Yahoo!ニュース

自由奔放なヒロインを演じ終えて。「今後も映画を作りながら、お芝居もやっていきたい」

水上賢治映画ライター
「私を判ってくれない」で主演を務めた平岡亜紀  筆者撮影

 「私を判ってくれない」は、小さな町から生まれた映画だ。

 鹿児島県長島町。鹿児島県の最北端に位置するこの町では、町の活性化を目指すプロジェクトで、貫地谷しほりと山田真歩とが共演した「夕陽のあと」が制作され2019年に公開されている。

 今回の「私を判ってくれない」は、地元の声を受けての第二弾。新型コロナウイルスによる2度の延期を乗り越えて完成した。

 町の協力のもと作られた作品は、島に戻ってきた城子と島から出たことのない由記乃という対照的だが実は似ている二人のヒロインの心模様が描かれる。

 そして、互いに周囲から社会から「判ってもらえない」城子と由記乃は、この社会に「生きづらさ」を抱えている女性たちの代弁者。今を生きる女性の切実な思いが伝わってくる。

 主人公のひとり、城子を演じた平岡亜紀に訊く。

「私を判ってくれない」で主演を務めた平岡亜紀  筆者撮影
「私を判ってくれない」で主演を務めた平岡亜紀  筆者撮影

これからも映画を作りながら、お芝居もやっていけたら

 ここまで4回にわたって作品について訊いてきたが今回は番外編。

 作品から離れて、彼女自身についての話を訊いていく。

 平岡は俳優として活動する一方で、映画監督としても現在は活躍中。

 ただ、プロフィールを見ると、はじめはダンサーを目指していたという。

 そのあたりの経緯を少し話してもらった。

「高校生のころは、ほんとうにダンサーになるのが夢でした。

 ダンスにめちゃめちゃはまっていて、バックダンサーとかでもいいのでなれればと思っていました。

 それで思い立って短期のダンス留学でニューヨークに行きました。

 そのダンスを学ぶ一環でブロードウェイのミュージカルを見に行ったのですが、ダンスもめちゃくちゃすごいんですけど、舞台美術や衣装など、なにからなにまですばらしい。

 それを見て、『踊りながらこんなかわいい衣装を着られて、こんな面白いストーリーの中でお芝居できるの、めちゃめちゃいいじゃん』と思って。

 もうそこからはミュージカルの虜状態で。ミュージカルをあちこち見に行くようになりました。

 で、大学に入学したときにはダンスだけではなくてミュージカルに出たいという風に意識が変わって、お芝居も始めるようになりました。

 ただ、すぐ壁にぶち当たったといいますか。

 当然と言えば当然なんですけど、ミュージカルは歌唱力が必要で。

 頑張ってボイストレーニングに1年ぐらい通ったんですけど、わたしは歌のセンスがない。

 ダンスはそれなりのレベルにあったと思うんですけど、それでもトップのキャストになる実力には到底及ばない。

 アンサンブル、大勢のうちのひとりぐらいにやっと入れるぐらいでした。

 なので、『これはちょっとミュージカル難しいかな』と思い始めたころに、お芝居を習っていた先生が映画畑の人で、『ミュージカルを見に行くのももちろん大事だけど、お芝居やりたいんだったら映画や映像系の作品も見ないと。それから本も読まないと』とアドバイスをしてくれたんです。

 18歳とか19歳ぐらいのときです。それで素直に意見を受け容れて、映画を見始めたら、今度は映画にはまっちゃって。

 ダンスよりも、ミュージカルよりも『映画だ』と気持ちが傾いていきました。

 それで気づいたらお芝居とともに監督もやり始めていました。

 これからも映画を作りながら、お芝居もやっていけたらなと思っています」

「私を判ってくれない」より
「私を判ってくれない」より

『私を判ってくれない』で固まった監督として、俳優としてやっていく意思

 今回の『私を判ってくれない』も今後の自身の創作にとって大きな経験になったそうだ。

「長編映画で主演を務めることは今回が初めてのことでした。

 それで、『私を判ってくれない』の撮影時は、ちょっととりかかっていた作品もあったんですけど、やはり並行して進めるのは無理で、お芝居に全精力を注ぐ形になりました。

 城子を演じることにわたしの全エネルギーを傾けて、全神経を集中したんです。

 すると、やはりお芝居って改めて奥深くて、なによりも楽しい。

 もともと監督をやり始めたのも、お芝居がやりたくて始めたところがあるんです。

 というのも、お芝居をしたいのだけれど、なかなかオーディションに行っても受からない。出演する機会に恵まれない。

 だから、もう自分で作って、それに出ちゃおう!みたいな感じで始めたところがある。

 ここのところ作る方に意識やエネルギーを傾けることが続いていた。お芝居に注ぐ熱量が下がるとともに、お芝居への興味が下がっていたところがあった。

 でも、『私を判ってくれない』でお芝居に集中できたことで、改めてその楽しさや喜びに気づかせてくれた。演技もちゃんとやっていきたいと思いました。

 いまは自分の作品を作りながら、出演も兼ねるようなスタイルになっちゃってるんですけど、またどんどんいろいろな監督の現場に芝居だけで入りたいとの思いを強くしました。

 そういう意味で、監督としても、俳優としてもやっていく意思が『私を判ってくれない』で固まりました」

「私を判ってくれない」より
「私を判ってくれない」より

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第一回はこちら】

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第二回はこちら】

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第三回はこちら】

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第四回はこちら】

「私を判ってくれない」ポスタービジュアル
「私を判ってくれない」ポスタービジュアル

「私を判ってくれない」

監督・脚本・編集: 近藤有希 水落拓平

出演: 平岡亜紀 花島希美 鈴木卓爾 今井隆文 西元麻子 ほか

横浜シネマリンにて1/20(金)まで公開

メインビジュアル及び場面写真はすべて(C) 私を判ってくれない

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

水上賢治の最近の記事