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かっぱ寿司の食べ放題「食べホー」を読み解くための3つの考察

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

かっぱ寿司で4回目の食べ放題

<かっぱ寿司、全店で食べ放題実施へ 試験実施では大人気>でも紹介されているように、かっぱ寿司が本日2017年11月1日から22日にかけて食べ放題をまた実施するということで、大きな話題となっています。

かっぱ寿司ではこれまでに、以下のように食べ放題を実施してきました。

  • 1回目「食べ放題」

2017年6月13日~7月14日 平日14時~17時

制限時間70分、男性1580円+税、女性1380円+税、ドリンクバー付き

21店舗で実施

  • 2回目「新・食べ放題」

2017年8月28日~9月8日 平日14時~17時、Web予約限定

制限時間60分、男性1580円+税、女性1380円+税、ドリンクバー付き

36店舗で実施

  • 3回目「新・食べ放題」

2017年9月25日~10月6日 平日14時~17時、Web予約限定

制限時間60分、男性1580円+税、女性1380円+税、ドリンクバー付き

36店舗で実施

4回目の内容

1回目は初めてだったこともあり、実施店舗も少なく、かなり手探りで始められた印象がありましたが、多くのメディアで紹介されて11万人以上が訪れました。

反応も好意的で実施の要望も強かったので、1ヶ月強の期間をおいてから、2回目が実施されました。

2回目は「新・食べ放題」と名称も改め、制限時間を短くして回転率を上げ、Web予約専用にして混乱を抑え、実施店舗を増やすに至ったのです。

3回目は2回目と実施店舗が異なるものの、同じ店舗数とレギュレーションで実施し、手応えを掴みました。

そして4回目となる今回は以下の内容で実施されています。

  • 4回目「食べホー」

2017年11月1日~22日 平日14時~17時、Web予約限定

制限時間60分、男性1580円+税、女性1380円+税、ドリンクバー付き

全店舗で実施

変わったのは名称と実施店舗ですが、他についてはこれまでと同じです。

メニューは以下の通り。

  • 定番握り 29種
  • チーズ・マヨ 8種
  • 軍艦 15種
  • 巻物 7種
  • 肉寿司2種
  • 一品物 7種
  • お椀・麺 8種
  • デザート 6種

当初よりも一品物、お椀・麺、デザートは少なくなっていますが、寿司は最初とあまり変わっておらず、ウニやイクラなども、まだ含まれています。

80種を超えるフードがあり、かつ、ドリンクバーも付いているのであれば、充実していると言えるでしょう。

真意や裏側

既に大きな話題となっていますが、かっぱ寿司は何を考えて4回目を実施しているのでしょうか。前回までと異なる以下の点から、かっぱ寿司の真意や実施の裏側について考察します。

  • 全店舗で実施
  • 名称の変更
  • 攻略七か条の作成

全店舗で実施

全店舗で実施することには、2つの意味があります。それは、オペレーションの完成と定番化です。

食べ放題は、定められたメニューであればいくら食べても定額であったり、制限時間があったりと、非食べ放題とオペレーションが異なります。

食べ放題に対応するために、サービススタッフを教育したり、システムを変更したりと新たな労力が必要です。

加えて、かっぱ寿司の食べ放題実施時間帯には、食べ放題と非食べ放題が混在するので、よりオペレーションの難易度も高まるでしょう。

通常オペレーションの延長線上と考え、あまり深く考えずにブッフェを行うと、<デザートブッフェの炎上を通して、店と客に理解してもらいたい、何よりも重要な1つのこと>でも取り上げたような問題が発生する場合もあります。

かっぱ寿司の食べ放題実施店舗数は、1回目では21店舗、2回目では36店舗と倍近くになり、3回目では同じ36店舗ながらも、異なる店舗で実施し、徐々に対象を広げていきました。

そして今回は一気に350ほどの全店舗で実施となるまでに至っています。

これは、オペレーションの完成度を徐々に高めていき、ようやく全店舗に対応する仕組みが完成したと考えてよいでしょう。

また、これまで21店舗や36店舗だけで実施し、それだけで大きな話題となっていました。PRという観点からすれば、これまでと同じように特定の店舗でだけ実施すれば、よかったはずです。

それをあえて全店舗で実施することに至ったのは、中長期的にこの食べ放題をかっぱ寿司のひとつの代名詞にしようという狙いがみえます。

名称の変更

名称の変遷にも注目するべきです。1回目は「食べ放題」、2回目からは「新・食べ放題」となり、今回の4回目で「食べホー」となりました。

これは何を意味するのでしょうか。

1回目は食べ放題を行うことだけが目的であったので単純に「食べ放題」としていましたが、その反響の大きさや今後への期待から「新・食べ放題」と次のステージに進めたように感じられます。

今回は「食べホー」と命名されましたが、「食べホー」という表現は全く一般的ではありません。

それでも「食べホー」が用いられたのは、「食べ放題」という言葉によいイメージがないからではないでしょうか。

かっぱ寿司は、2016年10月からリブランディングを進めており、品質向上に努めています。それだけに、注力するプロモーションの名称に、安かろう悪かろうというイメージのある「食べ放題」を使い続けるのは得策ではありません。

全店舗を挙げて行う今回のタイミングで、独自の名称を与えたのは、メディアへの露出を考えても成功であると考えられます。

攻略七か条の作成

「かっぱの食ベホー攻略 七カ条」が作成され、公式サイトにも掲載されています。

一、多人数でいろいろな種類を食べるべし!

二、事前にメニューを把握しておくべし!

三、血糖値の上がりにくい枝豆や茶碗蒸しから食べるべし!

四、席に着いた瞬間、食べたいメニューからオーダーすべし!

五、時間短縮のため、廻ってきたお寿司から食べたいネタをとるべし!

六、出来るだけ水分は控えるべし!

七、デザートで最後の追い込みをすべし!

出典:かっぱ寿司

三と四と五が互いにそれぞれ矛盾していることは気になりますが、この七カ条は「食べホー」をより楽しめるように考案されたという意味で、とても価値があるものです。

一とニで言及されていることにはとても賛同します。

「<マツコの知らない世界」のケーキバイキングでやってはならない5つのこと>などでも書きましたが、かっぱ寿司の「食べホー」もホテルのブッフェと同じで、ただ単価の高そうないものだけを食べるのは、あまり勧められません。本当に安く食べたいのであれば、スーパーでマグロでもウニでも買ってきて食べるのが一番コストパフォーマンスは高いでしょう。

ブッフェのもとになったスモーガスボードでも、特定のものだけを食べることは推奨されていません。

訪れた飲食店でしかできない食の体験をすることが望ましいです。かっぱ寿司の場合には、せっかく80種類ものメニューが用意されているので、少しずつたくさんの種類を楽しんだ方がよいでしょう。これまで食べたことがなかったメニューを知ることができるなど、新たな発見もできます。

四と五にさり気なく記載されていますが、寿司の食べ放題は通常、オーダー方式が一般的なので、着席してからすぐに食べ始めることができません。しかし、「食べホー」は回転寿司なので着席した瞬間からすぐ目の前に寿司が流れており、すぐに食べられることは利点です。

三、七で示されている食べ方にも賛成します。軽いものから食べ始めて、最後に甘いデザートを食べるのは、フランス料理であってもイタリア料理であっても、日本料理であっても中国料理であっても、コース料理であれば必ず同じ流れであるからです。

「食べホー」に限らず、一般的なブッフェやアラカルトなど、客が自由に食べるスタイルにおいても、人である以上は体に負担をかけず、よりおいしく食べる方法は同じとなります。

このように七か条はなかなか興味深いですが、これを考案したのは、「大食い」「元をとる」といった「食べ放題」から脱却しようとしているからではないでしょうか。

「食べホー」による「食べホー」以外への影響

「食べホー」は2回目以降のシステムを踏襲しており、そういった意味では安定感があり、前回と同様に実施期間中は話題をさらうことになりそうです。

ただ、実はこれまでのところ、2000円以下の手頃な値段で寿司の食べ放題で、成功したところはありません。その理由は、この値段で食べ放題を実施したのでは、日本人の舌を満足させるだけのおいしいネタを提供できないからです。

しかし、かっぱ寿司の「食べホー」は平日14時から17時に限定的に実施されるだけであり、全体の売上や利益に占める割合は大きくないだけに、事情は異なります。

おいしいお寿司をお腹いっぱい食べて欲しい。そんな想いをロゴに込めて、かっぱ寿司は新しく生まれ変わりました。

出典:かっぱ寿司

このように、かっぱ寿司の想いが述べられていますが、「食べホー」で注目を浴びたかっぱ寿司に「食べホー」以外でも人々が訪れるのか、「食べホー」でかっぱ寿司のおいしさを再認識した人々が「食べホー」以外の時に、これまでよりも多くの寿司を食べるようになるのでしょうか。

かっぱ寿司の命運は「食べホー」が及ぼす「食べホー」以外への影響にかかっています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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