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【英会話】Thanks to play って言ったら、ちょっと微妙な顔された。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、普通に使っていた英語がちょっと違和感があるねぇ、と言われることがたまにあります。うん、それでも伝わるけど、Sounds a bit strange (ちょっと耳触りがよくないんだ)ってやつです。このあいだも、よく使っていた言い回しで指摘されて、なるほどねぇ、と思いました。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むとより自然な英語をふたつ得られるお得なエッセイです。

遊びのおかげで

 English man の友人のRichとはもう15、6年の付き合いになります。仕事仲間から始まった縁ですが、まぁ、気が合ったというか、football だの本だの哲学だのと興味の方向が似ていたおかげか、愉しい付き合いが続いています。もちろん今でもいっしょに仕事はしてるんですが、仕事以外の話もよくする。ミーティングでも、仕事の話が終わった後の雑談の方が長かったりしちゃうんです。
 そのなかで、よく話すのは現代思想(哲学)の話です。そんな堅い話をなぜ? と思われるかもしれませんが、哲学は第一の学(プローテー・フィロソフィア)と言われるだけあって、教育を受けたNative English Speaker(Richは分子生物学のマスターを持っています)はかなりの確率で勉強しているんですね。でもって、わたしはというと、哲学者の中村雄二郎の弟子でして、まぁ、そのあたりで話が合うんです。

 で、ちょっと前のことですが、仕事の話が終わった後「遊び」の話になりました。Rich、ビデオゲームのマニアなんですが、この間、ゲームで遊んでばかりいて! って誰かさんに言われたらしい。ちょっと悔しかったんでしょうね、遊びって言うと軽んじられるけど、重要だよねと言って来た。

 私もすぐにそれに同意。遊びが重要という共通認識にはすぐ至ったんですが、Richにはめずらしく、その理由がうまく出てこない。私はその理由を言語化できていたんで、いつもと違って、わたしがにやりとする番です。とはいっても、わたし独力じゃありません。師匠の「術語集」という本の「遊び」の項目を参考にしてるんで、ちょっとチートです。

 で、わたしが、ニヤリとしながらなんと言ったかというと、

Thanks to play, we can think outside the box. (遊びのおかげで、既成の枠組みを超えて考えることができるんだよ)

というと、Rich、そうだ! そうだ! 遊びは、新鮮なものの見方を得られるんだ、それは人を活性化するんだ。だから遊びは必要なんだよ! と強くうなずく。
 同意を得られて、わたしは心の中で拳を握って、やった! Native English Speakerが言語化できないことを英語で言語化できた と己惚れる。でも、残念ながら長くは続かない。

 ふと我に返ったRichが、今なんて言った? って訊(き)いてきたんです。私、能天気なものだから、おっ、おれの言ったことをメモしてどこかで使うつもりだなと思って、ドヤ顔で同じことを言うとRich、ちょっと微妙な顔。それでもいいけど、ちょっと変かな とのたまう。
 みなさん、わたしの英語、どこがちょっと変かお判りになるでしょうか?

 問題は、Thanks to play にあります。もちろん、意味は通じますし使っても全然OKなんですが、「遊び」と「枠組みを超えて考える」ということのつながりが曖昧だし、「遊び」に感謝するというのもしっくりこないので、ちょっと不自然なんですね。
 Richいわく、thanks to ~ は、~の部分に感謝したい人や物、状況をいれて、それとはっきりつながった成果を続けると自然なのだそうです。たとえば、

Thanks to my wife agreeing to take care of the kids, I was able to hang out with my friends. (子どもたちの面倒を見ることに妻が同意してくれたおかげで、友達とくだをまけたよ)

みたいに、感謝の意があって、そこから出てくる成果を続ける(くだをまくのが成果かどうは措(お)いときますが)。

 この文だとたしかに、感謝したい気持ははっきりするし、つながりは明確です。Thanks to ~ を使うときは、感謝の対象+はっきりつながった成果 を意識して使ってください。より自然な英語になりますよ。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 おっと、わたしがどういうべきだったかを書いていませんでした。
 実は、ものごとを客観的に伝えるときNative English Speakerが好む方法があります。それは、モノを主語にすること。今回の場合であれば、

Play helps us think outside the box. (遊びは私たちが既成の枠組みを超えて考えることを助ける)

とすると、Native English Speakerっぽい自然な英語になります。仕事のプレゼンなんかで、客観的な事実を伝えたいときに使ってください。

 あ、でも、自分の主張を事実めかして使っちゃダメですよ。たとえば、

Playing video games for 5 hours every day helps us mentally and physically. (毎日5時間ゲームをやると、心と体を助けるんだよ)

とか。Richは言ってない筈ですが。悪用厳禁です。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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