コロナ前の盛り上がりを取り戻したMLB。5万人超えの大観衆がプレイオフ並の大熱狂
8月3、4日(日本時間4、5日)にロサンゼルスで行われたロサンゼルス・ドジャース対ヒューストン・アストロズの2連戦は、2試合ともに5万人を超えるファンがスタジアムを埋め尽くし、プレイオフ並の雰囲気の中で試合が行われた。
その熱気はこの1年半は感じたことがないものであり、コロナ前の熱狂がようやくスタジアムに戻ってきたと感じられた。
ドジャースとアストロズの因縁は2017年のワールドシリーズまでさかのぼる。
最終の第7戦までもつれ込んだこのシリーズは、アストロズが4勝3敗で制して、球団創設56年目にして初の世界一に輝いた。
だが、アストロズのワールドシリーズ制覇から2年後の2019年11月にアストロズのサイン盗みが発覚。MLB機構はアストロズに500万ドル(約5億5000万円)の罰金を課し、GMと監督に1年間の謹慎処分を命じたが、選手への処分はなし。優勝を奪われたと信じているドジャース・ファンは、アストロズへのリベンジの機会を待っていた。
2020年はコロナ禍のためにレギュラーシーズン全試合が無観客で行われ、この2試合がサイン盗みスキャンダル発覚後初めてアストロズがドジャー・スタジアムを訪れた試合となった。
2試合ともに5万人を超えるファンがドジャー・スタジアムを埋め尽くし、球場内は異様な雰囲気に包まれた。
しかも、現地4日の試合は7月末のトレード期限直前にドジャースが緊急補強したマックス・シャーザーの移籍後初登板。試合が始まる前から、プレイオフかと錯覚するような盛り上がりを見せ、アストロズの選手には容赦ないブーイングと野次が飛んだ。
ドジャース・ファンから最もブーイングを浴びせられたのは、アストロズの小さなスーパースター、ホゼ・アルトゥーベ。
シャーザーはアルトゥーベから3打席連続三振を奪い、ドジャース・ファンの心を掴んだ。
「観客はとても盛り上がっていたので、それを糧にしてアドレナリンを出すことができた」と言うシャーザーは、速球の平均速度が今季平均を1マイル近く上回る95.2マイル(約153.2キロ)を記録。17個もの空振りを奪い、7イニングを投げて5安打、10奪三振、2失点の快投を見せた。
7回表に代打のチャス・マコーミックから空振り三振を奪って仕事を終えると、ドジャース・ファンはベンチに下がるシャーザーをスタンディング・オベーションで迎え入れた。
シャーザーへの拍手と歓声は鳴り止まず、シャーザーはベンチから出てきて、手を上げてカーテンコールに応えた。
「好投して、ファンからカーテンコールを求められたことは、今までにないことなので、これは最高な瞬間であり、決して忘れられない」
8回表からシャーザーの後を継いでマウンドに上がったのは、昨年のアストロズ戦でドジャース・ファンからの支持を絶対のものにしたジョー・ケリー。
ケリーがドジャースへFA移籍したのは2018年のオフで、17年のワールドシリーズには出場していない。
だが、無観客の中で行われた昨季のアストロズ戦で、アレックス・ブレグマンとカルロス・コレアの頭部付近にボールを投げた。コレアから三振を奪った際には、ベンチに戻るコレアを挑発。「イカサマ野郎のアストロズを俺は許さない」と口にして、ドジャース・ファンの気持ちを代弁した。
シャーザーへの声援に負けないほどの大歓声の中、マウンドに上がったケリーが最初に対戦したのは、ここまで3三振のアルトゥーベ。
3球続けてナックルカーブを投げて、3球全て空振りの三振。続くマイケル・ブラントリーからも三振を奪い、昨季の乱闘寸前事件以来となるコレアとの対決を迎えた。
この場面で3者連続三振を奪えば、ファンのボルテージは再び最高潮に達したが、コレアはソロ本塁打を放つ。
大ブーイングの中、ベースを一周するコレアは耳に手を当てて、ドジャース・ファンを煽ってみせた。
シャーザーが降板した時点では7対2と大量リードしていたドジャースだが、9回には2点差まで迫られながらも、なんとか逃げ切って勝利を手にした。
この2チームの直接対決は、ワールドシリーズに勝ち上がらない限り、今季はもう戦わない。
アストロズはアメリカン・リーグ西地区首位で、ア・リーグ全体でもタンパベイ・レイズと並んで最高勝率を記録している。ドジャースはナショナル・リーグ西地区2位だが、ワイルドカード争いでは3.5ゲーム差離している。
2チームともにプレイオフに出場する可能性は非常に高く、ワールドシリーズで再戦する可能性も低くはない。
8月の試合でこれほどの熱狂を生み出すチームが、ワールドシリーズの大舞台で戦う姿を見てみたい。