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クラシコはラ・リーガ首位決戦に…メッシが位置する右サイドの関係性と、ジダンが悩む中盤の枚数。

森田泰史スポーツライター
対峙するS・ラモスとメッシ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

世界が止まる一戦ーー。クラシコは、そう称される。現在、リーガエスパニョーラ(ラ・リーガ)の覇権を握っているのは、直近11年で8度優勝しているバルセロナだ。エルネスト・バルベルデ監督が就任してから2連覇を達成しており、この度のクラシコを王者として迎える。

現地時間12月18日にリーガ第10 節延期分、バルセロナ対レアル・マドリーの試合が行われる。首位バルセロナと2位マドリーは勝ち点35で並んでおり、勝者がタイトルレースにおいて一歩リードするのは間違いない。

延期になったのは、カタルーニャ州の独立運動の影響だ。今回の開催に向けても、「ツナミ・デモクラティック」という独立運動を支持する団体がバルセロナの本拠地カンプ・ノウの周辺を包囲するべく、動いていた。

10月には、空港に向かう高速道路が大量の人で封鎖された。それと同じように、スタジアムから600メートル程離れたマドリーの滞在先ホテルの周りを取り囲むことを検討していたようだ。

■中盤の攻防

だが、厳戒態勢でクラシコは開催される見込みだ。そして、その試合の鍵を握るのは、中盤の攻防だろう。

バルセロナの中盤起用においてはフレンキー・デ・ヨングが当確だ。リーガにおける出場時間1262分は、フィールドプレーヤーでジェラール・ピケ(出場時間1343分)に次いで、チーム2番目である。アンカーのセルヒオ・ブスケッツ、5試合連続スタメン出場中のイバン・ラキティッチと中盤を形成することになりそうだ。

一方、マドリーはジネディーヌ・ジダン監督が悩みを抱えている。中盤を3枚にするか、4枚にするかだ。今季公式戦21試合に出場して、先のバレンシア戦で休養を与えられたカゼミーロ、司令塔役を務めるトニ・クロース、台頭してきたフェデ・バルベルデ、2018年のバロンドーラーであるルカ・モドリッチ。彼らを4人とも先発させる案に加えて、イスコを左WGに置いて可変式4-4-2を敷く可能性もある。ジダン監督はパリ・サンジェルマン戦、バレンシア戦でこの形を試して手応えを得ている。

ここまでの戦いぶりから、ポゼッション率はバルセロナ(64.1%)とマドリー(58%)で、王者に分がある。さらに、バルセロナのパス本数(10484本)、パス成功本数(9200本)、パス成功率(87.7%)は、マドリーのパス本数(8923本)、パス成功本数(7774本)、パス成功率(87.1%)を上回っている。

また、ポイントになりそうなのがジダン監督がリオネル・メッシの「監視役」を置くかどうかだ。ジダン監督は以前、マテオ・コバチッチにそのタスクを課した。10対10の戦術を敷いたのだ。それをこなすとすればカゼミーロ、あるいはF・バルベルデだろう。だが、のちに破壊されたその戦術を再び敷くかを指揮官は熟考しなければならない。

■天国と地獄

バルセロナは今季、公式戦22試合で24失点を喫している。クリーンシートを達成したのは、6試合のみ。守備に課題を抱えているが、しかし攻撃フットボールは貫かれるはずだ。それが彼らの哲学でもある。

攻撃陣は徐々に噛み合ってきた「MSG」が公式戦で33得点を挙げている。メッシ(公式戦14得点)、ルイス・スアレス(12得点)、アントワーヌ・グリーズマン(7得点)のトリデンテがマドリーに襲い掛かる。

ただ、重要なのは右サイドの関係性だ。左サイドバックのジョルディ・アルバは前節レアル・ソシエダ戦で負傷から復帰したばかり。フリーランニングが巧みなセルジ・ロベルト、一瞬で試合を決定付ける能力を備えているメッシ、その2人との絶妙な距離感で参謀役に徹するラキティッチ、この3選手の関係がバルセロナの攻撃のバロメーターになる。

バルセロナはデ・ヨング、グリーズマン、ジュニオール・フィルポ、ネト、アンス・ファティ、カルレス・ペレスが初めてのクラシコだ。対してマドリーではフェルランド・メンディ、ロドリゴ・ゴエス、エデル・ミリトン、ルカ・ヨヴィッチ、アルフォンス・アレオラ、ブラヒム・ディアスにとって、初めてのクラシコになる。

その一方で、歴史に名を刻む者がいる。43回目のクラシコ出場を目指すセルヒオ・ラモスはクラシコ最多出場選手になる。バルセロナにはクラシコ最多得点者がいる。メッシだ。メッシは公式戦のクラシコで26得点、リーガのクラシコで18得点を記録している。

リーガのクラシコにおいては、バルセロナ(72勝)、マドリー(72勝)とまったくの互角だ。今回の対戦でバルセロナが勝利すれば、歴史上初めてその戦績でマドリーに優ることになる。

10月26日に行われるはずだった試合、バルセロナは当時6連勝中だった。対するマドリーはその間3勝2分け1敗。リーガ第9節マジョルカ戦では敵地で0-1と敗れ、ロッカールームに不穏な空気が流れていた。

昨季、リーガ前期のクラシコではバルセロナがマドリーを相手に5-1で勝利した。その大敗は、ジュレン・ロペテギ当時監督の解任の引き金となった。天国と、地獄。その2つを分かつ試合の幕が、下ろされようとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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