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マスクで表情を読み取れない部下に上司はどう向き合えばいい? 3種類のストレス反応

横山信弘経営コラムニスト
マスクしているので表情が読み取れない(提供:イメージマート)

■無反応、無表情の部下にはどう向き合えばいい?

「何も言わないから大丈夫だと思った」

こう言った上司に、総務部長は容赦なく突き放した。

「君のような上司が、会社をダメにするんだ」

ある会社で起こった出来事だ。大きなイベントを前に残業が続いていて、ひとりの部下が突如として会社にこなくなった。メンタル不調で入院したらしい。親から連絡があった。

上司は何度も、

「仕事、大丈夫か?」

「大変だったら、いつでも言えよ」

と声をかけたという。しかし部下からの反応がなかったので、「何も言わないということは、大丈夫ということだ」と判断してしまった。

コロナ禍になってから全員がマスク着用して仕事をしている。そのせいもあって、表情を読み取れなかったかもしれない。しかし、周囲の同僚は気づいていた。しかも上司に進言した同僚もいたと言う。だが……

「何も言わないから大丈夫だろ」

「本当にキツかったら、普通は言ってくる」

と言って聞かなかったそうだ。この上司は「悔やんでも悔やみきれない」と嘆いていた。

■マスク部下には体に聞く

マスクがあってもなくても、なかなか表情を読み取ることができない人はいるものだ。そういった部下に上司はどう向き合えばいいのだろうか。質問しても、反応がないのなら打つ手はないのか。いや、体に聞けばいいのである。

反応がわかりづらい部下、あまり感情を表に出さないような部下には、次に示す3種類のストレス反応を頭に入れ、注意深く観察しよう。

①身体的反応(動悸、めまい、頭痛、倦怠感、睡眠障害など)

②心理的反応(緊張、不安、集中力低下、抑うつ、神経過敏など)

③行動的反応(過食、飲酒や喫煙量の増加、遅刻、浪費、ミスなど)

そして相手の表情や行動を見ながら、点と点を繋げていく。

(以前と比べて、かなり表情がなくなってきた)

(ちょっとした会話なのに緊張している)

(ランチに行っても、ほとんど食べない)

(性格は頑固だ。プライドも高い)

いくつかの点を繋げて質問を作るのだ。

「来月後半から新しい社員が入るので、申し訳ないがその受け入れ準備をしてくれないか?」

「別にいいですが、今のプロジェクトはどうしましょう?」

「Cさんに経験を積ませたいから、Cさんに頼むよ」

「わかりました」

「調子が悪そうだから、今のプロジェクトをはずれてくれ」と言っても「いや、大丈夫です」と言い返す性格だと知っている。だからこのように指示したのだ。結果的に部下の残業時間が減り、少しずつ言動が元通りになってきたのなら、

「やはり無理してたんだな」

と判断していい。

このように、はっきりと意思表示しない部下でも、どんな感情を抱いているのかは認知できる。認知的共感力を鍛えればいいのだ。

反応がわかりづらい部下には、体に聞くことが大事だ。ふだんの言動や態度に変化がないか、注意深く観察することである。とくにマスクをしている部下や、在宅ワークをしている部下には、「大丈夫?」と直接聞くのではなく、最近の言動がわかる質問をしよう。それが大人の対応だ。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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