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AKB48の新センターでドラマにも主演。加入2年の完璧アイドル・佐藤綺星の躍進の裏側

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)ドラマ「星屑テレパス」製作委員会

AKB48が7月17日に発売するシングル『恋 詰んじゃった』でセンターに立つ佐藤綺星(あいり)。ドラマ『星屑テレパス』でも初演技で主演を務めている。2年前に加入3ヵ月で選抜に選ばれて以来の急速な躍進。スター性やパフォーマンス力は完璧さを感じさせるが、本人の中では期待に掛かる葛藤を乗り越えてきているようだ。スポットライトを浴びる渦中の心境を聞いた。

グループに貢献したくて演技もやろうと

――宇宙を目指して、ロケット作りに取り組む女子高生たちを描く『星屑テレパス』に主演されています。AKB48に入った頃から、演技にも興味があったんですか?

佐藤 何でも挑戦したいとは思っていましたけど、演技のほうは同期の山﨑空ちゃんが最初からやっていて。私にはあまりお話も来なかったし、自分でも自信がなくて「やりたい」とは言っていませんでした。

――このドラマでは、オーディションを受けたんですよね?

佐藤 20歳になるところで、3月に正規メンバーに昇格させていただいたこともあって、AKB48に貢献したい想いが強くなったんです。小栗有以さんみたいな活躍をしたくて、演技にも挑戦してみようという気持ちで、オーディションを受けることにしました。

――自分でドラマを観たりはしていました?

佐藤 たくさん観ています。私は幼い頃から小説が好きで『掟上今日子の備忘録』を読んでいて、ドラマ化されたのがきっかけでした。それから、いろいろなドラマを観るようになったんです。大人になってきたら『アンナチュラル』とか難しいドラマも観て、再放送でしたけど『SPEC』も好きでした。

――青春ものよりミステリー系が好みだったんですか?

佐藤 流行りについていけなくて(笑)、みんなが「これを観てる」と言っていたドラマは、あまり観ていませんでした。

ヒロイン性があると言っていただけて

――『星屑テレパス』のオーディションでは、メイン4人の役をひと通りやったとのこと。その中でも、主役の海果にハマる感触があったんですか?

佐藤 性格が私と一番似ているのは、しっかりした遥乃ちゃんか元気なユウちゃんで、やれるならどっちかかなと思っていたんです。でも、オーディションで演じてみたら、意外と海果ちゃんがしっくりきました。芯の強さがすごくわかって、好きになりました。

――海果役に選ばれた理由を聞いたそうですね。何て言われました?

佐藤 私は演技経験がまったくなかったんですけど、海果ちゃんも自信がない子で、うぶな感じがハマりそう、ということでした。あと、ヒロイン性があると言っていただけて、すごく嬉しかったです。

自分の積極的な性格とは正反対の役です

――ただ、極度の上がり症で友だちができない海果は、研究生時代から明るく堂々としていた綺星さんと、キャラクター的には真逆ではないですか?

佐藤 そうですね。私は友だちが大好きで、お話もよくするし、積極的に前に行くタイプなので。性格は正反対だと思います。私は逆に、海果ちゃんみたいな子に話し掛けに行くのが好きで、一番仲良くなっていました。

――スピーチをするのにお腹が痛くなるような、上がり症でもないと。

佐藤 はい。学校では、生徒会や学級委員をやっていたので。

――生徒会長だったんですか?

佐藤 小学生の頃は会長をやったり、書記をやったり。推薦してもらって、人に頼られるのは好きで、期待に応えたい気持ちは大きかったです。

かわいくなりがちなのを抑えています

――正反対の海果を演じるうえでは、難しいこともありました?

佐藤 はい。だから、人としゃべるのが苦手という友だちに、話を聞いたりしました。海果の気持ちを理解したくて。私はファンの方にも言っていただけるんですけど、人とお話しするときに、じっくり目を見るクセがあるんです。友だちは「目を見られないし、誰かが話していても、そこに入ろうと思わない」と言うので、そうなんだと。そこは演技に役立ちました。

――海果の言葉に詰まる話し方も、意識しているんですか?

佐藤 しています。私は声が結構高くなりますけど、海果ちゃんが過去のことを思い出したり、イヤなことを感じたら、話していて抑揚を付けたり。テンションがバッと上がったりはしなくて、ずっと下のほうで一定で話すことは、稽古から気をつけていました。監督にも「かわいくなりがちだから抑えよう」と言われていて、素が出ないように意識しています。

福原遥さんのドラマを観て意識が変わって

――稽古で初めて演技に触れて、思うようにいかないことはありませんでした?

佐藤 すっごく悩みました。私はステージで等身大で話したり、パフォーマンスするのは得意なほうだと思うんです。でも、海果ちゃんになり切るのは本当に難しくて、目線や声色にも気をつかっています。稽古のときはやっぱり、かわいらしさが残ってしまうと何度も言われて。海果ちゃんをしっかり理解して、1人の人間として考えたら、そうはならないと、たくさん教わりました。

――撮影に入るまでには、克服したんですか?

佐藤 海果ちゃんみたいな役を演じられている役者さんの、ドラマを観たりしました。プロデューサーさんに『ゆるキャン△』を教えていただいて。福原遥さんもかわいらしい声をされていますよね。でも、あの役のときは落ち着いている感じで、観てから私の意識もガラッと変わって、演じやすくなりました。

みんなと友だちになれても特別な人が少なくて

――海果が言う「居場所を見つけたい」という感覚はわかりますか?

佐藤 わかります。私はみんなと友だちになれるけど、特別に仲が良い人があまりできないタイプなので。海果ちゃんにとってのユウちゃんみたいな、心のよりどころになる人がいるのはすごくいいなと思います。

――宇宙には興味ありました?

佐藤 私は名前に“星”が入っていることもあってか、天体観測は好きです。プラネタリウムに行って、星座を見たりします。

――星座の名前もわかるんですか?

佐藤 知っているんですけど、プラネタリウムに行ったら、だいたい寝てしまって(笑)。何かよくわからないけど、きれいだったな、ということだけ覚えています。

よくある名字なので名前に星が付けられました

――お名前については、お姉さんで元AKB48の佐藤妃星さんにも“星”が入っていますが、何かご両親の想いが込められているんですか?

佐藤 お兄ちゃんもいて、全員お揃いで星が付いています。名字の佐藤はいっぱいいるので、名前は珍しくしようということだったみたいです。

――綺星(あいり)というのは珍しすぎて、なかなか読まれないのでは?

佐藤 まったく読まれません(笑)。でも、「何て読むの?」と気にしてもらって、逆に覚えてくれるんですよね。

――ロケットには馴染みありました?

佐藤 本物のゴーッと上がる大きいロケットしか想像できませんけど、図工や技術は好きで、授業でペットボトルロケットは作ったことがあります。シュパッと飛ぶのがすごいなと思いました。今の撮影で使っているのはもっと大きくて、火薬で飛ぶときれいで感動しました。

ポジティブでもドラマの撮影は悩んでばかり

――涙を流すシーンはもう撮ったんですか?

佐藤 (取材日時点で)明日です。稽古ではやりました。台詞を言いながら感情を込めるのはすごく大変で、今一番悩んでいるところです。私はずっと、あまり悩むことなく生きてきて。AKB48の中で悩んでも、ポジティブになれていたんです。でも、このドラマが始まってからは悩んでばかりで、泣くお芝居も模索中。1週間くらい前から、ずっと緊張しています(笑)。

――稽古では泣けたんですか?

佐藤 泣かなくてもいい、と言われました。まず感情を理解してみよう、ということでした。

――普段は泣くことはありますか?

佐藤 泣き虫ですけど、涙を流すとスッキリします。悔しくても嬉しくても泣いていて。最近だと、AKB48の最新シングルでセンターに選んでいただいて、嬉し涙を流しました。

泣きながら15分で振りを覚えました

――悔し涙もありました?

佐藤 この前、急きょ劇場公演に出ることになったんです。劇場リニューアルの企画で、公演の曲とは別に披露するプラス1曲が、私はドラマを撮影していたから、振り入れをしてなくて。15分くらいで覚えないといけなくなりました。

――そんな急きょだったんですか。

佐藤 劇場に向かうバスの中で、その曲の動画を観ながら、まったく覚えられなくて号泣しました。でも結局、劇場に着くまでに頭の中で覚えて、そのままステージで踊りました。

――頭で覚えた通りに、体も動くものですか?

佐藤 はい。それはできました。

先輩方と一緒になると追い付けなくて

――綺星さんは研究生になって3ヵ月で『久しぶりのリップグロス』で選抜入りして、それから2年でセンター。そして、このドラマにも主演とトントン拍子に来ているように見えます。自分の中では、壁にぶつかったりはしませんでした?

佐藤 たくさん選んでいただけるからこそ、ご意見もいろいろあって。まず最初に選抜に入れていただいて、「この子は誰?」みたいな。まだAKB48に入って3ヵ月で、誰も知らないメンバーがポツンといる感じでしたから。

――SNSで、そういう声を見聞きしたんですか?

佐藤 はい。生配信で選抜発表だったので、コメント欄が本当に怖くて、トラウマになりました。それを見て、気分が落ちることはありましたけど、クヨクヨしていたらダメだと。頑張って、それからもたくさん選抜に入らせていただきました。

――もう5作連続になります。

佐藤 そこでも、ずっと活動をしてきた先輩方と一緒だから、自分は何もできなくて焦りがあったんです。最初は先輩方が遠く掛け離れている感じで、まったく追い付けないように思えて、すごく葛藤していました。

寝ないで必死に自主練をしていました

――今はもう追い付けた感じですか?

佐藤 私にとっては初めての日本武道館コンサートのときも、先輩方は大きい会場で何度もやってらっしゃるので、曲を全部知っていて15分くらいでパッとできちゃうんです。私は1曲も振り入れをしてない状態から、合わせられるように必死で、寝ないで自主練をしていました。でも、ずっと先輩方が高い目標になっていたからこそ、いっぱい成長できたのかなと思います。

――寝ないで練習することは、よくあったんですか?

佐藤 ずっと泣きながらやっています。武道館のときは、夜中に1人でレッスン場で練習していたら、本田仁美さんが「偉いね」と声を掛けてくださって。そうやって頑張りを見てくださる先輩がいたから、励みになって踏ん張れました。

――センターに立つことにプレッシャーもありますか?

佐藤 そうですね。センターと発表されてからも、いろいろな意見がありますし。でも、「センターになってほしい」と応援してくださっていた方も多くて、今回の選抜には同期がたくさんいるので安心できます。5作選抜メンバーとして活動させていただいて、先輩方との距離も近くなって、相談もできるようになりました。気を張りすぎず、先輩方のお力を借りて同期に頼らせてもらって、楽しくできたらいいなと思います。

チャンスを逃さない気持ちは誰よりも強くて

――センターにまで来るまでには、人がしないような努力もしてきたり?

佐藤 基本的に私は休みません。どんなチャンスも絶対逃さない気持ちは、誰よりも強いかなと思います。全部にやる気MAXで、たとえ無理そうなことでもやります。さっきお話しした劇場公演も、身近なステージですけど一番大切な場所で、私がAKB48に入ろうと思ったきっかけでもあるので。その劇場で積み重ねてきたものもあります。あと、初めて音楽番組に出させていただいたときも、3日で難しいダンスを覚えるように言われて「はい、やります!」と。

――『THE MUSIC DAY 2022』で『根も葉もRumor』を披露したときですね。

佐藤 そうです。学校でテスト勉強をしていたら、電話が掛かってきて「出てください」と言われて、そのままレッスンに行きました。あのときも寝ないで練習して、学校の授業中も机の下で足の動きをしていました(笑)。

――当時の選抜メンバーも苦労したという、難易度の高いロックダンスでした。

佐藤 いっぱい筋肉痛になりました。先輩ともまったく関わりがない頃だったので、合わせるときの視線が怖かったんですけど(笑)、今は仲良くさせていただいて。あのとき頑張って良かったです。

何もできない自分は見せたくないです

――そうした意味では、『星屑テレパス』で海果が「私は最後まで諦めない」とか「自分が何もできないのが悔しい」と言うのも、覚えのある気持ちですか?

佐藤 そうですね。「最後まで諦めない」は私のポリシーでもあって、海果ちゃんとの共通点だと、ずっと感じていました。あと、私は完璧主義と言われることが多くて、何でもできると思われがちですけど、本当は何ひとつ簡単にはできません。完璧なものを見ていただきたくて必死で、何もできない自分は見せたくないんです。いつもできなくても最後まで頑張る気持ちで、そこは海果ちゃんも同じだと思います。

――これまでの撮影で、特に印象的なのはどんなことですか?

佐藤 3話くらいまでは、海果ちゃんは自信がなくて。仲間が増えていって、自信をもらって、後半には自分から仲間にお返しをしていく。そういうところが私は大好きです。海果ちゃんの成長が見られて、4人の絆の深さが見られる場面も心に残っています。

――灯台周りでのロケは心地良いですか?

佐藤 見晴らしはいいんですけど、風が本当に強くて。髪がボワーッとなってしまって、撮影が中断したり、大変だった思い出があります。

仲良くなった4人の雰囲気を出せたら

――メンバーとお芝居で接するのは、どんな感覚ですか?

佐藤 まほぴょんさん(大盛真歩)は、役の遥乃ちゃんと雰囲気が全然違って(笑)、温度差に風邪をひきそうでした。

――遥乃は副学級委員長のしっかり者の役ですね。

佐藤 まほぴょんさんも、4人の中で一番先輩で頼りがいがあります。たくさん支えてくださって、慣れてきました。

――4人でごはんを食べに行ったりも?

佐藤 スイーツを食べに行くシーンもあるので、楽しみです。仲良くなった雰囲気をそのまま出せれば。

ラーメンはメンバーに初めて連れられて

――普段もメンバーや友だちと、そういうところに行くんですか?

佐藤 メンバーとはラーメンのほうが多いです(笑)。コンサートが終わったら一緒に行って、「ダイエットをしてきたから、いっぱい食べちゃおう」みたいなことはよくあります。

――ラーメンが好きなんですか?

佐藤 私はあまり食べたことがなくて、橋本恵理子ちゃんに初めて連れていってもらいました。家系? 二郎系? よくわからないんですけど(笑)、そういう経験をメンバーにさせてもらうことが多いです。

――こってり系に行くんですね。

佐藤 おいしかったんですけど、私はあまりたくさん食べないタイプなので。普段はお菓子を主食にしていて(笑)、ラーメンは大人の味がしました。

絶対的なセンターを目指します

――『星屑テレパス』の放送スタート前に20歳の誕生日を迎えました。

佐藤 すごく楽しみでした。10代に後悔はありません。学校生活ではコロナが流行ってしまって、悔いも残っていますけど、AKB48に入ってから、今度のシングルのジャケット写真も今回のドラマも学校で撮って、青春を味わわせていただきました。20代になったら、もっと楽しみが増えると思いますし、いろいろなところで活躍できる女性になりたいです。

――お酒好きの大盛真歩さんと飲みに行ったりもしますか?

佐藤 誘っていただいて楽しみですけど、つられて飲みすぎないように気をつけます(笑)。

――綺星さんは10代ですでに、いろいろ夢は叶えましたよね。20代では、さらにどんなことを思い描いていますか?

佐藤 ずっとセンターになるのが夢で、今回選んでいただきましたけど、まだ実感がなくて。シングル期間にしっかりAKB48を盛り上げながら頑張ります。新しい目標としては、不動のセンターでAKB48の顔になっていけたら。実力はまだまだ足りませんけど、精神的にもメンバーを支えていける存在になりたいと思っています。

――綺星さんの世代だと、AKB48のセンターというと、誰のイメージが強いですか?

佐藤 やっぱり前田敦子さんです。選抜総選挙もずっと見ていて、前田さんが1位にならないと「えっ、何で?」と、学校でも大騒ぎだったので。それくらい前田さんには惹きつけられる魅力がありました。私もそんな絶対的センターを目指します。

Profile

佐藤綺星(さとう・あいり)

2004年6月24日生まれ、千葉県出身。2022年にAKB48第17期生オーディションに合格。同年発売のシングル『久しぶりのリップグロス』で初選抜。7月17日に発売の64thシングル『恋 詰んじゃった』でセンター。ドラマ『星屑テレパス』(テレ東ほか)に出演中。

ドラマチューズ!『星屑テレパス』

テレ東ほか・火曜24:30~

出演/佐藤綺星、伊藤百花、大盛真歩、山﨑空ほか

公式HP

(C)ドラマ「星屑テレパス」製作委員会
(C)ドラマ「星屑テレパス」製作委員会

「AKB48 第20期生オーディション」開催中

応募受付は7月7日23:59まで

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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