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HO堀江翔太(パナソニック)、復活。ラグビー日本代表に頼れる男が帰ってきた!

斉藤健仁スポーツライター
昨年6月以来の日本代表戦となった堀江(撮影:斉藤健仁)

9月にラグビーワールドカップ(W杯)を控えるラグビー日本代表(世界ランキング13位)は、7月18日(日本時間19日)、アメリカ・サンノゼにあるアバイア・スタジアムでPNC(パシフィック・ネーションズカップ)初戦となるカナダ代表(同17位)と対戦し20-6で勝利した。そんな日本代表「2」番を背負って、1年ぶりに復帰したのがHO(フッカー)堀江翔太(パナソニック ワイルドナイツ)だった。

身長180cm、体重105kgとFWとしては決して大きくない堀江だが、2013年、オーストラリアのレベルズと契約を果たし、日本人FWとして初のスーパーラグビープレイヤーとなった。翌年もレベルズでレギュラークラスとしてプレーし、と同時にトップリーグのパナソニックでは主将を務め、日本代表でも欠かせない中軸の一人として活躍していた。

◇スーパーラグビーを断念。苦渋の選択だった

だが、今年の2月1日、トップリーグのプレーオフで2連覇を果たした直後の記者会見で、堀江は自らこう語った。

「結論から言わせてもらうと、今年のスーパーラグビーを諦めようと思っています。理由は『首の調子がよくない』からです。ギリギリまでどうしようか悩んでいていたのですが、プレーオフの準決勝でちょっと悪化してしまいした。ワールドカップ(W杯)イヤーということもあり、(スーパーラグビー)を休むことにしました」

左手の指の何本かが自由がきかない状態で、左手の握力は14くらいに低下。ボールを投げるためにテーピングが欠かせない状態だった。堀江は続けた。

「4年前にW杯で負けた悔しさが忘れられなくて。あの悔しさを晴らすために、W杯に懸けるという決断を下しました。悔しいですが、しっかりと治してワールドカップに向けて間に合わしたいと思っています」

◇攻守にわたって存在感あるプレーを披露

スーパーラグビーを断念し、2月中旬に行われた手術は無事に成功。そこからリハビリの日々が始まった。

4月から日本代表合宿が始まっても堀江は別メニューだった。今年からコンディショニングスタッフに加わった佐藤義人氏らの下、地味なトレーニングを繰り返した。そして6月、レントゲン写真の結果、順調に回復していることがわかり、ついに全体練習への参加が許可された。ただ、完全に治ったわけではないというが、握力は20以上に上がり、テーピングをしていれば問題なくプレーできる状態まで戻っていた。

そして7月18日、堀江はついに、日本代表に復帰した。桜のジャージーに袖を通すのは、実に昨年6月21日のイタリア代表戦以来となった。HOとしてスクラムをリードし、ラインアウトのスローイングも安定していた。接点でも力強さを見せ、「アタック・シェイプ」ではSHからパスを受けた後、相手ディフェンスを引きつけてSOにパスを送るなど相変わらずのスキルの高さも証明した。

◇「100%はまだだが、今のベストは出せました!」

――昨年6月以来の日本代表でした。

堀江:良かったとは思います。今のベストは出せましたが、100%はまだです。6月の合宿の成果は出ていると思いますよ。それ以外にもグラウンドの中でこうしたい、ああしたいと選手同士で話をすることができたのが良かったです。

――W杯で戦う、南アフリカを想定して、相手の裏に蹴ってボールインプレーを増やすこともやっていましたね。

堀江:全部が全部良かったわけじゃないですが、悪かったわけじゃない。まだ初戦なので、これから問題点を解決していきたい。

――スクラムはプレッシャーをかけていました。

堀江:前に足を運べてプレッシャーをかけてと対処できたと思います。最初、何本か、相手にレフリーの手が挙がったところがあったけど、その後は、こっちにレフリーの手が挙がることが多かった。相手は引いたり落としたりしていましたが、日本代表の方が上手く組めていたと思います。

――後半は相手に攻められる時間もありました。

堀江:試合では自分たちの流れと相手の流れがあると思いますが、相手の流れの時に我慢できていました。ただ、アタックでは何本か取れるところがあったのに、もったいないというのがありましたね。心の余裕がありすぎたのかもしれない。前半最後のFB五郎丸(歩/)のキックとか、後半のトモ(LOトンプソン ルーク/近鉄)さんのクイックリスタートからのパスとかチャレンジし過ぎたのかもしれない。常にトライする気持ちがあるのはいいことだと思います。

――日本代表の指揮官であるエディ-・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)はもっとボール動かしたいと?

堀江:もっとボールを動かしたかったけど、選手間で意思統一できていなかったかもしれない。ミスが起きたり、テンポが合わなかったりする部分が多々あった。ただ、ディフェンスもアタックも我慢するところで我慢できました。このメンバーで初戦としてはいい方かなと思いますし、これくらいの戦い方ができるのはチームの底上げができているのかなと思います。ここに海外組が帰って来たら、どんどん変わっていくと思います。

ジョーンズHCも名指して「良かった」と称えた堀江は、PNCの残り3試合くらい戦えば「ゲーム勘が戻ってくると思います」とより自信を深めていた。試合後も、沢木敬介コーチングコーティネーターと「アタック・シェイプ」の動きを確認する姿があった。

「エディー・ジャパン」にW杯の悔しさを知る、頼れる男が帰ってきた。そんなカナダ代表戦だった。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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