水道メーター盗難多発と銅価格高騰との関係
盗難対策のしにくい水道メーターボックス
埼玉県内各地で水道メーターの盗難が相次いでいる。下の表はさいたま市の事例だが、そのほか朝霞市、和光市、上尾市、川越市など複数の自治体で被害が発生している。
水道メーターボックスは検針しやすいように、一般道路近くに設置されていることが多い。メーターボックスの青いフタには鍵などはかかっていないので、誰でも開け閉めできる。ここが対策しにくい点だ。
水道メーターボックスのしくみ
ボックスのフタをあけると下のように水道メーターと止水栓がある。
水道メーターは水道管から家庭へと流れる水道水の量を測るもので、これによって水道料金が決まる。水道メーターの横には止水栓があり、閉めると水が流れなくなる。
水道メーターは工具があれば比較的簡単に取り外すことができる。取り外すときには止水栓を閉める。だから水道メーターが盗まれたのを、蛇口から水が出ないことで気づくケースが多い。
水道メーターには認識番号が刻印されているため(上の写真)、そのまま転売することは難しいが、換金することは可能だ。
水道メーターを換金するまでの流れ
水道メーターは青銅鋳物でできている(青銅ではなく黄銅合金=真鍮の水道メーターもある)。青銅鋳物は、腐食に強く、圧力に耐えられる性質をもち、加工もしやすいことから、幅広い分野で利用されている。かつては大砲を青銅でつくっていたことから「砲金」とも呼ばれる。青銅鋳物は銅の比率が8割以上と高いため、高値で取引されている。
スクラップ問屋は、水道工事業者、解体業者の持ち込み、地方自治体の入札から青銅鋳物を仕入れ、青銅合金メーカーに販売している。高値で買い取ってもらうには、砲金のみにする必要がある。砲金は水道メーターの容器やバルブの本体に使われている。完全に解体し「砲金のみ」にすると、現在1キロ1000円弱で買い取ってもらえる(砲金以外の素材が付いていると買取価格は下がり、水道メーターの未解体品は、解体の手間がかかるため買取価格はさらに下がる)。
なぜ銅(合金)価格が上がっているかというと、需要に供給が追いつかないから。新型コロナの影響で鉱山での生産が滞っていたが、コロナが明けて急激に需要が高まったこと、銅生産国であるロシアとの貿易が止まっていること、風力発電など再生可能エネルギーの素材として銅が大量に必要であることなどが、その要因だ。
10年以下の懲役または50万円以下の罰金
水道メーターの盗難は過去にもあった。2012年には大阪市で水道メーターなど57点の盗難が発生した。逮捕された男はリサイクル店で1キロ250円(当時)で換金していた。2016年には福岡市周辺で水道メーター173個と蛇口6個の盗難が発生した。逮捕された男は「換金し生活費を稼ぐため」と話した。
水道メーターを盗む行為は「窃盗罪」にあたり、刑が確定すると、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。
自治体は、盗難防止のため、市民に注意喚起を呼びかけるとともに、スクラップ業者とのコミュニケーションを図っている。また、長期間水道を使用しない場合、空き家や取り壊しが決まった建物がある場合は、水道メーターを取り外すことを検討することも呼びかけている。