「命そのものの大事なお金を、統一教会は奪っていきました」宗教2世涙の訴え 財産保全はなぜ、必要なのか
10月13日、立憲民主党を中心とする国対ヒアリングが開かれました。被害者家族である橋田達夫さん、中野容子さん(仮名)が参加して、財産保全の特別措置法の必要を強く訴えます。旧統一教会の元2世からは、宗教2世が置かれている深刻な現状が、涙ながらに語られました。
文化庁は「本日、午前中に旧統一教会(世界平和統一家庭連合)について、宗教法人法81条1項第1号及び、第2号前段に規定する解散命令事由に該当すると認められることから、所轄庁として解散命令の請求を行い、東京地方裁判所霞が関庁舎において受理されました。これからがスタートラインと思っています」と対応に万全を期していく考えを示しました。
立憲民主党の長妻昭議員は「本日、東京地方裁判所に解散命令請求が受理されたということです。旧統一教会の財産に関する報道が出てきていますが、(財産保全については)次なる焦点として移っていくのではないかと思います。いずれにしても、被害者の方が納得できるようなきちっとした救済がなされることが最優先です」と話します。
弁護士も驚く、段ボールで20箱、5000点に上る資料
全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士は「文化庁の取り組みには大変感謝しております。段ボールで20箱、5000点に上る資料を提出されたと聞いています。弁護士の実感として、それだけのものを提出するというものは見たことがありません。国が本気で取り組んで頂く時の力は物凄いということを実感しています」と話し、次のステップとして、財産保全の法律の必要性を訴えます。
「これがないと、せっかく解散命令が出たとしても、被害抑止、(教団を)弱体化させるという効果しか生みません。何より旧統一教会の最大の問題は、過去の被害者が救済されていないことです。1970年代の後半から、霊感商法の被害は始まっていますが、そういった方々をいかに救済していくか。できるだけ多くの被害者の方にきちっとお金が戻せるように、財産を保全できる実効性ある法律を作って頂きたい」
財産保全について、被害者それぞれの思い
信者である元妻が1億円の献金をして、被害を受けている橋田達夫さんは「財産保全の法律が成立しなかったら、被害者は救済されませんので、みんな泣き寝入りをしてしまいます。すべての政党が財産保全の法案に賛成してくれることを期待しています」といいます。
信者であった母が1億円以上の献金をした後「損害賠償請求などを行わない」との念書を書かされたため、返金裁判が1、2審で敗訴して、現在、最高裁に上告中の中野容子さんは「今後、統一教会は必ず争う姿勢できます。私の裁判は大変時間がかかっており、辛い思いをしていますが、(解散命令請求について)裁判所にはすみやかな審理を望みたいと思います。すでに被害を訴えた方の集団交渉もありますが、教団は不誠実な態度をとっていて進んでいない状態です。解散命令請求が出されましたが、まずしなくてはならないことに、賠償金の返還があります。統一教会は、現在持っている財産を守ろうとすると思います。教団の誠実さに期待することはできません」と財産保全の特別措置法を必ず成立させてほしいと訴えます。
「1円でもサタンにお金を戻すことは許されない」教え
宗教2世問題ネットワークの副代表を務める山本サエコさん(仮名)は、宗教2世の立場から語ります。
「財産保全にもかかわってきますが、統一教会には「万物復帰」(この世の物はすべてサタンに奪われたため、それをすべて神【教祖】のもとに返さなければならない)という教えがあります。このお金を真のご父母様(文鮮明・韓鶴子)と崇拝する教祖に捧げてることが信仰なのです。教祖は日本にいません。その教祖に1円でも多く捧げることに信仰の意味がある。すなわち、教団の財産が、教祖のいる海外に流出する可能性が極めて高いのです。被害者が返金請求して、それが認められた時点で、統一教会の金庫を開けたら、空っぽということがありえます。なぜなら(教団は)返金請求をする被害者を、サタンとみているからです。1円でもサタンにお金を戻すことは許されないのです。万物復帰の教えに反するからです」
当事者の声を聞いてほしい
そして「当事者の声を聞いてほしい」と涙ながらに訴えます。
「貧困にあえいで、健康で文化的な最低限度の生活も送れない人たちがたくさんいます。高額献金をした直接の被害者だけでなく、献金により老後破綻した(信者の)親を養う2世も同様です。せめてお金だけでも返ってきてほしい。これは単なるお金の話ではなく、人間の尊厳であり、人の命だったと思っています」
ご自身の体験を語ります。
「私は母を看取りました。教団内では公職者として働いていましたが、社会保険もかけてもらえず、解雇される時には退職金もなく、無年金、無貯金で死んでいきました。母が、最期に使っていたカバンは、雑誌の付録でした。そこに人間としての尊厳はありませんでした。老後の資金はただのお金ではない。命そのものの大事なお金を、統一教会は奪っていきました」
「私は身ぐるみはがされた母を引き取り、統一教会から隠れるようにして、ひっそりと生きていました。20代前半の生活は、過酷な毎日でした。母は17歳の高校生の時に正体隠しの伝道で統一教会に入信して、18歳で献身をした世間知らずでしたが、可愛らしい母親が愛おしかったです。世間の皆さんにはカルトに騙されたバカな被害者の一人に映るかもしれませんが、私にとってはかけがえのないたった一人の母親でした。彼女の命を守るために、必死になって養い、看取りました。私のような過酷な人生を後輩の2世たちに、味わわせたくないです。どうか、私たち宗教2世、被害者のためにも、財産保全を与野党協議の上、すみやかに法律にして下さい。そして、日本の未来ある若者を守って下さい」と訴えます。
共産党の宮本徹議員は「3人の話を聞きましたが、政治家の皆さんを含めて、被害の深刻さ。そしてどうして被害救済をしなければならないのか。腹の底からみんな理解しなければいけない。理解すれば、おのずと財産保全して、救済の道を開かなければならないと思うことになる」と、法整備への責任を果たしていくことの必要性を話します。
立憲民主党の山井和則議員は「今日、被害者の話を聞いても、解散命令請求はされたとはいえ、被害者は救われていないわけです。ここからが被害救済の本番ですから、私たち政治家も超党派で力を合わせて、被害者救済に取り組んでいきたい」といいます。
被害者、宗教2世の救済はこれから
これから解散命令請求の裁判が始まっていきますが、文化庁が認定したような長年、不法な行為でお金を集める行為をしてきた1世信者の多くは、それが正しいことだと思っています。そして、自分自身を迫害を受けた2000年前のイエスキリストの時代の信者の姿に重ね合わせながら、これまで以上に強固な姿勢で国や社会に戦いを挑んでくると思います。しかし一方で、そうした親の信仰の強制のなか苦しむ宗教2世たちもたくさんいます。
山本さんは次のような話もしています。
「私自身2世の相談対応をしていますが、『精神的に疲れた』『親が合同結婚式を強要するために、結婚を諦めている』『貧困が続いていて、将来に希望が持てない』『借金を返す生活で、結婚も出産も諦めた』『何のために生まれてきたのかわからない』と、最初から諦めている2世たちがたくさんいます。宗教2世は、親と統一教会の組織にのっとられた人生です。取り戻してあげたいです。自分で納得した人生を自分の足で歩めるようにしてあげなくてはならないと思っています」
教団は自分たちを攻撃する者を、サタンとみていますから、より威迫的な言動をしてくると思われますが、本来の文鮮明教祖の教えは「恩讐を愛せよ」です。しかしそれは言葉だけで、実践する人はほぼいないのが、今の旧統一教会の現状です。
解散命令請求により、より攻撃的になる信者らから、社会の人たちの思いと声で、ぜひともいわれなき誹謗中傷を受け続ける被害者と、悩み苦しむ2世信者たちを守ってもらえればと思います。