「竹島の日」に抗議した与党の李在明候補、沈黙した野党の尹錫悦候補 3月1日の「独立運動の日」は?
昨日の「竹島の日」は竹島を管轄している島根県で恒例の記念行事が行われたが、「コロナ」感染の影響もあって小規模で行われていた。また政府も閣僚ではなく、政務官を派遣するなど今年も例年と変わらぬ対応だった。それでも韓国は過剰に反応した。
韓国の外交部は非難声明を出しただけでなく、李相烈(イ・サンヨル)アジア太平洋局長は熊谷直樹総括公使を外交部庁舎に呼んで直々抗議していた。ソウルの日本大使館前では小規模ながら集会も、記者会見もあった。主催した市民団体の代表らが横断幕を広げ、「竹島の日」を廃止するよう日本政府に求めていた。
(参考資料:日本が「不法占拠」とみなす知られざる韓国の竹島(独島)「実効支配」の現況)
また、島根県と島の帰属を競っている慶尚北道では知事が島根県の式典を批判する声明を出す一方、道庁で官民合同会議を開き、独島(竹島の韓国名)委員会の鄭在貞(チョン・ジェジョン)委員長が道に島の実効支配を強固にする政策を推進するよう提言していた。韓国の本土から島への中継地となっている鬱陵島でも「竹島の日」制定撤回を求めた集会が開かれていた。
韓国のこうした一連の反応もこれまた「恒例行事」であり、慣例に従ったパフォーマンスでもある。しかし、これまでと異なるのはこの日は大統領選挙期間中ということもあって与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補がいち早く反応したことだ。
李候補は昨日、フェイスブックを通じて日本の領有権主張は「歴史歪曲に基づいた厳然たる挑発であり、帝国主義侵略戦争に伴う占領地の権利主張だ」とか、「侵略国の地位を回復しようとする迷妄に縛られた時代錯誤的行為だ」と非難したうえで大統領になれば、「竹島の日」に対抗して2010年に宣布した「独島の日」(10月25日)を「国家記念日に指定することを検討する」と表明していた。
(参考資料:「竹島の日」に対抗して制定された「独島の日」 「奪還」vs「守護」)
城南市長時代に竹島に上陸したことのある李候補は昨年、日本政府が金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官の竹島上陸(11月16日)に抗議したことについて「過度の内政干渉である」と批判し、島を警護している警備隊員らとオンラインで通話し、「独島は領土守護の象徴なのでしっかり守ってもらいらい」と激励していた。
しかし、李候補の最大のライバルである野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソッキョル)候補は領土や主権問題では「堂々たる立場を堅持する」ことを公約に掲げているものの李候補とは異なり、金警察庁長官の上陸の時と同様に今回も何の反応も示していない。
その理由については2月4日の韓国のメディア(韓国日報)とのインタビューで明らかにしている。尹候補は以下のように語っていた。
「反日感情を国内政治に活用すべきではない。独島はどっちみち我々が実効支配しているわけだから」
「ポスト文在寅(ムン・ジェイン)」を決める大統領選挙(投票日3月9日)まで2週間と迫ったが、世論調査では尹候補が終始、李候補をリードしている。大統領選は公示(2月15日)直前の世論調査で支持率でリードしている候補が当選しているが、ジンクスのとおりならば尹候補が逃げ切る公算が極めて高い。
李候補が形勢を逆転するには進歩層の票を固め、中道さらには慶尚道を中心とした保守層を切り崩すほかない。その意味では対日問題でナショナリズムを掻き立てて、日本に融和的な尹候補との差別化を浮き彫りにさせることも一つの有効な手段と考えているのかもしれない。
投票日8日前の3月1日は韓国の独立運動記念日である。李候補は2年連続で日本に対して厳しいメッセージを発信してきた。
一昨年は「親日残滓を清算すること、過酷だった歴史的事実を記録保存すること、虐げられた過去を物心両面で慰労することはこれ以上自制すべきでもないし、自制してはならない」と発言していた。また、昨年は「歪曲された歴史は歪曲された未来を生むことになる。(知事として)京畿道は徹底的に準備したうえで今年を親日清算元年として速度を上げて、歴史を正していく」と述べていた。
今年もおそらくメッセージを出すものとみられるが、政府自民党内に待望論のある尹候補が沈黙を破り、対応するのか、日本にとっては最も気掛かりである。