京NB)、FW浜野まいか(ハンマルビーIF)とともに、最年少の19歳でメンバー入りを果たした。石川の特徴はなんと言っても1対1の強さだろう。女子W杯と五輪を3大会ずつ経験し、W杯優勝も含め幾多のタイトルを獲得してきたFW安藤梢が「初めて見た時にバケモノだと思った」と絶賛したフィジカルモンスターで、チームメートのDF清家貴子も「むちゃくちゃ対人に強い」と太鼓判を押す。所属の浦和では4バックだが、U-20代表では3バックで戦っていたため戦術的柔軟性も期待でき、今大会で注目したい選手の1人だ。
昨年10月以来2度目の招集となった浜野まいかは、背後に抜けるスピードとシュートセンス、ボールに食らいつく気持ちの強さが魅力のストライカー。今冬にイングランドの強豪チェルシーに加入した後に期限付き移籍し、スウェーデンリーグで活躍中。A代表では初めて強豪国と対戦する。
また、1年2カ月ぶりの招集となったのが、FW小林里歌子(東京NB)だ。ケガ明けで昨年末から段階的に出場時間を増やしてきたが、皇后杯では完全復帰を果たしてタイトル獲得に貢献。「動き出しの良さやボールの引き出し方のアクションも彼女の良さ」(池田監督)というように、周囲とのコンビネーションの中で攻撃にバリエーションを加えるプレーに期待がかかる。
アメリカで定期的に開催されてきたこの大会は、世界一の代表人気を象徴するスタジアムの盛り上がりも見どころの一つ。各国スター選手の競演とともに、華やかな大会の雰囲気も楽しみたい。
*表記のない写真は筆者撮影