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【英会話】From then on, I read って言ったら、首を振られた。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、直観的にイメージから英語を話せるようになっても、困るときがあります。イメージから英語を作ってはいるんですが、もう一歩踏み込みが甘い時があるんです。それが、普段使わない言い回しだと出ちゃう。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は「そのときから」を上手く英語に出来るお得なエッセイです。

そのときから、何度も読んでるよ

 私は子供のころからニブい子でして、雨の日に朝顔に水やりしたり、二つ年下の妹に九九を憶えるのを追い越されたりというぐらいニブい子でした。いま、でした、って書きましたけど、現在もまあまあニブい。
 この間も、マンションの玄関で幼稚園ぐらいの女の子にドアを開けてもらったんですが、ありがとうございます と言っちゃった。女の子はきょとんと私を見上げて不思議そうな顔。いい大人から敬語を使われたんですから、まぁ、当然です。
 こういうのはいつまで経っても治らないんで、諦めてるんですが、ニブさが功を奏すこともある。実は、わたし、君は聞き上手だね、聞き上手ね って言われるんです。

 まぁ、友人からもパートナーからも言われるんで、実際そうなんでしょうけど、なんてことはないんです。単純にニブいから相手の話をじっと聞くしかない。ぱっと相手の話をまとめて答えを出す、なんて芸当ができないだけの話でして。よく相手の悩み事を聞いてそれに適切な答えをすぐに出せる人がいますが、すごいなぁ~と思っちゃう。
 そういうわけで、相手の話をじっと聞くというのは昔からなんですが、若いころそれが急にできなくなった時期がありました。相手の話を聞いているうちに、茶々を入れたりしちゃう。きちんと相手の話をまとめたり、解決法を提示したりするわけでもないんで性質(たち)が悪い。あれ? おれどうしたのかな? なんか変 と思っていた時に、偶然、半村良の「雨やどり」という本を手に取った。
 めぐりあわせってのはあるものでして、読んでみるとそのなかにこういう一節があった。

「そういう時(相談されたとき)、下らない、と思わないのが秘訣と言えば秘訣であった」

 ああ、これかと思いましてね。わたしじっと話を聞いてる時って、それだけじゃなくてエポケー(判断停止)してたんです。それが調子こいて人様をああだこうだと判断してたみたいで、反省。同時に半村良は私の大好きな作家の一人になりました。それまでも好きだったんだけど、かなりフェイヴァリットな作家になった。半村良のどの本読んでも、相手を判断しない、相手の立場ありきの態度が通奏低音になっていて、大切なことを思い出させてくれるんですよねぇ。なので、ちょっと自分のフォームが歪んでるな、と思ったときに繰り返して読んでいます。

 なんでこんな話を始めたかというと、この間、English man の友人のRichから人の話を聞く時になにか心がけていることあるの? って訊(き)かれたんです。なので、こういう話をして、締めに、

Hanmura Ryo's book reminded me of "Epoché", from then on, I read his books a lot of times. (半村良の本はエポケーを思い出させてくれたんだ、そのときから、何度も彼の本を読んでるよ)

って伝えたんですね、そしたらそれまでなるほどねぇ~って感心して聞いていたRichが、突然、首を振る。

 みなさん、わたしの英語のどこがおかしいかお気づきでしょうか?

 問題はfrom then on にあります。意味としては、そのときから で、用法としては、何か特別な出来事があって、その影響で起こった出来事・新たな状況を書くときに使う言葉なんで、私としてはぴったりと思って使ったんですが、出来事・新たな状況 というのが曲者。それまでも半村良を読んでるんで、新たな状況ってわけじゃないんです。

 なので、ここは素直に、その時以来ずっと ということで、since then を使った方がいい。Richに訊くと、since then は特別な出来事が起こった後の変化をあらわすんで、むしろこっちの方がぴったりくるそうです(参照資料weblio)。ちょっと踏み込みが甘くてうまくいきませんでした。残念。
 ということで、自然な言い回しとしては、

Hanmura Ryo's book reminded me of "Epoché" and I've read his books a lot of times since then.

です。参考にしてください。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 おっと、from then on を使った自然な言い回しをお伝えするのを忘れていました。変化ではなく、その影響で起こった出来事・新たな状況を置けばいいわけですから、

After I moved to the city, I made new friends and, from then on, my life became exciting. (その街に引っ越した後、新しい友人が出来て、そのときから、人生は充実したものになった)

 というのはいかがでしょうか? 

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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