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【英会話】1.1 kilos って言ったら、微妙な顔された。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、たまにですが、え? これってちゃんと伝わってない言い方なの? と驚くことがあります。日本語の直訳でもないし、きちんとイメージから英語を作っているのに、最後の詰めが甘いってやつです。この間も普通に正しいと思って使った単語がそれにあたると知り、びっくり。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むとより自然な英語を得られるお得なエッセイです。

近くに公園があってね、その公園に1.1キロのコースがあるんだ。

 6月だというのに東京はもう真夏日を記録してしまいました。一体全体どうなってるんでしょうねぇ、もうこの国には長い冬と長い夏しかなくなってしまってるんじゃないかと心配になります。まぁ、夏しかないエヴァの世界にならないだけましなのかもしれませんが。

 エヴァはともかく、あっという間に暑くなっちゃったんで、運動するのも大変だねぇという話を、English man の友人のRichと話したんです。二人とも出不精なんで、こう暑いと運動する場所に行くのも億劫になる。フットサルコートやスポーツクラブに行くだけで汗だくですからね。どうしてるの? という話になった。

 幸いなことに私の住んでるマンションの近くには公園があって、そこに1周1.1キロのランニングコースがあるんです。しかも100メートルごとの距離表示板つき。今日は100メートルを何秒で走ろう! ってその日の体調に合わせて走れる。
 それを英語にしようと思って、イメージしながらこう言ってみる。

There is a park near my flat. (おれのマンションの近くには公園があって)

 ここまでは、そんなに問題にならない。問題は、そこに1周1.1キロのランニングコースがある です。これを日本語に引きずられると自然な英語にならない。1周とか、ランニングコースとかにこだわるとドツボにハマる。そこで、考えるべきなのは伝えたいことの核です。それは、コースが1.1キロだ ってことなので、こうします。

The path around the park is 1.1 kilos.

へへ~ん、どうだ自然な英語だろう! とドヤ顔して、なんで、運動するのにそんなに困ってないよ と続けようとしたら、Richは微妙な顔。伝わらなくはないけど、なに手間省いてんだろうって感じがするよと言って来た。しかも、知的な徳さんが言うとなんか残念 と追撃。なかなかいい感じのEnglish ironyです。ちょっと悔しいんで、知的なおれは自分で気づくから待て と言って、長考に入る。

 さて、みなさん、わたしの詰めの甘いところ、お判りになるでしょうか?

 長考に入ったものの、いったいどこがおかしいか、ちょっと思いつかない。どこなんだ? と考えていたら、Richが なに手間省いてんだろう って言ったことに気づいた。この文の中で手間を省いているのは一か所しかない。

 kilo が、kilometre ってこと? 

というと、その通りとRichはThumbs up。よく気づいたねと褒められました。

 ああ、やっぱり英語は相手に解釈を任せずに余白なくきちんと伝えないといけないんだなぁ、と感心していたんですが、Richがさらに一言。
 まぁ、おれたちもkilo って使うんだよ。でも、重さしかあらわさないんだ。
ですって。
 ちょっと私はびっくり。略語としてkilo がOKなら、kilometreもkilogramme も意味して良さそうじゃないですか、最近なら、kilobyte なんてのもある。それがなんで、重さだけ? そんなことあんの? と今度はこっちが微妙な顔。

 でも、Oxford learner's dictionaries に当たってみると、確かにkilo は、a unit for measuring weight としかありません。distance もcomputer memory or data もない。Word Origin を読むと、19世紀末にフランスから、kilogramme, kilomètre の略語として入って来たんだけど、いつの間にかkilogramme(重さ)しかあらわさなくなったようです。略語の曖昧さも英語は許さないんですねぇ。

 ちなみに、Native English Speakerでも、kilo をkilometre の意味で使う人もいるようですが、明らかに間違いだそうです。この辺りでお里が知れるのだとか。Richの知的なわたしが言うとなんか残念 というのはそういう意味だったみたいです。いや、むしろちょうどいいのかもしれませんが。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 あ、そういえば、本当はどういうべきかを一文で書いてませんでした。

The path around the park is 1.1 kilometres.

です。最後のs をお忘れなく。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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